47話 安全地帯
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「………あの、お二人様。何故、ここに?」
日陰の目の前には孫策と黄蓋がいた。
「そして何故、ここで酒盛りを?」
そう。今、目の前では二人による酒盛りが行われていた。
「徐福の監視よ~♪」
「策殿の護衛じゃ」
何故だろう、二人の台詞の後ろに“―――に託つけて呑みたい”と見える日陰だった。
「徐福、貴方も呑みなさいよ♪」
「いや、僕、手が使えませんから……」
「じゃあ、外してあげましょうか?」
「いやいや、それは駄目でしょ……」
「あぁ!分かったわ、口移しね。もう、しょうがないわね~」
「いやいやいや…………」
と、こんな感じに酔っ払い二人の相手をする日陰。
それとはまた別の日。
「遊びに来たわよ~♪」
「………尚香さんですか」
「ねぇねぇ、今度はこれ読んでよ徐福」
どうやら孫尚香は政務に忙しい姉たちの代わりに暇潰しとして日陰を見出だしたらしい。
「これ、冥琳から借りたの」
「はぁ。では開けてもらえますか?」
まぁ、何もしないでいるのは暇なので、いい暇潰しだと、日陰にも思っていた時期もありました。
「徐福さん、お猫様を預かっていただけませんか!?」
と周泰が拾ってきた猫を預けに来たり………。
「ふふふ~、ここなら落ち着いて本が読めます~」
と陸遜が本を読みに来たり…………。
「ちょっと相談事をしてもいいかしら?」
と孫権が甘寧を護衛に相談しに来たり………。
と何故か日陰の所にことある毎に人がやって来た。
と言うか孫権はいつから日陰に相談事をするようになったのだろうか?
「…………何故、僕の所なのですか?」
ふと疑問に思った日陰は訊いてみることにした。
すると………………。
『だって、冥琳に見つからないもの』
と声を揃える呉の面々。
日陰は苦労人な周瑜を心から心配した。
「すまないな。どうやらウチの将たちが迷惑をかけたみたいだな」
それも長くは続かず、周瑜にもバレる結果となる。
「いえ、こちらは構いませんよ」
「そう言ってくれると助かるよ、徐福」
「………あの。周瑜さん、一つ聞いていいですか?」
「ん?なんだ?」
「何故、皆さんは普通に接するのでしょうか?」
それはここに来てから思ったことであった。
いくら、孫策の命を救ったからと言っても自分は敵国の将で捕虜だ。別に不当な扱いを望むわけではないが、それも仕方ないと思う日陰。
「最初はな、皆も反対していたよ。それを雪蓮が押し通したのだ」
と周瑜が言う。
「それで数日は監視のために思春や明命………甘寧や周泰がこの部屋を張っていたんだ。毎日、孫策がやって来たのも皆にお前のことを示すためだったのだろうな。まぁ、外に連れ出すとは思わなかったがな」
日陰は少しだけ驚く。
「お前だって気づいているのだろう。その拘束が緩いものだってことぐらい。少し動けば解けるほどだって………」
それは知っていた。
「だが、お前はそれを解くことも、ここから逃げることもしなかった」
周瑜は日陰を見る。
「まぁ、それ全てが演技だと言えなくもないのだがな。お前にはそうは思わせない何かがあるのだろうな。誰もがそう思いながらもそれを否定している」
不思議なものだ、と周瑜は呆れなのか感心なのか分からない顔をした。
「…………貴女もまた支えるものなのですね」
そして日陰は言う。
「いい医者を知っています。もし大男二人を連れた長身の医者を見つけたら、診察を頼んでみて下さい。きっと治してもらえるはずですから………」
「………ほぅ。分かった、肝に命じておこう」
そう言うと周瑜は部屋を出ていく。そして部屋から出る前に…………。
「………また来てもいいか?」
「えぇ、構いませんよ」




