第六話 私、最初の攻略相手を攻略した!
「『好きです、付き合ってください。』ってことは…ラブレターだね…」
「そっそういう事になるのかな…?」
「よかったじゃん!」
「えっ!あっうん…」
(どうしてラブレターが!確かに雛は美人だし貰う可能性は大いにあるだろうけど!でも漫画ではそんなシーンは一切なかったよ!?)
「それで手紙にほかに何も書いてないのか!書いた奴の名前とかさ!」
「続きはあるよ…?」
「読んで、読んで!」
「わっわかったよ…?『今日の放課後の校舎裏で待っているので返事をください、緑川陽子。』」
「おいおい、緑川陽子って隣のクラスの背の小さい子供っぽい奴じゃん、まぁ、同じくらいガキっぽいうちが言えないけどな、だっははは。」
「まさか緑川さんだったなんて…?」
「ひよっち本人は惚れられる覚えもないって感じだな?」
「当たり前だよ!話したことだって一度ぐらいしかないから!」
「一度はあるんだね…?」
「あっうん…?先週、学校に登校する途中に緑川さんが転んじゃって膝を擦りむいた所にたまたま出くわしてね、それで持ってた絆創膏を張ってあげたことがあったんだ…」
「そんなことがあったんだね…」
「なるほど、きっとその時に優しくされて惚れちまったんだな。」
「なっ…」
「んで放課後、校舎裏に行くのか?」
「そっそうだね、返事しなくちゃならないだろうから…」
「それがいいな、じゃないといつまでも待ち続けるだろうから。」
「返事を返すつもりなんだ…?」
「あっいや!返事って言ってもだよ!」
「雛ちゃん…ぐっ。」
「まっ待って!」
鶴子は今にも泣きそうな潤んだ瞳を見せて、廊下を走って行ってしまった。
「つるっちってもしかして、ひよっちのことを…?」
「私の馬鹿、馬鹿!!」
雛(晴南)は自分の頭を叩いた。
「落ち着けよ、ひよっち!」
「はっ!ごっごめん、取り乱しちゃった…」
「いや、うちも悪い、つるっちの気持ちも考えずにひよっちを冷やかしちゃったし、ごめんな…?」
「謝らないで、悪いのは私だよ…告白は断るつもりだってハッキリ言えばよかった…」
「んじゃ、もしかしてひよっちもつるっちのことを…?」
「うん…」
「あちゃー、だったらうちはさらにやっちまってるじゃんか…」
教室に入ると隣の席に鶴子ちゃんは座っていた、でも暗い表情で目も合わせてくれなくて会話もあまりしてくれなかった、そして4時間目の授業まで終わりお昼休みになったが、鶴子ちゃんは弁当箱を持って教室を出てしまった…
「鶴子ちゃん…」
「うちに任せてくれ。」
「豆っち…?」
豆っちも弁当箱を持って教室を出た。
「グスンッ、グスンッ…」
「あっ見つけた!」
「えっ…?兎姫ちゃん…?」
鶴子は校庭の隅に置いてある木製のベンチに座り、泣きながら弁当を食べていた。
「探したんだぞ。」
「なっ何か用…?」
「おいおい、そりゃないだろ?普段は三人でお昼食べてるんだから。」
「ごめんね、今日は一人で食べたかったの…」
「というよりひよっちと食べるのが気まずかったからだろう?」
「・・・・・そうだよ…」
「だったらうちは一緒に食べても平気だな。」
「うっうん…」
兎姫は隣に座り、自分のお弁当を食べ始めた。
「げげっ、お母ちゃん、またうちの嫌いなピーマンの野菜炒め入れてやがる…」
「ふっふ、兎姫ちゃんは相変わらずピーマン苦手なんだね。」
「やっといつもみたいに笑ったな。」
「えっ?」
「なぁ、つるっちはひよっちに恋してるんだよな?違うか?」
「・・・・・うん…」
「いつからだ?」
「小学生の頃から…」
「そんな前からだったのか。」
「うん…」
「何で告白しなかったんだ?」
「幼馴染の友達で誰よりも長く一緒に居たから…言い出し難くて…」
「そんなもんかな?」
「そうなの、兎姫ちゃんは誰かに恋したことなさそうだからわからないかもしれないけど…?」
「むぅ、失礼な!これでも過去に恋したことぐらいあるぞ!」
「あっあるの?初めて知った…」
「言わなかっただけだ。」
「ちなみに誰なの…?」
「秘密だ。」
