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23話 帰り道は長い






―――――――――――――――






日陰が徐州に帰ろうとしている時、袁術を追い出し江東を取り戻した呉の執務室では………。


「雪蓮、何故“不殺”を討ち取らなかったの?」


「ん~、それはね………」










「ホントに寝ちゃった………」


日陰は宣言通りに眠っていた。


「う~ん、寝てる人間を殺すのってあんまりいい気分じゃないわよね………でも、このまま生かしておいても、いずれ必ず孫呉の敵になるのよねぇ」


と孫策は納得のいかない顔をしながらも長剣を日陰に振り落とす。


それは王としての適切な判断だ。しかしそれが行動として行われることはなかった。それは突如として吹いた風に阻まれることとなったのだ。




ただ、その風が通り過ぎていく瞬間



「あらぁ?卑弥呼、見てちょうだい。こんなところに人が倒れているわよん」


「うむ。ダーリンには及ばぬがなかなかのおのこじゃの」


「それになんだか怪我をしてるみたいだわ?」


「うぬ!?それはいかん!ダーリンのもとへ連れて行くぞ、貂蝉!」


そんな幻聴と紐パンと褌の筋肉ダルマの姿を見た気がした。


そして後には日陰の姿はなく、残ったのは何とも言い知れない嫌悪感だけだった。






「………なわけで討ちそこねちゃった」


「にわかに信じがたい話だけど………まぁ、そんな嘘に意味はないだろうから信じておくわ」


「ぶぅー。嘘じゃないのに………」


膨れる孫策に意地の悪い笑みを浮かべる周瑜だった。











「華琳様、こちらが河北四州の制圧の報告書です」


魏の玉座の間で報告書を提出する荀イク。


「ふん、霞も春蘭も順調にことを運べたようね」


それを見ながら頷く曹操。


「それとこちらが…………徐州での劉備との共闘時の報告書です」


一瞬だけ表情に陰りがあった気がした。


「………そう」


「どうやら徐福の言った通り、こちらが袁紹を倒したことを知るや一目散に撤退し始めたそうです。それと………」


「それと?」


「劉備軍に呂布が参入したようです」


報告を淡々と続けていく荀イク。


「………以上が今回劉備軍へ貸した兵からの報告です」


「そう、分かったわ。他に報告することは?」


「………特にはありません」


「あ、あの!」


と今まで曹操の横に控えていた典韋が手を挙げる。


「徐福さんはどうしたんですか?先ほどの報告では隊とは別行動だったみたいですけど………」


「知らないわ」


典韋の問いに素っ気なく答える荀イク。


「劉備たちとも別行動だったみたいだし、戦場後には板の燃えかすしかなかったらしいわ」


「それじゃあ、徐福さんは………」


「流琉」


典韋の言葉を曹操が止める。


「桂花、報告ご苦労様。春蘭たちが帰ってくるまで休んでいいわよ」


「御意」


曹操の言葉に一礼して、玉座の間を退室する。


「桂花さん、冷たすぎますよ」


荀イクが部屋を出た後、典韋が不満そうに言う。


「そんなことはないですよー、流琉ちゃん」


それに程イクが言う。


「軍師とはいついかなる時も冷静でなくてはいけません」


郭嘉がそれに続ける。


「それでも少しくらい……」


「見た目はああでも心では泣いてるんですよー、桂花ちゃんは」


そう言って一同は荀イクの出ていった方を見る。








―――――パタン。


荀イクは自室の扉を閉める。


「…………」


――――ボスン。


そして寝台に倒れ込む。


「……なに、勝手してるのよ」


倒れたまま横を見る。


そこには日陰の使っていたのび~るアームが置かれていた。


日陰が荀イクにあげたものだ。高いところでも手が届くようにと………。


だが、未だ使ったことはない。手が届かなければ日陰が取るのが常だった。


「…………ばか」


そして荀イクはそのまま眠りについた。


胸にのび~るアームを抱えて………。


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