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29話 普通という感想が一番グサッとくる








―――――――――――――――






工房から帰る途中、厨房の前を通る日陰。


「そう言えばお昼がまだでした……」


フラリと厨房へ入っていく日陰。そして中には…………。


「あら、日陰。どうかしたのかしら?」


「日陰さん?」


曹操と典韋がいた。


「どうも。お二人は………料理ですか?」


日陰が典韋を見ると丁度中華鍋を振るっていた。


「えぇ、流琉が新しい料理を考えたと言うから試食をしようと思うのよ」


「そうなのですか?」


確かにとてもいい匂いが厨房に漂っていた。


「よろしければ日陰さんも食べていただけますか?」


典韋がそう提案する。


「え?でも僕、食のことはよく分からないですよ?」


「別に大層な解説なんて期待してないわよ。ただ食べて美味しいだけでもいいのよ」


「そうですよ」


「そうですか………。ではご相伴に預からせてもらいます」


二人の言葉を聞いて、日陰は曹操と共に典韋の料理を待つのだった。







「どうぞ、お待たせしました」


と典韋が二人に皿に分けられた料理を出す。


「ではいただくわ」


「………いただきます」


二人が手を合わせて、箸を口に運ぶ。


「ど、どうでしょうか……?」


典韋が心配そうに見つめる。


「………へぇ、これは美味しいわね」


と曹操が言った。


「ッ!本当ですかッ!」


パァッと明るい笑顔を咲かせる典韋。


「えぇ。野菜の食感を残しながらもよく煮込めてあるわ。それに……なにか違うものを使ったわね」


「はい!実は手に入りにくい香辛料が手に入ったのでそれを………」


と二人が料理談義に熱を入れてる横で日陰は黙々と料理を食べていた。


「日陰さんはどうですか?」


曹操に褒められたことが相当嬉しいのだろう笑顔のまま日陰へと水を向ける。


そしてその笑顔は次の瞬間に固まるのだった。


「………え?普通ですよ」


『……………』


ケロリとした顔でそう言う日陰。


「ちょっと待ちなさい、日陰。貴方、この料理が美味しくないと言うの?」


「え?違いますよ……。僕は普通って言ったんですよ?」


「つまり、不味くもなく、美味くもない、そう言いたいの?」


「…………その言い方は違いますね。あえて付け加えるなら―――」


普通に美味しい、そう言った。


「そ、そうですか………」


曹操の褒め言葉もどこへやら、一気にテンションが落ちる典韋。


不味いと言われれば、それなりに割り切れただろうが………。


普通に美味しい、と言われて素直に喜びも落ち込みも出来ない。


「……一体今までどんな料理を食べてきたのよ」


曹操が呆れたように言う。


「どんな、とは……。普通に一般大衆食堂で食べたり、後は自分で作ったり………」


とそこである言葉に二人が反応した。


「へぇ、“自分で”作るのね、貴方」


ニヤリと笑う曹操。


「そうね………。じゃあ一品作ってもらおうかしら?いやとは言わないわよね、日陰?」


「はぁ。別に構いませんけど………」


と調理台の前に立つ日陰。


(ふふ。これは思わぬ拾いものかもしれないわね)


そんな後ろ姿を見て、曹操はそう思っていた。


基本的には何事もそつなくこなす日陰。


料理に関しても上手いとまではいかなくても、不味くはないだろうと思っているのだろう。


結果としては不味くはなかった。味に関しては……………。








「ちょ!日陰さん、下拵えもせずに鶏肉を鍋に入れたら………」


「ちょっと、蛙をそのまま入れるものがある!?」


「あぁ!火、火が強すぎますよ!?」


「なんで中身を確認しないでいれるのよ!」


日陰の料理は正に男の料理だった。


丸焼きに次ぐ男の料理、“ぶっ込み料理”だった。


とりあえず食材をぶっ込み、炒める。とてもシンプルな調理方法である。


そして味がこれまた、悪くはない。


マイナスとマイナスが掛け合わせてプラスに変わることもある。


「味がマトモなだけに納得いかないわ………」


やや憔悴した曹操が言う。


「こんな滅茶苦茶でこれだけできるなんて……ある意味才能です」


そして同じく、憔悴した典韋が言う。


そして二人の見つめる先には………。


「………もぐもぐ」


ぶっ込み料理を食べる日陰であった。


「一応、聞くけど………美味しいかしら?」


曹操がそう訊くと………。


「………普通ですよ。普通に美味しい、です」


典韋の料理と同じく評価をする日陰がそこにいた。


『はぁ………』


曹操は日陰の味音痴(と言うよりは何に対してもこんな評価ではないだろうか)に、典韋は自分の料理とこの料理が同じだと言われたことにため息を吐いた。


「………たまには料理をするのも悪くは―――」


「貴方は大人しく食べる役に回りなさい!」


「……そうですか」


「あぁ、それとその料理、一皿置いといてちょうだい」


「え?構いませんけど………」


「ふふふ。ちょっとウチの猫にあげるのよ」


と曹操は含み笑いをする。


日陰は言われた通りに一皿に料理を分けておいた。


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