第五章:拳と剣の共闘
日が昇りきる前、二人は砂丘の尾根に立っていた。
「なぁ玄耀、地鳴り、聞こえねぇか?」
「……ああ。来るな」
大地から突き上がる不快な波動に、瞬く間に現れたのは《砂喰い蟲》。
全長十数メートル、硬質の殻と巨大な顎を持つ砂漠の捕食者だ。
「ちっ、厄介だな」
玄耀が剣を抜こうとするが、その前に樹雷が駆け出す。
「よっしゃあ、行くぞオオオッ!!」
樹雷の拳が地面を揺らし、魔獣の進行を止める。
「岩拳“崩山”ッ!!」
巨大な拳が魔獣をひび割れさせるが、砂喰い蟲はしなやかに反撃し、樹雷を吹き飛ばす。
「無茶するな。でかいだけじゃない、こいつは狡猾だ」
玄耀が素早く斬撃を飛ばし、魔獣の軌道を逸らせる。
「了解、相棒!連携だぜ!」
再び魔獣が突進。
玄耀が構えたその瞬間、樹雷が叫ぶ。
「背中は任せろ!」
玄耀は一瞬立ち止まる。
(……また、誰かを失ったらどうする?)
だが、彼は静かに息を吸い、心を決める。
「……頼む」
その言葉を発した自分に驚きながらも、二人は同時に動き出す。
樹雷の拳が大地を揺らし、魔獣の足場を崩すその隙に、玄耀は剣を振り下ろす。
「《青龍閃》!」
青き剣気が魔獣を切り裂き、魔獣は暴れまわるが、二人の連携により次第に追い詰められる。
「もう一発決めちまおうぜ!」
「行くぞ──《双撃》!」
拳と剣が交差し、魔獣は砂煙と共に崩れ落ちる。
静寂が戻る。
「……やるな、玄耀」
「お前もな」
樹雷は笑いながら言う。
「どうだ? “誰かと一緒に戦うのも悪くない”って思えたか?」
玄耀は微かに口角を上げる。
「……少しな」
戦いが終わり、ふたりは肩を並べて静かな砂漠を見下ろしていた。
樹雷はぽつりと尋ねる。
「お前は、何も怖くないのか?」
玄耀は目を伏せる。
「……怖いさ。でも、失ったものを受け入れた者だけが持つ、強さと優しさを持ち続けたい」
やがて、樹雷は立ち上がる。
「ここから先は行けねぇ。別件で寄るとこがある」
「……ああ。助かった」
「また会うだろ、どっかで」
樹雷の背が遠くなり、玄耀はその背中を見送りながら、再び歩き出した。
そして、次の瞬間。
空気が変わり、地が静まり、風が凪ぐ。
(……この気配──)
玄耀の足が止まる。
空を見上げると、そこには黒い影が静かに羽ばたいていた。




