第2話 カヌカの街
街には人が溢れかえっていた。様々な人で賑わっている。中には人間以外の種族もいる。取り敢えずはギルドに登録しなきゃな。
冒険者ギルドは以外と直ぐに見つかった。簡単だ。剣と杖が交差するデカイ看板が有るからだ。シンプルで素晴らしいと思う。
中にはいかにもと言った感じの雰囲気だった。依頼が成功したのか今から飲んでいる奴等もいる。まぁ、コイツらには気にしない。さっさとカウンターで登録しなくては。と、俺は壊れることを想定したようなドアを開けて中に入る。突然、ざわめきが大きくなる。
なんだ?どうしたんだ?
俺は軽く横目で周りを見てみる。どうやら黒髪黒目の俺が珍しいようだ。何故女子たちが口々に話し、男どもは舌打ちしているのか分からないが。
周囲は気になるが気にしてられないのでカウンターにいる女性に声をかける。
「すまない。冒険者ギルドに登録したいのだが、手続きを頼めるだろうか」
そのとき、いきなり女子たちが騒ぎ始める。うるさいな。耳栓しながらカウンターに目を向けると顔を朱に染めた係員が狼狽えながら書類を探している。
どうしたんだ?さっきから。さっきよりも更に男どもからの殺気が強くなった。何故?
――――因みに彼、シオンは全く気が付いていなかった。
(ねぇねぇ、あの人すっごくかっこ良くない!!)
(だよね!!すごいイケメン♪)
(あの人なら………良いかも♡)
(ヤバい、不動のナミをあの人堕としちゃったよ!?)
(てか、声が………!!)
(あの高めだけど男らしい声が………!!)
(だ、だめっ!イっちゃうっ!)
(え?ウソ?マジ?)
のように見た目と、そしてかなり高めのバリトンボイスが女たちの身体中を駆け巡っていたことに―――――――
「え、えと、えとえと、おおお待たせしました!!」
すごく危なっかしさを覚えるな……。
「大丈夫。それよりも、これに必要事項を記入すれば良いんだな?偽名はアリか?」
「はい。えっと偽名は出来るなら無しで。いろいろな調査しなければならなくなりますから」
すごいな。あれだけテンパってたのにもうたち直してる。偽名は無しか……。まぁ使う気は無かったからいいか。
俺はさらさらと書き進める。いつの間にか周りは静かだ。
ホントに何故?
ん?そういや、周りの視線が不可思議だ、特に男からの。何かニヤニヤしている。はっきり気持ち悪い。…………そうか、そう言うことか。つまり俺が登録し終わるのを待っているのか。
はぁ…、めんどいな。
俺は記入漏れや記入ミスを確認して、係員の女性に渡す。
「――確認しました。では少しお待ちください」
俺は依頼がが貼ってあるボードを眺める。少し経って女性係員が戻って来た。
「はい、シオンさんですね。カードが完成しましたので、お受け取りください。それがあなたの身分証にも成ります。再発行には銀貨1枚必要ですので、無くしたりの無いようにお願いします」
「分かった」
「次に説明に入りますね。まずは今日シオンさんの担当を務めさせていただきます。ミナです。シオンさんは今日から冒険者となります。冒険者にはランクがあり、ランクI~ランクSまであり、シオンさんはランクIからと成ります。依頼は自分のランクからワンランク上の物からランク下の物しか受けられません。ここまでよろしいですか?」
「問題ない。続けてほしい」
「では、ランクアップについて。ランクアップは基本、ワンランクずつとなります。ランクアップ条件は2つ。1つ目はは自分のランクよりワンランク上の依頼を1回以上達成していること。2つ目はワンランク上の依頼も含め、自分と同ランクの依頼を規定回数達成していること。この2つです。ここではワンランク上の依頼は同ランクの依頼3回分として計算します。達成依頼の合計は冒険者カードが自動計算しますので、何時でも確認できます。ここまでよろしいですか?」
