タウロス山の攻防
夏になっても友達ゼロ。
小学校一年生から、孤立。どうやらクラスメートからかなり警戒されているらしい。しかし、柴田はその事態を気にしてはいなかった。
必要なのは、友達じゃなく戦友だ。
昼休憩になり、柴田は一目散に運動場に駆け出した。タウロス山と名付けたその山は、標高二メートル。斜面はなだらかだが、運動場に高々とそびえ立ち、運動能力を磨くのに最適だ。
「おいおいおいっ! 誰がここで遊んでいいって言った? んーっ!」
五年生の沢登が暴虐な脅し文句を発した。他にも加藤、佐藤、鈴木、三人の部下を連れて来ていた。手には一人ずつサッカーボール、ラグビーボール、ソフトボール、バスケボールをそれぞれ手にしており、対する柴田は素手。
形勢は圧倒的不利。しかも瞬時に囲まれてしまった。
最早、魔法しか、無い。
「煉獄の焔よ 我に示せ」
「何言ってんだバーカ」
ぐわあああああっ! ボールを四方からぶつけられた。
こうなれば、一点突破。加藤と佐藤の横をすり抜けようと、ダッシュ。
捕まった! 一瞬にして捕まった。くっそぉ、剣さえあればこんな奴には負けやしないのに。
「ははは! お前が俺の部下になるなら、見逃してやらんでもないぞ」
まるで魔王のような邪悪な台詞。
「だ、誰がお前などの部下に……俺は勇者だ」
「そうか……なら、仕方ない」
沢登はそう言いながら近づいてきた。
まさか、お前、それは……
「ぐわあああああっはははっはっはははっはは! やめろおっははっははっははっ」
くすぐり攻撃。まさか、こんな拷問をっ! 何て卑怯な奴だあはっははっははは!
「降参か? 降参するのか?」
「だ、誰がおまえなんかあっはっははっははっははははあああん」
「そうか……仕方ない。これだけはやりたくなかっが……加藤、靴を脱がせろ!」
「まさか、足の裏だけはやめてえええええっはははははっはは!」
チャイムが鳴るまで拷問は続けられた。
結局、タウロス山では敗北を喫し、占領された。