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13話 徐福と王佐の才






―――――――――――――――





「荀イク様、荀イク様、これはどちらにお持ちすればいいのですか?」


絶賛日陰お仕事中。


「近付かないでって言ってるでしょッ!?穢らわしい!」


一歩後ろを歩く日陰に厳しい罵声を浴びせる荀イク。


あの後、一悶着あったのだが、なんだかんだと仕官することになった日陰。(勿論荀イクに対してだが……)



「?……それでこちらの資料はどちらに?」


全く動じていない日陰。


「くっ………。なんなのよ、アンタは!?」


普通の男ならば散々と言われれば自ずと離れていくものだ。


まぁ、一部の特殊性癖の人には通じないかもしれないが。むしろご褒美?


勿論、日陰は一部の分類には入らない。


断じて入らない!!







「と言うか何で私なのよ?」


「何がですか?」


荀イクの後ろを三歩空けて、歩く日陰。


これが荀イクの妥協点なのだ。


「だから何で私に仕えようと思ったわけ?私はアンタを知らないし、アンタは私を知らないわよね?」


怪しんだ様子の荀イク。


「強いて言えば一目惚れです」


「………はぁ?」


何の恥じらいもなくあっけらかんと言える、それが日陰の良いところ。


「初めて会ったときから貴女に決めてました」


あれ?日陰ってこんなキャラでしたか?


そして、荀イクの答えは………。


「キモい」


まぁ、玉砕です。


「それでこの資料はどちらにお持ちすればいいのですか?」


はい、華麗なるスルー入りました!


へこたれないのが日陰なのです。


と言いますか、今更ながら状況の説明。


只今、二人は資料を持って執務室に移動中です。


「もう、アンタホントにキモいわ。視界に入らないでくれる?それが無理なら死んでちょうだい」


今日も荀イクの毒舌は絶好調だった。


「ちょっと聞いて―――」


返事の無い日陰に苛立った様子で振り返る荀イクだったが……………。


――――誰も居なかった。


「………ちょっと本当に消えちゃったじゃない」


「荀イク様、荀イク様。それでこちらの資料は…………」


「―――ヒィ!?」


そして、背後から日陰の声が聞こえて、肩をビクリッとさせて振り返る。


――――が、そこには誰も居なかった。


と言いますか、さっきらから同じことしか言ってないですよ、日陰。


「ちょ、ちょっとどこから話しかけてるのよ!?」


「背後から」


とまた後ろから声が聞こえた。


まるで不忍の仮面を付けた忍者の如く。


日陰は視界に入らないで、と言う理不尽な命令にも忠実に従うのだった。


まるで洋装の忍者の如く。


「おっ、居った居った。おーい、日陰~」


とそこで少し離れた所から張遼がこちらに手を振りながらやって来た。


―――サッ。


今ならばと荀イクは三度みたび振り返るが………。


「なにやっとるんや、自分ら?」


やはりそこには日陰は居なかった。


「ちょっと霞、アンタには日陰が見えるわよね!?」


「見えるも何も………。桂花の後ろに居るやん」


―――サッ。サッ。サッサッサッサッサッサッサッサッ。


「……居ない」


張遼から見れば、荀イクがクルクルと回っている様にしか見えない。


「桂花………。少し休んだ方が………」


「私をそんな哀れんだ目で見ないでよね!?」








「はぁはぁ。………それで霞は何しに来たのよ?」


もう日陰を探すことは諦めた荀イクは張遼に向き直す。


とはいえ、日陰はずっと後ろにいるのだが…………。


「あぁ、そうやった。ちょっと日陰を借りたいんやけど、ええ?」


「なんで私に聞くのよ?」


「何でって………なぁ?」


と荀イクの後ろの日陰に話しかける。


「はて?そこで振られましても困りますね、霞さん」


「なら、ちょっと付き合ってくれるんか?」


「荀イク様のお手伝いがありますので、後でなら」


「ほらな。日陰は桂花にぞっこんやからな」


「気味の悪いこと言わないでちょうだい!?」


「まぁ、それは置いといて。それでええか、日陰借りても?」


「いいわよ、そんなやつ。さっさと連れていきなさいよ」


「ほな、ご主人様からはお許しがでたで」


「あぁ、でも今、僕は荀イク様の視界に入ってはいけないので………」


困ったような声を出す日陰。


理不尽には応えても、不可能には応えれない日陰だった。


「桂花……」


「なによ!?ホントにするとは思わないじゃない!?」


確かに視線に入らない方法なんて荀イクでも考えつかない。


「まぁ、そうやけど……」


「分かったわよ、撤回すればいいんでしょ!?もういいわよ、私の視界に入っても」


「はい。承りました」


それで後ろを向くとそこには三歩、先程までの位置に日陰が居た。


「そんじゃ、借りてくで~」


そして張遼が日陰を連れていった。








「全く。なんで私が男なんか使わなきゃいけないのよ。ふん、いいわ。使えないって言って華琳様に霞辺りにでも押し付けてもらうんだから」


とぶつくさ文句を言いながら日陰が持っていた資料を自分のに重ねようとすると………。


「………重ッ」


自分の持っていた物よりかなり重いことに気づく。


「アイツ、もしかして…………」


小さな気づかいができる日陰なのだ。


「ま、まぁ、もう少しの間は使ってやっても……」


そう呟いて荀イクは執務室へ向かうのだった。












「僕は貴女が支える人だから………王を支える人だったから………支える人を支えたいと思ったから………僕は貴女に仕えたいと思ったのですよ」


王佐の才を持つ者に不殺の将が仕えたことは後の歴史には残りはしなかった。


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