第十章:黎明の刃
《黎明の刃》──
黒き剣から放たれる斬撃は、まさに世界そのものを断ち割る力を秘めていた。
玄耀は、寸前でそれを受け止めた。
だが、重い。
腕がしびれ、全身に亀裂が走るような激痛が走った。
(これが……王の力……!)
真の王は、圧倒的だった。
一振り、一歩、一言。
すべてに絶対的な力が宿っている。
玄耀は、必死に食らいついた。
剣を交えるたびに、星々が砕け、空間が歪み、風さえもその力に引き裂かれるようだった。
だが、王の瞳は、どこまでも静かだった。
まるで、全てを見透かしているかのように。
「力ではない。心だ」
剣を振るいながら、王は言った。
「真に世界を護る者は──心を折らぬ者」
玄耀は奥歯を噛み締める。
「だったら、俺は……!」
何度倒されても、何度傷ついても、立ち上がった。
その度に身体が崩れ、腕が引き裂かれ、目の前が歪むように見えるが、意志だけは折れなかった。
だが──その時、一瞬の隙間が生まれた。
その瞬間、玄耀の意識が集中し、体が反応する。
王の攻撃がほんの一瞬、間を取った──
そのわずかな「間」に、玄耀は呼応し、心と体が一体となる感覚を覚えた。
そして──
玄耀の中に、何かが目覚めた。
それは、かつて龍脈に繋がれた《源》の力。
彼の中に眠っていた、世界と同調する魂の記憶。
彼自身が──この世界の一部だったことを、ようやく思い出す。
(俺は……ただ生きてきたんじゃない。すべては、この瞬間のためだった──)
その瞬間、龍脈剣が輝きを増した。
青い光が、白き炎となり、闇を切り裂く。
「行くぞ──!」
吠えるように叫び、玄耀は全身で突っ込んだ。
黒き剣と、白き剣がぶつかり合う。
最初の接触の瞬間、音すらも消えたように感じた。
二つの力は、拮抗したまま、互いに引き寄せられるようにすら見えた。
だが、次の瞬間──閃光が弾け、爆発が荒野を駆け抜ける。
──しばらくして。
玄耀は、立っていた。
手には、折れた剣。
だが、その瞳は、どこまでも澄んでいた。
目の前で、王が膝をついていた。
その姿は、かつて見た威厳のあるものではなく、疲れた英雄そのものだった。
「……見事だ」
王は、かすかに笑った。
「お前こそ、真の継承者」
その瞬間、光が王の身体を包み、彼の姿は次第に消えていく。
その姿は、塵となり、玄耀の中へと溶け込んでいった。
(これが、継承──)
その感覚は、身体ではなく、魂の奥底で感じるものだった。
だが、最後に王は告げた。
「忘れるな──王とは、始まりにして、終わりだ」
王が消えた後、玄耀の前に、ひとつの扉が現れた。
それは、《原初の門》──この世界の創世に繋がる、最も深遠なる場所。
玄耀は、その扉を見つめた。
迷うことなく、一歩踏み出す。
これから向かう先は、単なる戦いではない。
世界の秘密、そして、己自身の本当の意味を知るための道。




