35話 メイドさんは男の浪漫!ロボットも男の浪漫!ならばメイドロボは完璧なんじゃないか?
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「秋蘭たちから伝令が来まして、5日後の夕刻にはこちらに着くとのことです」
籠城戦の準備をしながら荀イクは曹操に伝える。
「5日か……。微妙な所ね」
残存の兵を確認しながら、曹操は言う。
「しかし、ここを乗りきれば我が覇道はまた一歩近づくこととなる。皆、ここが正念場よ」
『はっ』
「真桜、絡繰の準備はどう?」
「今、急いでやらせてます。後、ちょっとで完成ですわ」
「そう。なら、真桜の絡繰が出来るまで城門を死守するわよ」
こうして魏対蜀の第二回戦が始まった。
日陰は普通の卒塔婆の準備をしていた。
卒塔婆武麗奴は改良の余地あり、と李典には伝えておいた。
「日陰……」
そこへ荀イクがやって来た。
「どうかされましたか?」
荀イクへと顔を向ける日陰。
そして荀イクはペチペチと日陰の体を触るだけだった。
「えぇと…………桂花様?」
「………埃、付いてたわよ」
「あ、すみません。お手数をお掛けしました」
「いいわよ、別に。それと、あっちの準備は出来てるの?」
「はい。滞りなく配置は完了しました」
「そう、ならいいわ」
そう言って荀イクは別のところに指示を出しに行くのであった。
「………どこも怪我してないみたいね」
その呟きは日陰には聞こえてはいないのだろう。
関羽が城門前にて交戦中の時。
城の裏には趙雲、張飛、呂布が少数の兵を率いて城の抜け穴にいた。
「全くウチの軍師殿は可愛い顔してえげつないことをする」
と口で言うわりにはその顔には悪戯っ子のような笑みを浮かべる趙雲。
「それにしてもこんな大きな穴が何であるのだ?」
穴の中全体を見渡して張飛が言う。
「大方、昔の太守が自らの保身の為に作ったのだろう。そして軍師殿はそれをどこで知ったのやら」
くくく、と笑う趙雲。
しかしそこには思わぬ落とし穴があった。
『お還りなさいませ、ご主人様』
そこには無数の自走式人形が居たのだった。
そして再び城門前。
「放て!狙わなくていい、兎に角中には入れさえばすればいい!」
関羽は弓兵指示を出し、ありったけの火矢を城内部に注ぎ込んでいた。
「愛紗ぁ~」
「ん?どうした、鈴々。お前は別行動のはず―――――ッ!?」
軍師の指令により、別行動していた義姉妹の声を聞いて振り返る関羽はその姿に唖然とした。
「…………何故、お前たちがめいど服を着ているのだ?」
と張飛、趙雲、呂布の三人を見やる関羽。
そう、三人とも董卓たちとは別デザインではあるが、メイド服を着用していた。
「全く、ご主人様も時と場合を考えて欲しいものだ………」
「いや、違うぞ、愛紗」
と関羽が早合点しそうになるのを趙雲が止める。
「これはだな。敵の絡繰人形にやられたのだ」
「…………はぁ?」
「我々は軍師殿の命により抜け穴を通って内部へ侵入しようとしたのだが…………」
「そしたらい~ぱいの人形が居たのだ!」
手を広げて量を表す張飛。
「………いっぱい」
呂布もそれに頷く。
「そやつらはどうやら警備用の絡繰のようだったのだ。私たちを見つけると攻撃を仕掛けてきたのだ」
「鈴々たちも応戦したけど、全然減らなかったのだ」
「どうやら尋常でない数があの場に詰められていたみたいだな」
「そうか、大変だったな。………ん?今の説明ではお前たちがめいど服を着ている説明にはなっとらんぞ?」
「まぁ待て、愛紗。本題はここからなのだ」
手で関羽の言葉を制止させる趙雲。
「その中に一体だけ他とは違うのがあったのだ」
「他とは違う?」
「あぁ、あやつは……………我々を着替えさせるのだ!」
「………はぁ?」
「しかも着ていた服の上からではなく、地肌に、だ。丁寧にも着ていた服や鎧は畳まれて隣に置かれているのだ」
「………なんだそれは?攻撃するわけでなく、服を着せ変えるだけの絡繰か?」
「いやはや、我らでも捉えきれぬとは………」
感慨深く頷く趙雲。
「それで………お前たち、着替えないのか?服は置いてあったのだろう?」
『…………』
三人ともが明後日の方向を見る。
「…………気に入ったのだな、その服」
『――ギクッ』
三人ともが肩を震わす。
「べ、別にお兄ちゃんに可愛いって言って欲しいとかじゃないのだ!?」
「………月とお揃い」
「たまにはこういった趣向もよいのではと思ってな」
三者三様の答えだった。
「…………あ。間違えた」
日陰は人形の回収をしていると警備用の他に侍女用があることに気がついた。
侍女用とは李典と自走式人形の追い駆けっこを見た侍女が一目惚れをして、李典に自分たちの手伝いができるようにしてほしいと申し出たために試作品として作られたものである。
今はまだ着替え専用だけであるが、料理、掃除なども只今開発中である。
ちなみに警備用は日陰の作った雛型があった為、大量生産までいったのであった。




