30話 心地よい日陰
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昼も済ました日陰が次に向かうのは………。
「おやー?日陰さんじゃないですかー」
廊下で程イクと出会った。
「確か日陰さんは今日はお休みですよねー」
「はい。とはいえやることがないので部屋に帰って昼寝でもしようかと思うのですけど………」
「ほぅ。昼寝ならいい場所を知ってますよー。ささ、行きましょー」
と程イクは日陰の手を引っ張っていくのだった。
ただその視線は一度日陰の後ろへ行き、ニヤッと笑ったのだが、日陰がそれに気づくことはなかった。
「………ここですか?」
程イクに連れてこられた場所は中庭に立つ木の作り出した木陰だった。
「はいー。ここはほどよく風も通りますし、木がほどよく光を遮ってくれてポカポカなのですよー」
「そうですか………。では失礼して……」
日陰は木を背に地面に座る。
確かに風は気持ちよく、太陽光もほどよい感じだった。
「では、風もー」
と程イクも日陰を背に座る。
「…………」
すっぽりと日陰の両足の間にハマる程イク。
「…………くぅ」
寝息を立てる程イク。
「…………」
日陰は周りをキョロキョロと見渡すが、助け船となるものはなく…………。
「………Zzz」
諦めて、寝ることにした。
それに人の体温はとても心地いいのだと、日陰は思っていたりもした。
「………んぁ」
日陰は大分寝ていたのだろう。程イクは既に居なかった。そして辺りは橙色になりつつあった。
眠い目を擦り、立ち上がる。
そこで自分の身体から布が落ちるのに気がついた。
おそらくは誰かが外で寝ていた日陰に掛けてくれたものだろう。
「………あ、昼寝をし過ぎたら夜寝れなくなるかも………」
と今更ながらなことを呟く日陰であった。
日陰は自分に掛けられた布を畳み…………誰に返せばいいのか、と首を傾ける。
「………侍女さんたちに渡しておけばいいかな」
「…………あの……」
「なんでございますか、徐福様?」
「………その、ですね……」
「お茶のお代わりなどはいかがですか、徐福様?」
「それよりもお茶請けはどうですか?」
「それなら先日、“私が”見つけてきたお菓子が……」
「ちょっと、貴女、手柄を独り占めしないで下さいます。私も一緒に探したではありませんか」
「………あの、えと、喧嘩はその……」
「それより徐福様、服の留め具が外れそうですわ。繕っていかれませんか?代わりの服でしたら用意がありますので」
「そうですわ。ささ、こちらでお着替えしましょう。私たちがお手伝いしますわ」
「……え?いや、構いませんよ。これくらい自分で…………」
侍女たちの部屋を訪れた日陰は何故か、ちやほやと持て囃されていた。
というか侍女たちが帰してくれなかった。何かにつけて日陰を引き留めようとするのだ。
時には花瓶を持ち出す侍女もいたくらいだ。それで水を掛けるならまだ可愛いものだ。それを振り上げた時には日陰も珍しく焦ったものだった。
実は今、魏では男性は張三姉妹にそして女性(主に城で働いている者)は日陰の追っかけをしているのだ。
張三姉妹は分かる。彼女らのカリスマ性は覇王たる曹操にも劣りはしないだろう。
では何故、日陰に追っかけができたのか?
追っかけをする女性(主に城の侍女)曰く………。
「町にいる殿方とは一線を引いた感じがしましたわ」
「徐福様の周りにいると癒されますの」
「徐福様を見てると、こう抱き締めたくなるのですわ」
との声が聞くことができる。
日陰の周りからはマイナスイオンでも出てるのだろうか?
それと城の侍女たちがお嬢様口調なのは気にしてはいけない。
こうして日陰の休日は幕を閉じたのだった。
明日も我が君の為に頑張ろうと思う日陰であった。