「分かった。つまり、ランクDの者がランクCの依頼を規定回数分達成した場合、ランクアップ出来るわけだな?」
「ああ、すみません。説明不足でした。間違ってはいませんが、それはランクEまでです。ランクDへのランクアップからは先ほどの条件にプラスして3つ目、試験官との模擬試験が含まれます。これがランクCまでです」
「ん?てことはランクBへのランクアップからはまた違うのか?」
「はい、ランクBへのランクアップからには更に1つ条件が加わり、《貴族依頼》を1回以上達成している。と言う条件がが加わります。そしてランクAからランクSへのランクアップ条件は5つ・同ランクの依頼を全部で100回達成。・ワンランク上の依頼を1回以上達成。・貴族依頼を10回以上達成。・ランクA以上のダンジョンを完全攻略。そして最後にランクSの冒険者との模擬試験。これらの条件全てに合格して始めてランクSとなります。また、各ランクアップへの規定回数はこの通りに成ります」
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ランクI~ランクH:規定回数20回
ランクH~ランクG:規定回数30回
ランクG~ランクF:規定回数40回
ランクF~ランクE:規定回数50回
ランクE~ランクD:規定回数60回
ランクD~ランクC:規定回数70回
ランクC~ランクB:規定回数80回
ランクB~ランクA:規定回数90回
ランクA~ランクS:規定回数100回
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成る程、上手くできている。ランクSは今のところ世界に四人しか存在していないそうだ。それだけにランクSは偉大だそうだ。
とにかく、これで理解は出来た。だが、流石に面倒臭いのだ。だから、これを質問してみよう。
「分かった。――それで、飛び級はアリなのか?」
「「「「「え?」」」」」」
「つまり、今この場で俺の実力を試験官に測定してもらい、適切なランクに飛んでランクアップさせてもらうことは出来るのか?と聞いているんだが」
そう聞いた瞬間、いきなり笑い声が響いた。
「がははははは、お前バカか!!」
「新米のひよっこが調子こいてんじゃねぇぞ!!」
「さてさて、お前には先輩から社会常識を教えてやらねぇとな!!」
3人の男たちが歩み寄ってきた。さて、上手く乗せられたバカはどちらか。
「え、ええと………」
ミナは困っている。よし、このままいけば……。
「うん?相手の力量も見極められないバカには言われたくは無いな。よし、おいミナ。ここの試験官を呼んでくれ。今からコイツら3人と勝負をする。俺が勝ったらコイツら3人のなかでもっともランクの高いやつのワンランク上からのスタートにしてもらう。逆に負けたらコイツら3人に俺の全財産を払う」
その言葉にこの空間内に驚愕の空気が流れる。
「おいマジかにぃちゃん、アイツらのパーティでもっともランク高いやつはランクFだぞ!?」
「新米即日文無しかよ(笑)」
「調子こいてんじゃねぇぞ!!!!!!クソガキ!!!!!!」
よし、上手くいった。この状況下なら、ギルドも納得せざるを得ないだろう。さっきの紙には『冒険者どうしの諍いは自己責任である』と書かれていた。つまりぶっちゃけ『ケンカには面倒臭いのでギルドは極力関わりません。』と同じだ。だが今回は、ギルドはより簡単な解決法を取る。何故ならば俺の発言でギルドは関わらざるを得なくなった。だからなるべく簡単に解決したいがために俺の条件を飲んでくれるだろう。でなきゃコイツらも納得しない。そう仕向けたからな。
――――――――だから――――――
「………分かった。俺が審判してやる。修練場でやるぞ」
――――決まったな。さて、最後に仕上げるか。
「そう言えば、この勝負、俺が負けたら破産なのに俺が勝ったらランクアップするだけって公平性に欠けるよな………。そうだな、俺が勝ったらお前らも全財産の8割を掛けろ。これで公平だな」
