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SPECIAL WORKER  作者: 雨月 藍
第一章・探し求めるその果てに
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第一話:依頼人



 「時々思うんですけど……何で社長は子どもの依頼と個人の依頼しか受けないんですか?」



 ソファーの上に雑に重ねてあるルービックキューブを取り、クルクルと回しながら遊んでいる夏樹が言った。

 『黒代屋』の社長である七夜は欠伸をしながら夏樹の方を見る。



 「それは夏樹ちゃんが知るには早すぎるよ」



 「そんなに深い理由があるとは思えないんですけど!?」



 「いやいや。理由があるからこそ決まり事もあるんだよ。だから十四歳の子が知るには早いよ」



 「私十五ですけど……。というか、社長と六つしか変わりませんし!」



 「……僕まだ十九なんだけど」



 「その歳でサバ読むのやめて下さい! みっともないですよ!」



 「鯖? 鯖は好きじゃないな」



 「そっちの鯖の話はしてませんよ!」



 「じゃあどのさばだい?」



 「うっ……えっと……」



 「出てこないだろ? 慣用句なんて言葉の綾で言ってる様なものだよ」



 「……なるほど。……って、慣用句って分かってるじゃないですかッ!」



 「……まあそれは置いといて」



 「置いとくな!」



 夏樹の突込みを無視して、七夜は机の引き出しを開けて何かを探り始めた。

 机の構造上故に夏樹の位置からは何をしているのかがまったく見えない。



 「社長、何してるんです?」



 「質問に答えようと思ったんだけどね。僕は記憶力が良くないからさ。

  多分日記かなんかに書いてあると思うから探してるんだけど……」



 紙を動かすような音がして何秒か経った頃、七夜が声を上げた。



 「あ、あった」



 七夜が持ち上げたのは一冊のノート。タイトルを書くようなでかいスペースに、『落書き日記~2■』と書かれている。

 ……2■?



 「社長、そのタイトルのところの数字何ですか?」



 「これかい? これは多分歳を書こうとして間違えたんだろうね。推測するに20だよ」



 ……つまり二十歳になっても0すら間違える人だったんだ。

 凄い……別の意味で凄い。



 「えっと……依頼範囲の事だっけ?」



 パラパラ~と七夜がノートを捲っていく。その速さ的にすぐ見つかる……というか、あんなの中身が見えるわけない!



 「お、ここだ」



 「嘘!?」



 素っ頓狂な声を上げる夏樹に訝しげな眼を七夜が向ける。



 「どうしたんだい?」



 「いえ……なんでもないです」



 「ならいいけど……。

  えっとね個人の依頼のみにしてあるのは企業に関することができないからだ」



 「企業?」



 企業は利益を第一とするものばかりで、多数の人間が働くからこそ成り立っている。

 そこへ関わってしまえば、売れる売れないにしても他の企業と差が出てしまう。

 依頼だからと言って経済に関わる事は良くない、という七夜の判断で個人の依頼に留められているわけだ。



 「……社長何気に考えてたんですね」



 「さらっと酷い事を言うね」



 「じゃあ子どもの方はなんでですか?」



 「…………」



 夏樹がそれを尋ねると七夜は黙ってしまった。



 そんな時と同時にタッタッタッとリズム感ある足音が響いてきた。そのすぐに扉が開けられる。



 「姉ちゃん! 頼んだやつ出来てる?」



 そう声を上げた少年を、



 「久しぶりっ、ケイタ君」



 満面の笑みで夏樹が迎える。



 「頼んでた依頼は? 出来たの?」



 ケイタに急かされ、夏樹はソファーの上においてあるそれを渡す。

 それ……は先ほどまで彼女が遊んでいた物でもある。



 「はい。でも何で皆ルービックキューブを完成させてって頼むのかしら?」



 「それは宿題なんだよ」



 「宿題?」



 「そう。担任の先生がパズル系が好きでさ、頭を良くするにはこれをやれってさ」



 ……変な人。

 学校の宿題でそんな物出すって……普通に考えられない。



 「あ、後の三つもちょうだい。皆に渡しとくからさ」



 「そう?じゃあよろしくね」



 後の三つを手渡すと、無邪気な笑顔を向けてケイタが去って行く。



 「子どもって良いですよね」



 嬉しそうにそう呟く夏樹の後ろで、



 「だから依頼の対象にしてあるんだけどね」



 彼女に聞こえない声で七夜が呟いた。











 「最近、夏樹ちゃんの料理が手抜きな気がするんだけど……気のせいかな?」



 「気のせいですよ」



 「う~ん……カレールーが溶けきってなかった気がする」



 「気、気のせいでは?」



 「焼き魚の中身に豆腐が入っていたり」



 「そ、それも気のせいです」



 「ピザにチョコがのっていたり」



 「…………」



 「バニラのアイスがいつのまにかコーラのシャーベットに変わってたりね」



 「……ひ、ひどいことをする人も、いるものですね」



 「そうだねぇ。しかもその子が寝言で……」



 「な、何か言ってたんですか?」



 「いや、面白すぎて言えない」



 「ちょっと!?何言ってたんですか、私!」



 そこでニヤリと七夜が笑った。

 ……しまった。



 「はい自供しましたと。罰として一週間料理当番ね」



 「えーそれはなしですよー」



 「まあ頑張って。それに……」



 七夜はスタスタと歩き扉を開けた。驚きなのはそこに人が立っていたことだ。

 見かけ三十前後の男性が、おろおろとした様子で七夜を見ている。



 「長い夜が始まりそうだしね」



 「……って事は」



 「そう。お掛け下さい、依頼人様」



 そう言って、『黒代屋』の社長は普段見せているものとは違う笑みを浮かべた。



 

なんか書くの久々……。

次からは第一章です。

もうちょっと上手く書きたい……。

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