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5話 徐福の休日








―――――――――――――――





「恋殿~。恋殿~、どこなのですか!?」


陳宮は今日も呂布を探して、城をそのちっこい体で走り回る。


「はっ!?もしやまたあの男のところでは!?こうしては居られないのです」


と何かを思い付いた陳宮は直ぐ様方向を修正し走っていくのであった。







「恋殿、ご無事ですか!?」


ズサササーと横滑りしながら厩にやって来た陳宮。


「おや、陳宮さん」


馬の世話をしていた日陰が訪問者に気付き、厩から出てくる。


「恋殿はどこですか!?隠さず早く出すのです!」


出てきた日陰に早口に捲し立てる陳宮。なのだが…………。


「すみません。よく聞こえませんでしたのでもう一度言ってもらえませんか?」


早口では日陰には聞き取れないようだ。


「だぁかぁらぁ~恋殿を出すのです!?」


両手を上げて、怒りを表す陳宮。


「恋さんですか?今日はこちらに来てないですよ」


そんな陳宮も華麗にスルーな日陰。


感情が乏しいと言うよりは無関心なのだろうか。


「それは本当なのでしょうな?嘘だったら承知しないのですぞ」


「はぁ……」


基本的に気だるそうな日陰であった。


「そうですね……恋さんでしたらいつもはあそこに座って…………」


と厩の正面に位置する木陰を指さし見る日陰。


「……………」


とそこには呂布がいつの間にか座っていてこちらを見ていた。


「恋さん、いつからそこに?」


「………朝から」


「あれ?僕、声かけられた覚えがないのですが………」


「………仕事、邪魔するのよくない」


当の呂布本人は仕事をほったらかしてここにいるわけだが、まぁ関係ないかな。


「やっぱりここにいるではないですかッ!?」


問題なのは陳宮の方だった。


「え?これ、僕が怒られるのですか!?」


流石の日陰もこれには少し動揺する。


「当たり前なのです。恋殿をたぶらかし、許さないのですぞ。ちんきゅーキックを喰らうのです!」


「ちょ!?それはあまりに理不尽では!?」

助走をつけ始めた陳宮に対して日陰は抗議をするが…………。


「問答無用なのです!」


聞き入れてはもらえなかった。


「………恋も日陰と遊ぶ」


そして何故か呂布まで加わる。


「何故、こうなったのですか………」


日陰、陳宮、呂布の順の追いかけっこが始まった。









「これとこれ、後はそれと……あれを下さい」


「へい、毎度!」


只今、朝市にて買い物中の日陰。


今日は1日休みを貰った日陰。


丁度いい機会だと思い、日用品を買いに来たのだった。


「ふぅ。少し買いすぎましたかね」


日陰は両手一杯に袋を持って、帰り道を歩いていた。








「よいしょ、よいしょ………」


陳宮が両手に溢れんばかりの荷物を抱えて歩いていた。


いや、あまりの荷物の多さに荷物が歩いているようだ。


「恋殿やセキトたちのご飯を買うのも楽じゃないのです」


いつもは業者に頼んで城まで運んでもらうのだが、臨時で必要になった時は陳宮が自分で買いに行くのであった。


「おっとと………」


フラフラと危ない足取りではあったが、そこは慣れているのかすぐに持ち直す陳宮。


だがそこに…………。


「――あ、暴れ馬だ!?皆、避けろ!!」


「え?」


誰かがそう叫んだ。


陳宮の前から一頭の暴れ馬が物凄いスピードで走ってくるが、陳宮には荷物が邪魔で見えていない。


「な、何なのですか!?」


「避けろ、嬢ちゃん!?」


誰かが声をかけるが、陳宮は道の真ん中でオロオロしていた。


その間にも暴れ馬は陳宮に近づいていた。


「もう駄目だ!」


誰もが悲惨な結末を想像し、皆が目を背ける。




………………………。




だが何も音がしなかった。


暴れ馬の蹄の音すらしなくなっていた。


「………?」


陳宮も今まで騒がしかったのが急に静かになったので辺りをキョロキョロと見る。


「どうも、陳宮さん」


と頭上から声をかけられた陳宮。


「スゴい荷物ですね。少しお持ちしましょうか?」


そこには日陰が立っていた。


「徐福!?なんでこんなところにい―――」


いるのですか?と続くはずだった言葉が途中で止まる。


そこには日陰だけでなく、馬がいたのだ。


しかも馬はただ居たわけではない。


走っていた状態で静止していたのだったのだ。


より具体的に言うなら卒塔婆が馬の輪郭をなぞるかのように地面に刺さって、馬の動きを封じていたのだ。


「徐福、それは一体何なのですか?」


陳宮が日陰の後ろを指して言う。


「ん?あぁ、暴れ馬らしいですよ」


そして日陰は事も無げに答える。


「確か厩にはかんぬきがかかっていたはずですけど………。外れてしまったのでしょうかね?後で見ておかなくてはいけませんかね」


とさらりと陳宮の荷物を半分持ちながら日陰は言う。


「では帰りましょうか、陳宮さん」


「…………ね」


「はい?」


「……音々音です。特別に許してやるのです」


少し顔を赤くしながら陳宮は言う。


「じゃあ、僕も日陰で構いませんよ」


そして二人は城に帰っていった。


馬がそのままなのだが………まぁいいか。


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