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48話 日陰の居ない日々は………









―――――――――――――――







日陰が呉で色々頑張っている頃、魏では………。


「桂花ちゃんは寂しくないのですかー?」


「なにがよ?」


程イクの言葉に荀イクが言う。


「勿論、徐福さんのことですよー」


「別に捕虜と言ってもあっちにも大事な交渉材料なのよ。早々に手を出すことはないわ」


「まぁ、それもそうですねー。ところで桂花ちゃん…………その報告書反対ですよ?」


「――ッ!?………た、たまには反対から読んだ方が目が疲れないのよッ!」


自分でも何を言っているのか分からないのだろう。報告書に顔を隠してしまう荀イク。


心なしか湯気が出てるような…………。


「大変なの!」


とそこへ于禁が慌てた様子で入ってくる。


「どうしたの、沙和?」


「大変なの、桂花ちゃん。侍女ちゃんたちが…………」







「………沙和、もう一度言ってくれるかしら?」


「侍女ちゃんたちが日陰さんを取り返しに呉へ進攻しようとしてるの!」


荀イクは頭を抱える。


「全く、何なのよ………」


「まぁ、侍女ちゃんたちは日陰さん依存症者が多いですからねー」


「何よ、それ。初めて聞くわよ……」


「今、真桜ちゃんが応急措置として日陰さん秘蔵姿絵を売って落ち着かせてるの」


「ちょっと待ちなさいッ!?何よ、日陰の秘蔵姿絵って!?」


「真桜ちゃんの作った“かめら”って言うので描いた精巧な姿絵なの。おはようからお休みまで日陰さんのあられもない姿が満載なの!」


「なんでそんなもの売ってるのよ!?」


「仕方ないの。日陰さん成分を補給しないと侍女さんたちは一揆を起こしかねないの」


最早、魏における日陰のカリスマは曹操にも劣らないのか?


「ちなみに霰もない姿とはどんなのですかー?」


と興味本意な様子で程イクが聞く。


「う~とね、お昼寝してる日陰さんでしょ。何故か動物と戯れてる日陰さん、それに水浴びしてる日陰さん。そして最大の目玉商品が…………ちょっと笑った日陰さん、なの!!」


ババーンと効果音が付きそうな程の勢いだった。


「日陰さんって、眠たげや無表情だったりばかりだから、少しでも笑ってる姿絵は貴重なんだって真桜ちゃんが言ってたの」


「そんなの知らないわよ!今すぐ止めさせなさい!」


「まぁまぁ、桂花ちゃん。ちょっと落ち着いてー。今、侍女さんたちが反旗を翻して呉に攻めてしまったら華琳様の風評に関わりますよー。今は暴走を止めるのが最優先ですよー」


「う………」


程イクの言葉は理解できる。


それに今、呉へ進攻すれば確実に日陰の身が危ない。


ならば今は侍女たちを止めるしかない。


「………分かったわ。真桜にはそのまま続けてもらうことにするわ」


「………ところで桂花ちゃん。どこへ行くんですかー?」


「べ、別にどこでもいいじゃない……」


桂花はそう言って部屋を出ていく。


ただ、日陰の秘蔵絵姿(ちょっと笑った)が破格の値段で売れたという。










空に月が昇る夜。


荀イクは城壁の上から月を見上げていた。


月は歪に欠けていた。


「…………」


無言でただ見上げる荀イク。


「日陰もこの月を見ているのかしら……」


(早く帰ってきなさいよ………)









その頃、日陰は…………。


『乾杯!』


部屋で酒盛りをしていた。


決して広くはない部屋に呉の重臣たちが集まり、杯を掲げている。


そんな中、日陰はふと窓の外を見ると歪に欠けた月が目に入る。


「我が君、もうすぐ帰れそうです……」


そして人知れず少しだけ笑う日陰だった。


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