色々な説明を受けました。
人間じゃなくなったようです。でも不思議と嫌な感じはしません。
今は落ち着いてさっきの部屋に戻ってきています。
「さっきの続きなんだけど、いいかな?」
首を縦に振ると説明してくれました。
「わたしがキミをここに運んだのはそういうお仕事なの。一般には知られていないけど怪奇現象保全事務局って言うのがわたしの勤めているところ。」
怪奇現象保全事務局。
世の中に出た怪奇は不安定で放っておくと災害、災厄の種になる。
大地震や地盤沈下、整備不良での事故などはそれらが種を蒔いている。
そのことを気がついた人間が様々な国で結び付き合い世界中に支部を広げる大きな組織になった。
自我を持っている怪奇は保護し世界に人間と怪奇が安全に暮らしていけるように教育の場を設ける。
と、言っても特別な拘束をする刑務所のようなものでは無く定時制の学校のようなもので普通の人間もそこで正体を知らずに学んでいたりもする。
「わたしはそこの教師と保護官の兼任をしているの
名前は佐倉こより。人間よ。聞きたいことあったら質問どうぞ」
そう言って片目を瞑る仕草があまりにも自然体で少しドキっとする。
なんと言って良いのか分からなくてとりあえず浮かんだことから聞いてみた。
「えと、佐倉、さん?僕が狗神になった…というかそんな感じの時に壊れた商店街ってどうなりました?」
「こよりでいいわ。ああ、実際には壊れてないよ?アレ」
「ふぇ?でも!地面は凄い揺れたしあちこちものは壊れて嵐とか地震がきたみたいに!まるで…」
「まるで、この世の終わりみたいだった?」
「っ!」
「うん。それが災厄や災害の種そういうのを関知したりする道具があるの。わたしが持ってるのは神社の御守りみたいな形してる」
見せてもらったのは本当に御守り…なんだけど
「…恋愛成就って書いてありますけど」
「…恋したいのよ」
空気が重くなったのでこれ以上は聞けない!うん!災厄察知出来るんだもん!恋愛ぐらいなんとかなる!きっと!多分!
「じゃ、じゃあ!さっき首に巻いてくれたコレも何かの道具なんですか?」
「反らした?話反らしたわね?」
うぅ…こよりさんの目が笑ってないです。こわいです。
「まぁ良いけどね。キミ反応面白いから、つい。その首飾りはわたしの私物で特に特別なモノじゃないの。動物型の怪奇って首飾りをつけると落ち着く子が多いの 嫌だったら外しても大丈夫よ?気休めみたいなものだし」
「いえ、出来れば着けていたいです。安心しますし」
「そう」
それになんだか暖かいなんだかこよりさんに抱き締めてもらってるみたいで
そう考えたらさっき抱き締めてもらったことを思い出して顔が熱くなってきた。こよりさんはクスクス笑ってるし…恥ずかしい…。
「それじゃあキミの名前、決めないとね」
「名前って?僕にはちゃんと って名前が…っ!?」
アレ?僕の名前…出てこない
そんな!だって、僕はさっきまで!「 」って名前が!名前!
「落ち着いて、大丈夫だから」
頭に温もりを感じて我に変える。また、撫でてくれてるんだ。
「ごめんね。さっき、調べたんだけどねキミ、ご両親が事故で亡くなってるよね?肉親が居ない子が怪奇に取り込まれると人だった頃の存在があやふやになるの」
それ以外にも感情が抑えられなくなったり言動や行動が幼くなったりすることもあるんだそうだ。
今の僕もそうなのかな?
「わかってくれたみたいね。それじゃあ、さっそく名前なんだけど…」
「えっと、その前に一つどうしても聞きたいことが…」
「ん?何かな」
最初に気がついた変化
そう、性別の変化だ。
確かに僕は男らしい格好からはほど遠いけど、確かに男だったはずなんだ。
狗神になった説明はされたけど女の子になった理由は聞いてない!
「あ〜…そうよね。話して無かったわよね…聞きたい?」
何度もうなずく。やっぱり心は男なのだ。可愛い格好とソレは別である。
「…どうしても?」
心なしかこよりさんの表情に影が出来た気がする。
聞いちゃいけないことなのかな?
「存在があやふやって言うのは話したわよね…その場合見つけた保護官が人型に定着させる為に御守りを使って性別を固定させるんだけど…」
?
「…キミがあんまり可愛いもんだから女の子だと思い込んじゃって…」
……。
「…女の子に固定してしまいました」
………。
「…胸は小さいより大きい方が良いかなっとちょちょっと細工したりして…」
…………。
「…固定しちゃったから戻せませんごめんなさい」
……………。
「あああ!泣かないで!ね!?わたしが悪かったから!出来る限りサポートはちゃんと…」
「…き…ん」
「え?」
「責任…取ってくれますよね?」
こよりさんは肩を落としながらコクりと頷いた。
人間じゃなくなったのには納得したけど女の子になるのはやっぱり納得出来ない僕だった。
会話文なのか説明文なのか…そしてまだ出ない主人公の名前!