「ぁあん?ふざけてんのか?てめぇ!!!!」
「おいおい、新米のひよっこに負けるのが怖いのか?」
ホント、こういうヤツらは扱いやすい。
「んだと!!上等だゴラ!!!!」
「身の程を教えてやる!!」
そして俺たちは修練場に向かった。
修練場は以外と盛り上がっていた。か、そんなことは関係ない。俺は懐から財布を取りだし近くの女性へ手渡す。優しげな笑みで。
「これに勝ったら1回この財布でご飯を奢らせてくれ。財布を守ってくれたお礼に………な」
「は、はいっ♪頑張ってくださいね♪」
ちょろい………。ま、守るけど。奢るけど。
相手も知り合いに掛け金を渡したようだ。では行くか。
俺は中央に立つ試験官のもとへ近づき、足を止める。相手も着いたようだ。
「ルールは戦闘不能になるまで。但し殺しは無しだ。じゃあ10秒カウントに合わせて始める。―――――3・2・1……始め!!!!」
迷わず駆け出す。まずは一人斬りかかってきた。
相手の剣閃に合わせて抜刀する。剣と剣が一瞬交わる。――すると相手の剣だけが切断されていた。
剣を折られた男はただ呆然と立ち尽くしていた。
次は槍の男、槍はリーチはいいが細かい動きが取りづらい。まぁ、簡単に叩き折って真っ二つに。
最後に戦斧の男とやりあう。
「このクソガキ!!」
数度切り結ぶが飽きたので、戦斧の刃に剣の腹を滑らせて剣筋を変えながら近づき顔面を殴る。よろめいた相手の手を剣の柄で殴り戦斧を落とさせる。最後は流れるように廻し蹴りで吹き飛ばして首筋に剣先を添えた。ギャラリーは唖然としていた。が、気にしない。
これでランクアップEまでランクアップだな。取り敢えずあずかってもらったやつを返してもらう。
「俺の勝ちだ。ありがとう。あずかっていてくれて。今日は奢るよ、たくさん報酬も入ったしね」
そう言って微笑む。相手の女の子は頬を朱に染めたままに「はい……」と上の空だ。
分からん。そこで頬を赤らめる理由が分からん。
相手の金をあずかっている男へと向かい、金を奪う。その様子を負けた男たちは呆然と見ていた。
「さて、ありがとう。わざわざこの俺の策にまんまと乗っかってくれて。お陰でランクEからのスタートが出来る。更に大量に金も手に入った。これからこの金でそこの女に飯を奢ることが出来るのか、感慨深いな……。ま、そう言うことだ。ありがとな、せ・ん・ぱ・い?」
嫌みたっぷり含んだ言葉をプレゼントし、出来上がったらしい冒険者カードを受け取る。審査員も何処か信じられない様子だ。ま、当然だな。新米にランクF以下3人掛かりで遊ばれたんだから。
「さて、宿を探さないとな。なぁ君、名前は何て言うんだ?」
まだ奢る女の子の名前を聞いていなかった。
「あ、えと、私はレミナと言います。あ、あの!ランクアップおめでとうございます!私、よくあの人たちに絡まれてたんです。だから倒してくれてありがとうございました!!」
「気にするな。俺は別に君の仕返しをした訳じゃないからな。ところで、何処かいい宿はないか?」
「それなら、『赤焼の草原亭』がいいと思います。値段は少し張りますけど、サービスが良いですし、料理も美味しいと評判なんですよ♪」
そうなのか。じゃあそこに行こう。
「ありがとう。すまないが道案内を頼めるか?今日この街に来たばかりなのでな」
「はい♪任せてくださいね♪」
この世界ではそんなに奢られることが嬉しいものなのか?まぁ、俺は嬉しいが。
レミナは俺の手を引きずんずんと街の中を突き進む。俺は半ば引きずられた。
ご都合主義~~便利なご都合主義~~
はぁ…………。文才が。
聖剣や魔剣、従魔等々、登場人物等々活動報告に送っていただけたらもしかしたら出すかも。(わりと高確率で……)
取り敢えず、まずは最後まで読んでくれてありがとうございました!!次回もよろしくお願いいたします。