全てのはじまり
全てのはじまりは一ヶ月前
俺は嘉陽家の分家である嘉月家の長男として生まれ幼い頃から嘉月を継ぐ者としてあらゆる知識や技術を叩き込まれた
才能には恵まれていて稀に見る天才と言われた
俺が仕えたのは嘉陽家の長男、嘉陽時雨とその妹、嘉陽玖苑
時雨は俺なんかよりずっと天才で常に分家である俺を見下ろしていた
そんな態度が気に入らなくて時雨の護衛なんてまともにしなかった
第一、時雨は護衛なんかなくても十分過ぎる強さだ
俺は常に家からのプレッシャーや期待を背負って生きてきた
家から逃れようともした
分家として本家に頭を下げながら生きていくなんて俺には合わない
俺は俺の思うままに生きたい
そう感じるようになってからは家を抜け出すことも多くなった
家を抜け出すようになってから気づいた
俺の周りには誰一人いなかったんだ
いつも居たのは嘉月の身分についた人間だけだった
俺は孤独だったんだ
それがいつからか一人じゃなくなった
気づくと側にはいつも玖苑がいた
はじめは鬱陶しくて仕方がなかった
そんな存在がいつしか俺の中でかけがえのない大きな存在に変わっていた
ようやく本当の自分をさらけ出せる相手ができた
そう感じるようになった矢先のことだった
いつものように家を抜け出し近くの街へと玖苑と遊びに出た
その街がDBS感染した魔物に襲われていたなんて知る由もなかった
街に着いてすぐ異変に気づいた
いつもは賑やかな街が鎮まりかえっていて誰一人外に出ている者はいない
主「…変だな 明らかにおかしい」
それに嫌な予感がする
主「…玖苑?」
返事はかえってこない
そして隣にいたはずの玖苑の姿がないのを確認した直後、頭に衝撃がはしり、俺はそのまま意識を失った
暗くて何も見えない
玖苑は?
ここはどこだ?
俺はどうしたんだっけ?
あぁ、そうか
俺はまた守れなかったんだ
結局俺は何一つ守れないんだ
何一つ…
本当にそれでいいのか?
何もしないでこのまま過ごしていくのか?
玖苑はどうする?
見捨てるのか?
嫌だ
そんなことできるはずがない
あいつは玖苑は唯一俺を鴉蓮として見てくれた
俺は強くなる
こうまでして世界が俺を戦いに導きたいのなら俺はそれに従おう
そして壊してやるよ
理不尽に歪んだ狂ったこの世界のことわりを
結局、あの後俺は嘉月家で目を覚ました
#NAME2#は行方不明
あの街はDBS感染した魔物に襲撃されていたらしい
今までにもDBS感染した魔物に街が襲撃されたという事例は存在したが、街が壊滅に追い込まれるほどの大群に襲われることはなかった
それが今回は違った
街の住民の生き残りの人間は魔物を従える人間を見たと証言する者が多くいた
そして女を連れて消え去ったと…