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26話 お仕置き?






―――――――――――――――






「………あの、荀イク様?」


只今、日陰正座中。


その正面に仁王立ちの荀イク。


どうしてこうなったのか…………。











時は曹操たちと一緒に徐州まで帰ってきたところまで戻る。


「それにしても今までどこに居ったんや、日陰?」


「いえ、気がついたら森の中で医者のか………か、方に助けていただいてたので……」


「助けられとった、て……。自分が戦っとった場所から自分が来た方向ってえらい離れとるで?そない遠くまで運ばれてったんか?」


「さぁ?僕は寝ていたので、よくは分からないのですけど………」


狐狸こりの類いにでも化かされたのではないのか?」


夏侯惇が横から会話に加わってくる。


「そうなのでしょうか………」


日陰はカクンと首を傾げた。


「三人とも、そろそろ着くわよ」


そんな時、曹操が日陰たちに声をかける。


「徐福…………覚悟しなさい」


「………?」


なにやら意味深な言葉を言う曹操だが、それ以上何も言わずに先に城の中へ入っていった。


「まぁ、なんだ。………頑張れ」


「気力でなんとしろ!」


「気張りや、日陰」


と他の三人も肩を叩き、城へ入っていく。


「…………」


日陰はそれをただ呆然と見るのだった。







そして城内に入ると一番最初に目がいったのは……………。


「荀イク様!」


ネコミミフードで顔は見えないが間違いなく荀イクその人であった。


そして荀イクは無言で日陰に近づいてきた。


顔は俯き勝ちなため、表情は読めなかった。


「荀イク様、只今帰り―――ぐへ!?」


―――ガツンッ!


挨拶を交わそうとした日陰の脳天に衝撃が走る。


そして荀イクの手にはのび~るアームが握られていた。


「あ、あの、荀イクさ―――ぐふぁ!?」


――――バシッ!


次は横から衝撃が来る。


日陰が見たのはのび~るアームを振り抜く荀イクの姿だった。


「荀い―――」


―――ガシッ、バキッ、ドシャッ、ガシャッ………………。


荀イクののび~るアームによる10連コンボにより伸ばされた日陰を荀イクは無言で襟首を掴み、引き摺っていった。


「あらまぁ、これはひどくやられたものね」


その光景を後ろから見ていた曹操が言う。


「でも、桂花にあれほどまで心配させるなんて…………妬けるわね、徐福」


「あれで心配ってどんだけ感情表現下手やねんって話やで」


「ふふふ、それが桂花の可愛い所じゃない。……春蘭、秋蘭、私たちも閨で楽しみましょ」


『……は、はい!』


「なんや?皆、お楽しみかいな。ウチだけ除け者なんて寂しぃわ」


「あら、じゃあ霞も共に来るかしら?」


「か、華琳様!?」


「いや、今回は遠慮しとくわ。それよか今は凪たちと飲みたい気分やねん」


「あらそう。なら今日の仕事はもう上がっていいと伝えておいてちょうだい。今日は休んで明日からまた働いてもらうわ」


「了~解」






そして冒頭に戻ります。


「………あの、荀イク様?」


無言で立つ荀イクを下から見上げる日陰。


やはり表情はフードで見えない。


―――ガツンッ!


そして頭に振り下ろさせるのび~るアーム。


しかしそれには先程のような痛みはなく、ポコポコと当たるだけだった。


「………見なさい」


そして荀イクはここで初めて言葉を発する。


日陰はそれに少し安堵した様子を見せ、荀イクの指した書簡の山を見る。


「……あれは何?」


「えぇと、書簡の山、です……」


「そうよ。戦いの後は事後処理でこれだけの書簡を整理しなきゃいけないの」


荀イクはその書簡には目も向けず、ただフードの奥から日陰を見ていた。


「それなのに私の副官たちは使えない男たちばっか………」


「………すみません」


日陰は自分のことも含まれているのだと思い、謝る。


「………座りなさい」


「……はい?あのもう座って………」


と、口にした日陰にまたポカっとのび~るアームが振り下ろさせる。


そして、それは次に荀イクが座っている椅子を指し示す。


「……あそこに?」


一応、確認を取る日陰だったが、荀イクからは肯定も否定もなかった。


なので日陰は恐る恐ると椅子に座ることにした。


「あのこれで――――ッ!?」


座って荀イクを見ようとした日陰の目の前に黄緑色の三角が2つ揺れていた。


「なによ。季衣はよくて私はいけないの?」


荀イクが膝の上に乗ってきたと理解するのに暫しの時間がかかった。


「……え、あ、いえ、それは……構いませんが………」


そして荀イクは日陰にのび~るアームを渡す。


それが包帯の巻かれた手とは逆だったことに日陰が気づくのはもう少し後だった。


「あれ、取りなさい」


荀イクが一つの書簡の山を指差す。


「……はい」


と迷わず、荀イクの欲した一つの書簡を抜き取り渡す。


「……ふん」


そしてその書簡に目を通していく荀イク。


「……少し高いし、ゴツゴツしててお尻が痛いわ」


書簡に目を通しながらそう口にする荀イク。


それはそのはず、椅子や机は荀イクの体型に合わせて作られているのだから、日陰の膝の上からでは高くなるし、日陰も男なので体格的にも柔らかくはないだろう。


「それなら僕は退いた方が………」


「動かないで。字が見にくいでしょ」


退こうとした日陰だったが荀イクの言葉でそれを止める。


そしてそのまま、荀イクに言われた書簡を日陰が取り、荀イクがそれを整理していく作業が続いた。


その作業も大分時間が経ち、大方終わったところで荀イクが書簡を閉じる。


「あの、荀イク様?お茶をお入れしましょうか?」


いつもの日陰なら自然と出すのだが、この状況では茶器を取って来ることもままならず、荀イクの確認を取る日陰。


「……まだ、いいわ」


そう言ったままその場に座り続ける荀イク。


己の主がそう言う以上動くことが出来ない日陰もそのままの状態で待機する。


「………荀イ―――」


「――桂花」


日陰の言葉を遮るように荀イクが言う。


「………はい、桂花様」


「それでいいわ。……………日陰」


日陰からは荀イクの顔は見えなかったが、耳が真っ赤であることだけは分かった。


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