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はじまり。
腹のそこまで響くような地鳴り
商店街の街路樹が振動でザワザワと揺れる。
電柱がバキバキにひしゃげ火花が散って
アスファルトには雲の巣状の罅が、
たった一瞬で築き上げられていく。
ソレは、悪夢のような光景で。
ソレは、紛れもない現実で。
ソレは、常識で図ることの出来ないモノ。
理不尽で、傲慢で、禍々しい。
目の前で起きていることに僕はただ混乱することしか出来なかった。
最初は地震か何かだと思った。
だから少ししたら収まると思って、ぼーっとしていて。
だけど揺れはどんどん大きくなって急に視界が暗くなった。
顔を上げてみるとソレが何なのかはっきりと見えた。――大きな犬。
大型犬とかそんなんじゃない。小学生の頃テレビでみた特撮番組に出てくる怪獣を連想させる大きさだ。
犬が一歩動くたびに周りのモノを壊し、吠えれば嵐のように木々が揺れる。
何が何だか分からなくて、逃げようとか怖いとか思う間も無く目の前にソレがきた途端。
ばくっ!
僕の意識はブラックアウトした。