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3話 徐福、拾われる





――――――――――――――――





「いざ、死地へと向かわん」







と結構格好よく啖呵を切った日陰だったが…………。


「………くっ」


数合も打ち合わない内に片膝をつくことになる。


「まぁ、こんなもんですよね」


日陰は笑う。壊れた笑顔だ。


「………」


そんな日陰に無感情に戟を振り上げる呂布。いや、少しだけ残念そうな気がする。


そして降り下ろそうとしたその時――。


――――ぐぅー。


「………お腹減った」


可愛らしいお腹の音が鳴り、呂布は自分のお腹を見る。


―――バタン。


そして限界に達していた日陰もそのまま倒れ、気を失う。


「恋殿~!」


そこに小さな女の子が走ってくる。


「もうすぐ袁術の領内に入ってしまいますぞ。戻らないと董卓様に迷惑が………」


「………分かった。帰る」


と呂布は女の子の手を引き、自分たちの陣営に帰っていく。


「…………あ。……ねね、待ってて」


何かを思い出したかのように戻る呂布。


「…………忘れ物」











「うぅ………」


日陰は身体の異変に気が付く。


なにやら柔らかいものに体が包まれている感じがするのだ。


確か自分は地面の上なはずだが。もしや天国!?


と目を開けるとそこには生活感が滲み出る天国の天井、もとい一般的な民家の天井があった。


「ここはどこ………?」


私は誰………とはならない。


日陰が辺りを確認しようと体を起こそうとするとそこに違和感があった。


足の辺りがなにやら重いのだ。まるで誰かが乗っているように………。


日陰がそちらを見ると………。


「………………(スヤスヤ)」


呂布が膝にもたれ掛かって寝ていた。


とりあえず動くと彼女を起こしてしまうので、そのまま制止する日陰。


そして考える。


何故、自分はここにいるのか?


何故、彼女がそこで寝ているのか?


本来、日陰は頭の回転が速い方ではない。それが寝起きであるのならば、尚更である。何が言いたいかというと………。


(まぁ、いいか……)


諦めるのである。


「恋殿~!起きておられますか~?」


日陰が窓から外を見て、時間を潰していると扉の方から元気のいい声がする。


扉が開かれ、少女が部屋に入ってくる。


「あぁ!?お前、何をやっているのですかッ!?」


入ってきた少女は開口一番にそんなことを言った。


何を、と問われれば、なにもしてないと答えるしかないのだが、それはおそらく少女が求めるものではないだろうと、ぼんやりと考える日陰。


「…………うぅん」


そうこうしている内に膝の上で眠っていた呂布が起きてきた。


「………ねね、うるさい」


「恋殿~。あの男が~~」


と呂布に寄る少女。


「…………?」


うん?と首を傾け、日陰を見る呂布だが、日陰にしても今起きたばかりで、状況もよく分からない。


「…………大丈夫」


何を理解したのか、呂布は少女の頭を撫でて落ちつかせる。


「あの、呂布さん………」


「…………恋でいい」


「なんですとッ!?恋殿が真名をお許しになるなんて!?」


「………いい人」


日陰を指さす呂布。


「えぇと、とりあえず何故僕はここに?」


「………拾った」


「恋殿はお前を助けてやった、と言っているのです」


「……はぁ」


犬猫じゃないのだから………。


とは思った日陰だが何も言わない。口下手なのだ。


二人の話を聞いていくと、どうやら呂布があの後、気絶した僕を運んできたらしい。


「そうでしたか、ありがとうございました」


とペコリと頭を下げる日陰。


「恋、ねね、居る?ちょっと来てほしいんだけど………」


そこへまた新たに少女が部屋へやって来る。


緑の髪を三つ編みにして眼鏡をかけた少女だ。


「―――ってぇ!?恋が男を連れ込んでるですって!?」


そしてまた一悶着あったが、日陰は取り残されていた。










その後、色々とありまして、今、日陰はうまやにいた。


何故かというと厩の世話役が任命させたからである。


というか見ず知らずの人間を雇用するものだろうか?……まぁ、そこはご都合主義なのだ。


「………日陰」


馬の世話をしている日陰に後ろから呂布が声をかける。


「どうも、恋さん。どうかしましたか?馬が必要ですか?」


「………(フルフル)」


首を振って否定する呂布。


「恋さん自ら馬の世話を?」


「………(フルフル)」


可能性のありそうなことを聞くが外れのようだ。


「………会いに来た」


「馬にですか?」


「………(フルフル)」


首を振り、日陰を指さす呂布。


「僕にですか?」


「………(コクコク)」


どうやらいたく気に入られたようだった。


「えぇと、今は仕事中なのですが……」


「………いい、見てる」


そう言って呂布は手近な所に座り、日陰を見つめていた。


「そうですか……」


日陰は日陰で特にそれを気にするでもなく、黙々と仕事をこなしていく。


これは楽しいのか甚だ疑問ではあるが、当の本人たちは気にしていないのでいいのだと思う


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