34話 技名はやっぱり叫ぶ方がいいよね
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――――ガキンッ。
鎌と偃月刀が交わる。
先程までとは違い、冷静さを取り戻した曹操は関羽の一撃を受け止めることはなく、鎌の形をいかして受け流していた。
「ふっ、関羽。貴女はその程度かしら?」
「くっ」
余裕の笑みを浮かべる曹操。
(しかし、あまり長居は出来ないわね。桂花たちはどうやら下がったみたいね。日陰、早くしなさい)
日陰の策を待つしか方法がない曹操であった。
その頃、日陰は…………。
「…………くっ」
ピンチだった。
それは呂布の戦闘力云々ではなく、手が痺れてきたのだ。
本来、日陰の戦い方では打ち合った際の作用反作用の力が日陰に伝わることはない。
力は全て卒塔婆が壊れることで相殺されているからである。
それが卒塔婆の強度が上がったことで日陰へ今まで流れていなかった力が流れてきたのである。
卒塔婆の強度は上がっても日陰の強度が弱いのである。
「………後、何合保つか……」
正直なところ、策はあるのだ。それは奇策と言うほどのものではない。今すぐにでも実行できるほど簡単なものだ。
では何故、それをしないのか?
「僕にだってしなくていいなら、したくないことがあるんです。でも、これ以上伸ばしては…………あぁ……」
ぶつぶつと呟く日陰。
「でも、このままでは我が君に申し訳が………いや、でも………いやいや、でも………」
そして、日陰は……………。
―――――ザクッ。
地面に卒塔婆を突き刺す日陰。
「………?」
突然、得物を手放した日陰に疑問符を掲げる呂布。
「すぅーはぁー………」
深呼吸を一回。
「――――我が名は徐福ッ!」
そして大声で叫ぶ。それは己を奮起させるためか、それとも…………。
「我は我が君の為に全てを捧げる者!我が君の為に尽くす者!我が前には死者はなく、我が後ろにも死者を作らぬ、死なない恐怖を与える不殺の将なり!」
グッと握った手を天へ掲げて、まるで大陸へ、世界へ宣言するかのように叫ぶ。
「我が腕は我が君の壁を取り除く為に!我が剣は我が君の敵を切り裂く為に!我が身は我が君の不安を取り除く為に!」
握った手を開き、手のひらを天へと向ける。
「我は願う!我が腕に!我が剣!我が身に!我が君の願いを叶える力を!我は流星群に願う!」
そして再び手のひらをグッと握る。
「我が元へ集え!―――卒塔婆流星群ッ!」
決め顔で言う日陰。
ただ顔は真っ赤だった。
『…………………』
その場に居た全員の時が止まった。
元々、日陰は大声を出すキャラではないし、あのような口上を述べるキャラでもない。
一瞬、これは夢ではないかと疑うくらい別に問題ないだろう。
そして、それは夢でないことは次の瞬間に思い知らされるのであった。
―――ザクッザクッ。
日陰の目の前に二本卒塔婆が刺さる。
そして次々に卒塔婆が戦場全体に飛来する。
その卒塔婆が飛来してきた方にはサムズアップしたいい笑顔の真桜がいた。
魏の城壁の上にて。
「………まぁ、日陰のあの前口上は百歩譲っていいとするわ。それで何で日陰があれを言う前にそれを使わないのよ!?」
と荀イクはいい顔してる李典の横にある弩弓機を指差す。
「桂花様、必殺技ちゅうのは叫んでこそなんぼやッ!!日陰にもちゃんと前口上を言わな使わへんでっ言うてあ―――ちょッ、それはあかんて!?」
胸を張って答える李典にのび~るアームを構える荀イクを止める。
それは決して胸を張った際に揺れた胸を妬んだわけではない。
「華琳さん、後退します!!」
大量の卒塔婆が地に刺さる戦場は日陰の独壇場である。
この戦場で日陰を止めるには大量の火矢ですら無理なのだから………。
こうして、曹操を回収した日陰は城へと戻った。
ただ、それから少しの間だけ日陰は人知らぬところで自己嫌悪に堕ちていたことは内緒なのである。




