表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/57

8話 徐福と不幸な少女







―――――――――――――――





「……………」


「……(じぃー)」


なにやら後ろからスゴく見られいてる日陰。


「…………」


だが気にせずに日陰は馬の世話をする。


気づいてはいるはずだが、神経が図太いのか。


「………さて」


ついに動くのか、日陰!?


「そろそろお昼ですね」


「少しはこっちを気にかけなさいよッ!?」


と先程まで日陰を観察していた少女―――賈駆が出てくる。


「どうも………えぇと」


「賈駆よ。賈文和よ」


不機嫌そうにそっぽを向いた賈駆が言う。


「アンタに少し頼みたい事があるんだけど……」


「はぁ、別に構いませんけど………何故、そんなに離れているのですか?」


出てきたとはいえ何故か日陰と距離を取っている賈駆。


「うッ、そ、それは………今日は駄目な日なのよ………」


「………そうですか」


様々な疑問に深くは考えないのが、日陰の悪いところであり、良いところでもある。


「それで僕に頼みたい事とは?」


「今日一日、月の仕事を手伝ってあげてほしいのよ」


「はい。分かりました」


「………ボクから頼んでおいてなんだけど、そう易々と返事していいわけ?」








「じゃあ、案内するわ。付いてきて」


と距離を保ちつつ、賈駆が先導していく。


日陰は遅れないようにと、賈駆の後ろについて歩こうと早足で歩く。


「……そう言えばアンタ仕事出来るわけ………ってアンタ何近づいてるのよッ!?」


日陰が丁度、後ろに来た頃、賈駆が後ろを振り返ってきた。


「……?」


カクンと首を傾げる日陰。


「あぁ!もう!いいから、離れ―――」


――――ぐらぐらぐら。


賈駆が離れようとした時、屋根の瓦が数枚二人の真上から落ちてきた。


「……きゃッ!?」


――――ガシャーン!?


賈駆が頭を庇うように手で覆う。


「取り付けが緩くなっていたのでしょうか?」


しかしそれは二人に当たることはなく、少し離れた所に落ちていた。


そして賈駆を庇うように立つ日陰の手には卒塔婆が握られていた。


どうやら日陰が降ってきた瓦を弾いたらしい。


「………やっぱり、今日がそうなのね」


なにやら卑屈な顔をする賈駆。


「………では行きましょうか」


「アンタ、何も聞かないわけ?」


スキル、『華麗なるスルー』の発動に異議を申し立てる賈駆。


「聞かなくていいことは聞かないですし、話したくないことも聞きませんし、聞かなくてはいけないことも聞きません」


「………そう、アンタ優しいわ―――って!?何も聞かないんじゃないッ!!」







「不幸体質、ですか。変わった体質ですね」


自分の他人を殺せない体質を棚に上げている日陰。


「まぁ、変わってると言えばそうよね」


「ふむ。では今日一日は賈駆さんの周りでは不幸な事が起きると………」


「そうよ。だから距離を取っておいたのにアンタときたら……」


「それで僕が月さんの仕事を手伝うのは何故ですか?」


「そんなの月の周りで不幸が起きないために決まってるでしょ!」


「ふむ…………」


何かを考えている日陰。


「なによ、何か名案でもあるって言うの?」


「いや、全く」


――――ズコッ。


転ける賈駆。


「まぁ、いいのではありませんか。それも個性ですよ」


と“飛来した槍”を払い除けながら日陰は言う。


「アンタ、武官だったの?」


その光景を見て、賈駆は驚いた風に言う。


「いや、農民ですよ。これは単なる護身術程度ですよ」


嘘は言ってない。事実、日陰はここに来るまで農民として鍬を握っていたのだから。


「あぁ、もしかしたら武術を習っていたかもしませんね」


「かもしれないって自分のことでしょ?」


「まぁ、そうなのですが………。僕は半分記憶が無いのですよ。気づいたら村で畑を耕していた。両親も親戚も居ない村で……」


「………ごめん、変なこと聞いちゃったわね」


バツが悪そうにシュンとする賈駆。


「………?別に構いませんよ」


当の本人はケロリとした顔だった。


別に蛙のような顔をしているわけではない。


「では行きましょう、賈駆さん」


「………詠でいいわよ」


「………?」


「真名でいいって言ったのよ。皆、許してるみたいだし………べ、別に仲間外れが嫌なだけなんだからねッ!他意はないんだからねッ!?」


「はぁ……」







「ふむ。これでよし」


只今、董卓の執務室で“三人で”お仕事中の日陰。


三人―――――日陰、董卓、そして賈駆。


当初は日陰と董卓の二人であったが…………………ぶっちゃけ日陰が使えねぇ。


なので急遽、賈駆を呼び手伝ってもらうこととなった。


賈駆の不幸体質についてはその度に日陰が対処していった。主に卒塔婆による強制的方法で。


「なんだか頼まない方が良かったかしら………」


「詠ちゃん、だめだよぉ。そんなこと言っちゃ」


いや、賈駆の言葉は正しくもある。正直なところ、董卓一人で政務をこなした方が遥かに早い。


「まぁ、月が良いならいいんだけど……」


「それにしても久しぶりだよね」


「へ?何が?」


「こうして詠ちゃんと不幸な日を送るのが、だよ。いつもは部屋に籠っちゃうんだもの、詠ちゃん」


「そ、そりゃ……ボクのこの体質は危ないし、もし月に怪我をさせたら、ボクは………」



「うん、分かってるよ。でもね、たまには頼ってほしかったりもするんだよ?」


「月………」


――――スパンッ。


賈駆の上に落ちてきた金だらいを弾く日陰。


「………アンタはもっと空気を読みなさいよぉぉぉぉ!!!!」


日陰としては精一杯に自分の仕事をこなしているのだが、中々上手くいかないのが世の中である


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