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コレが噂の異世界トリップ。

借宿を出たらソコは異世界でした。

いや、うん。現実と向かい合います。

あり得ないくらい高級住宅街ですありがとうございました。

元住んでいた木造のボロアパートなんかと比べることがおこがましいくらいの高級マンションでした。


「お姉ちゃんの家って近いんですか?」


取り敢えずこのまま呆然としていても仕方ないので目的地を聞きます。緊張で手汗がヤバいので手を離そうとしたらガッチリホールドされました…くぅん。



「歩いて10分くらいかな。ビルのワンフロアを借りてるの。書類仕事とか多くてね」


上機嫌なこよりお姉ちゃんからはシャンプーのいい香りがして、僕も同じものを使ってるのにドキリとしました。

まぁ僕は動物用シャンプーシャンプーも使ってるんですけどね。

動物用…

ん?コレってもしかしたらマズイ状況なんじゃないでしょうか…

僕の格好。

さっきまで着ていた私服に自分のものとは思えない双丘、ここまでは普通だ。

いや、まだ受け入れきれてはないけどね!

とにかく、コレだけならまだ《人間》としては普通だけど今の僕は狗神。

そう、このフサフサの耳と尻尾は隠しようがない。

人に見られたらどんなことをされるか…。

あの子犬みたいに…。

恐怖で足が固まり、すがるようにこよりお姉ちゃんにしがみつきました。


「どうしたの?」


「今の…僕。ヒトじゃない…」


「…そうね。」


「誰かに見られたら…僕…どうなっちゃうの?痛いのいや…怖いのも嫌だよ…っ!」



顔色が真っ青になったこはくを見て、わたしは肝心なことを伝え忘れていたことに思わず下唇を噛んだ。


肉体、精神共に急激な変化をしたが元はただの男の子。

ストレスも半端なものでは無いのに。

自分の説明不足でこの子に不安を更に与えてしまった。

たとえ《此方側の常識》でもソレを伝え忘れていた自分を恥じた。コレでよく教師だ保護官だと言えたものだ。ゆっくりとこはくに目を合わせて落ち着かせる。こはくの瞳からは拭いきれないほどの雫を溢していた。


「大丈夫。他の人間には見えてないから。普通の人には貴女はただの可愛い女の子にしか見えないわ」


「…どういう…こと?」


「こはくが狗神だと分かるのは同じ怪奇か人の中でも見える人、一般的には《霊感》が強いって言われるような人だけ。他の人には耳は人間の耳に見えるし、尻尾だって見えない。もし、仮に見えた人がこはくに何かしようとしたら…」




《お姉ちゃんが絶対に助けてあげる》



こよりお姉ちゃんが綺麗な笑顔でそういってくれた。何度も何度も撫でてくれて、震えていた身体が解れていく。

まだ上手く声は出せないけど絞り出すようにお礼の言葉を言った。

もし、僕が保護されたのがお姉ちゃんじゃなかったらこの暖かい気持ちも無かったんだ。


「いきましょうか。可愛い女の子がこんなところで泣いてたら別の意味で視線が集まっちゃうかな」


周りを見回すとさっきまでは無かった視線を感じて僅かにびくっとしました。

男の人の視線が多いのは気のせいだと思いたい。



少し早足で移動を開始しました。

見るからに高そうな建物ばかりの街並みだったのに一歩路地裏に進むと空気が変わったように人気がなくなった。

テナント募集中の貼り紙が沢山ある閑散としたビル郡の中の一つを前にしてこよりお姉ちゃんの足が止まりました。と、いうことは…

「ここがこよりお姉ちゃんの家?」


「そう。そしてこれからはこはくの家でもあるのよ。私たち二人のだけ家」


キーを出しながらビルの中に入っていくお姉ちゃんの後に慌てて着いていきます。

新しい家での生活。

二人だけの家。

新しい生活の場所に胸を弾ませながらドアを開けました。






新居に入ったら、ソコは異世界でした。


…え?同じのは要らない?

わかりました。現実と向き合います。

外装は普通のビルでした。探偵の事務所なんか有るんじゃないかって思うくらいに。

きっとデスクが置いてあるシンプルだけと大人の魅力があるそんな場所を想像していたのですが…


壁紙はピンクに犬の足跡マークのある可愛いらしいもの。

カーテン、マット、スリッパ、目に写るもの全てがデフォルメされた犬のキャラクターで統一されていて目が点です。

可愛いもの好きの僕でさえ吃驚。

そこを当然のように進んでいくこよりお姉ちゃん。

おかしいのは僕の方なのかな!イメージと全然違うよ!?


「なにしてるの?もう遅いから早く寝ちゃいましよ。はい、パジャマ」


そう言って渡されたのは黒い犬の着ぐるみパジャマ…。お姉ちゃんが持っているのは恐らく同じパジャマの色違いの白。

固まっていても仕方がないので無言で着替え、寝室へ手を引かれていきます。


「今日は他に寝るところはないから一緒に寝ましょう」

目の前にあるのはやはりファンシーな犬柄のシングルベッド。


「ゆ、床で良いから!」


何がとは言えませんが危険なかおりがして上擦った声で告げるも


「嫌なの?」


その一言で撃沈しました。笑顔なんです。ものすごい笑顔なのに目だけが猛禽類のよう。

フルフルと首だけで否定。ベッドから落ちないようにするにはピッタリとくっつくしか無くて

心なしかお姉ちゃんの頬が上気している気がします。他の人からはお姉ちゃんが守ってくれると言っていましたが

お姉ちゃんから守ってくれる人はいませんよね…。

貞操の危機を感じながら瞼を閉じて長かった1日が終わりを迎えました。

なんでこうなったのか作者もよく分かりません←

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