〜番外編〜
本編の時間軸とはずれていますが不自然の無いようにやってみました。
ガツガツガツッ!
「だいたい世の中カップルカップルカップルばっかりでうんざりするの」
「…そうね」
むしゃむしゃむしゃっ!
「最近は特に私のことを知らない無知なヤツばっかりだし仕事にもなんないしやってられないの!」
「…毎年この話を聞くわたしの方がやってられないわよ」
むぐっ!?んん〜っ!!
「こはく、ちゃんと水飲みなさい。あとゆっくり食べなさい。」
…わふん。
こんばんは佐倉こはくです。今日はクリスマス。
二学期の終業式を終え、こよりお姉ちゃんと二人きりのクリスマス!と嬉しさのあまり尻尾をフリフリしていたのですが、第三者の介入でいろいろとぶち壊しです。どうしてこうなった!
☆番外☆〜メリー・クリスマスは大変です。〜
学校が終わり友人たちに暫しのお別れを済ませた犬娘は自宅でこたつにて丸くなっていた。
夜はこよりお手数クリスマスディナー(特盛)を頂けるとあって実にだらけている。ささやかながらプレゼントも用意し、台所から漂ってくる匂いにもう涎が少し出ている辺りは言わずもがな。
目を細めていると備え付け電話の音が響く。
携帯電話の普及している現代で固定電話の需要はかなり低くなっているものの、インターネットを繋ぐ際に少しばかり安くなるとの理由だけで引いているコレはやはり滅多に鳴ることがなく、家長であるこよりに指示を仰ぐと手が話せないから代わりに出て欲しいとのこと。
こたつで暖まった身体に鞭を打ち電話に手をかける。「…もしも「もしもし、私、メリーさん。今ごみ捨て場に…え?」
いきなり話し出して困惑する電話の声は綺麗な少女のものだった。とりあえず挨拶されたからには返すべきだろうか?えぇっと…
「メリー…クリスマス?」コレで正解だろうか?
向こうもメリーと言ってきたし間違いないはずだ。
「……。」
「…………。」
妙な緊迫感の沈黙。
此方から切り出そうかと考え始めたところで台所から出てきたお姉ちゃんが怪訝な顔をしながら声をかけてきた。
「電話だれ?」
「わかんない。いきなりメリーって言うからメリークリスマスって返した。多分イタズラ電話だよ。」
「そう?なら切っちゃっていいわよ。料理はオーブンが焼き上がれば完成だしゆっくりしましょう」
「うん、わかっ「ちょっとその声こよりよね!?はやく代わってほしいの!」
受話器塞ぐの忘れていたので耳に響く声にキンキンしながらこよりお姉ちゃんに電話を渡す。ぐすん。別に台詞被せられたからって悲しくないもん。
「はい、お電話代わりました。あら、メリー。どうしたの?今年は妹と過ごすから無理って留守電入れたじゃない。」
どうやらお姉ちゃんの知り合いのようです。
メリーさんって名前のことでしたか。その発想は出てこなかった。
「とにかく今年は呑みに行かないから誰か探してよ。え?今公園!?ちょっと!」
慌てているお姉ちゃんを他所に電話は切れてしまったようで少し顔色が悪そうです。
「こはくさん。」
「何でしょう?」
「これからお客さまが来ます。」
「お客さまですか?」
「お客さまです。」
「すぐ帰るのですか?」
「…わかりません。」
「お友達ですか?」
「ええ、毎年クリスマスになると呑みに行く友達なんだけどね。今年はこはくと過ごしたいから断ったはずなんだけど伝わってなくて…」
何でも毎年1人で過ごすのが嫌で二人で呑んでいたようです。
しかし此方としても初めてのお姉ちゃんとのクリスマスです。譲れません。
「断れないの?」
「それが少し代わった子で…っ!来たわ…。」
お姉ちゃんが説明しようとしたら電話がまた鳴りました。とりあえず断れないかと受話器を取ります。
「すみませ「私、メリーさん。今、アナタの後ろにいるの」
瞬間。部屋の温度が一気に下がりました。
暖房とこたつでぬくぬくだった部屋が急に外に出たように冷えきってます。
振り向くと綺麗な蜂蜜色の髪を伸ばしあどけない表情をした白いワンピースの少女がいました。
「お姉ちゃん、この人…」
「ええ、怪奇よ。見た目と年齢が違うけど私の友達。名前はメリー。」
確認の為にお姉ちゃんに顔を向けると頭痛を抑えるように頭に手を当てています。
メリーさんの方を再び向くと手にはコンビニの袋。中身は大量の缶ビールと少しのツマミ。ガチで呑む気ですこの人…。
「呑みにきたの!」
「きたの!じゃないわよ…」
「独りはつまんないの。こよりと世のリア充どもを爆発させてやろうと思ってたのに急に仲間外れにするなんて酷いの!だいたいクリスマス嫌いなの!電話かけたら皆『メリークリスマス』って返してくるの!怖がりなさいよ!何で親しげな雰囲気出してるのよ!」
よく見ると若干メリーさんの顔色が赤いです。出来上がってますね…。
それから帰らない酔っぱらいメリーさんの絡み酒もとい愚痴を聞きながらお姉ちゃんの作ったディナーを頂きました。七面鳥、フライドポテト、シチュー、ケーキetc…どれもコレも凄く美味しいのです。…メリーさん。アナタがいなければ…。
お腹がいっぱいになり酔いも回りきったのか真っ赤なメリーさんは「着信拒否しないで…」と言いながら寝てしまいました。
「ふぅ…長かったわね。ごめんなさいね、こはく。ホントは二人でゆっくりと過ごしたかったんだけど。」
疲れ笑いを浮かべるお姉ちゃんに労いの気持ちを込めて今日の為に用意していたものを取り出します。
「これ、プレゼント。なんか無茶苦茶になっちゃったけど受け取って欲しいです」
「ありがとう。開けても良い?」
頷くと丁寧に包装紙を剥がしていくお姉ちゃん。
用意したのはブローチ
琥珀色のラインストーンを散りばめて、フェイクパールとお花の模様のメタルが綺麗な一品。悪くは無いと思います。
可愛い可愛いとはしゃいでるお姉ちゃんを見れば間違いないです。
「じゃあ私からはコレかな」
差し出された箱を開けるとシルバーに花柄の黒曜石のラインストーンがあしらわれたピンキーリング。
早速着けてみると派手すぎないお洒落感についついニヤけてしまいます。
「ありがとう!」
お礼を込めてこよりお姉ちゃんに抱きつきグリグリと鼻先を押し付けて首筋をペロリ。
むず痒そうな顔をしながらお互いに目を合わせ同時に口にしていました。
「「メリークリスマス!」」