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16話 別にあっちでもこっちでもない








―――――――――――――――





「あ、徐福やんか」


日陰が廊下を歩いていると向こうから三羽烏が歩いてきた。


「どうも」


ペコリと会釈をする日陰。


「せや、徐福はもう昼は済ませたんか?」


李典が何かを思いついたかのように、ニヤリとする。


「え?……いや、まだですが」


「じゃあ、沙和たちと一緒に食べるの」


そして于禁も李典の考えを察したのか、嬉々としてそう言う。


「こら、二人とも勝手に話を進めるな。徐福の都合も聞かないで………」


「大丈夫やて、凪。こないな時間にブラブラしとるんやで?暇に決まっとるやん」


確かに暇な日陰であった。


「な、ええやろ?折角仲間になったんやから親睦を深めんと、な」


「はぁ。別に構いませんよ。荀イク様もお昼休みなので、僕も暇ですから………」


「じゃあ、決まりなの~」


そう言って李典、于禁の二人が先導を切って行く。


そんな二人を楽進と日陰が追いかける。


二人からは見えなかったが、前の二人はクシクシと笑っていた。









「………それで、これは?」


「唐辛子………」


「……ビタヒダなの!」


日陰の前にはまるでマグマの如く、赤々とした担々麺があった。


ちなみに楽進にも同じものが運ばれてきた。


「あれ?僕、これ、頼みました?」


確かに自分は炒飯を頼んだと思う日陰。


「えぇ?そうだよ?ねぇ、真桜ちゃん?」


「そうやで」


なんだか、ニヤニヤと笑いながら肯定している二人。


そんな二人を見て、呆れたように首を振る楽進。


「徐福、無理して食べることは無いぞ。それなら私が食べ………」


「まぁ………いただきます」


と手を合わせて、日陰は唐辛子ビタビタ担々麺を食べる。


「真桜ちゃん」


「あぁ」


『作戦大成功~』


どうやら、日陰をからかうために誘ったようだ。


いつも無表情で動転しない日陰を驚かせようという悪戯らしい。


「………ぐもぐも」


どんな辛いもの好きなものでも水を求める激辛担々麺(楽進考案)。


それをゆっくりと咀嚼していく日陰。


「………ゴックン」


そして飲み込む。


――――じぃー。


「あの、何故そんなに僕は見られているのですか?」


「う、うそぉ~、なの!?」


「ホンマかて………」


日陰は難なく担々麺を食べ干した。汁までツルリと。


「辛くないんか?」


「辛いですよ?辛くない担々麺があるのですか?」


口調にも変わりがない。無理をして我慢しているわけではない。本当に普通に食したのだ。


「スゴいの。凪ちゃん以外にこれを完食してる人見たことないの」


二人は驚き、楽進は同士を見つけたように身を輝かせていた。










「それにしても徐福はよくやってるの」


「何がですか?」


食事を終えて、小休憩にお茶を飲んでいると于禁がうんうんと頷きながら言う。


「何って、そりゃ桂花様の補佐やで」


「まぁ、確かにあれだけ罵詈雑言を言われながらも仕事をこなすのはすごいな」


「普通なら3日で辞めてるの」


そう言う于禁の新兵訓練も似たようなものだが、それは置いておくべきだろう。


「と言うか、なんで大将でなく桂花様なん?普通、仕官言うたら、その国のてっぺんにするもんとちゃうの?」


「そう言うものなのですか?僕は元々農民の出ですからそう言うのはよく分からないのですが………」


「いや、それはあまり関係ないと思う」


カクンと首を傾げる日陰に冷静につっこむ楽進。


「強いて言うなら一目惚れですかね」


「もしかして徐福はそういう趣味の人なの?」


「………?」


日陰は于禁の言葉の意味が分かってないので代わりに答えさせてもらうなら、断じて違う!


「あ、凪ちゃんたちだ!」


とそこへ許緒と典韋がやって来た。


「季衣ちゃんたちなの。二人もお昼なの?」


「そうだよ。ここの酢豚美味しんだぁ」


「そうなんか?うわぁ、食べればよかったわ」


「まぁ、今度来たときに食べればいいさ」


五人は仲良くお喋りをし始め、日陰は除け者に…………。


まぁ、日陰自身あまり気にしてはおらず、真名の通り陰に回るのは嫌いではない。


「すみません。騒がしくって………」


「いえ、構いませんよ」


と除け者となっていた日陰を見かねて、典韋が話しを振ってくれる。


「あ、徐福の兄ちゃんも来てたんだ」


今気づいたかのように、いや、実際今気づいたのだろう。


ひょこひょこと徐福の近くにやって来る許緒。


そしておもむろに徐福の膝にポスッと座る。


「ねぇねぇ、なに食べたの?」


そして変わらずに話題を続ける。


「ちょっと、季衣、何してるのよ!?」


「え?何って?」


その行動を典韋がたしなめるが許緒は分かっていないようだった。


「だから、徐福さんの膝の上になんで座ってるのよ」


「あぁ、これ?何となくだよ。座りやすそうだったから………」


さも当然のように言う許緒。


「徐福はあっちの人じゃなくてこっちな人だったの……」


そしてあらぬ誤解も増えていた。


断じて、被虐趣味も幼女趣味もない日陰である。


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