「ずっずるいよ、私の好きな人は教えたのに…?」
「まぁいいじゃんか、うちのことはさ。」
「何それ…?」
「それよりひよっちとはずっとこのぎこちない関係でいるつもりか?」
「そっそれは…」
「なぁ、それなら放課後に…」
「えっ…?」
そして学校が終わり放課後になった。
「私、先に帰るね…」
「鶴子ちゃん!」
「今日は部活ないし、うちも一緒に帰るぞ。」
「ちょっと豆っちさん!」
「何だ?」
「全然、鶴子ちゃんの機嫌が直ってなかったじゃん?お昼休みに追いかけた意味は…?」
「大丈夫だ、ひよっちはちゃんと校舎裏に行って、ラブレターの返事をするんだ、いいな?」
「あっはい…?」
「んじゃ。」
二人が教室を出た後、戸惑いを抱きつつも雛(晴南)は校舎裏向かうと…本当にラブレターをくれた少女が待っていた。
「来てくれたんですね。」
「はっはい…」
そしてその様子をコッソリと隠れながら兎姫と鶴子が覗いていた。
「いいのかな、こんな事して…」
「何を今さら、お昼休みに言ったろ?不安なら放課後にひよっちがどう返事するか見ればいいって。」
「言ってたけど…」
「しっ!始まるみたいだぞ?」
離れた二人が固唾を呑んで見守る中、少女が雛(晴南)に尋ねた。
「手紙の返事を聞かせてくれますか…?」
「私を好きだと言ってくれたこと凄く嬉しかったです。」
「じゃあ、付き合ってくれるってことですか!」
「でも付き合う事は出来ません、ごめんなさい。」
断った姿を見ていた鶴子と兎姫は…
「断った…」
「なっ、だから心配いらないって言ったろ。」
ラブレターをくれた少女は振られることも覚悟していたのか、吹っ切れたように質問した。
「もしかしてすでに好きな人でも居ましたか?」
「はい、居ます。」
「そうでしたか、その方が羨ましいですね。」
「でもその子を今日、泣かせてしまいました…」
「まさか、私が手紙を送ったせいで…?」
「いえ、違います、自分がハッキリしなかったからです…」
それに鶴子がすぐに反応した。
「まさかそれって…」
「ああ、つるっちのことだよ。」
「なっ…」
ラブレターをくれた少女は雛(晴南)の手を握った。
「雛さんの想い、その子に届くといいですね。」
「緑川さん。」
「頑張ってください。」
「ありがとうございます。」
手を振るとその場を去って行った。
「良い子でよかった。」
それを見計らって兎姫が鶴子に雛(晴南)のもとに行くように促した。
「両想いだってわかったろ、告白して来いよ!」
「でっでも…?」
「いいから!」
「わっ!」
強く背中を押して歩かせた。
「鶴子ちゃん!」
「付き合うの断ったんだね…」
「見てたんだ…?」
「ごっごめんなさい!」
「いいんだよ!」
「ねっねぇ、雛ちゃん、聞いてほしい事があるの…聞いてくれる…?」
「もっもちろん!」
(この感じまさか!漫画で見た!)
「雛ちゃんはいつも私に寄り添ってくれる…
嬉しい時や楽しい時、悲しい時も辛い時も…
誰よりも温かく…まるで陽射しみたいに…」
「はわわわわわぁぁぁ…」
(そっそっそのセリフって!やっぱり告白シーンの!)
「私、そんなあなたが大好きです…
愛田雛さん、私をあなたの彼女にしてくれませんか…?」
「うぐっ、うぐっ、やっぱりかぁぁ…」
「なっなっ泣いてる…?」
そりゃ泣きますよ!漫画の展開より2週間も早く告白されたし!それにファンとしてあの尊いセリフを現実で聞けるとか、感動で涙が出るに決まってるじゃないですかぁぁぁ…
「その反応、いやだってことかな…?」
「違うよ!嬉しすぎて泣いてるんだよ!」
「嬉しくて泣いた…?」
「うっうん!」
「じゃあ、私を彼女にしてくれるの…?」
「当たり前だよ、私も鶴子ちゃん大好きだから。」
「雛ちゃんー!」
鶴子は泣きながら抱きついた!
「鶴子ちゃんまで泣いてるね。」
「だって嬉しいんだもん…」
「可愛い。」
雛(晴南)は攻略相手一人目の鏡原鶴子を攻略した。
「これからよろしくね、雛ちゃん。」
「私こそだよ。」
そしてそれを隠れて見守っていた兎姫は空気を読んで笑みを浮かべて静かにその場を去った、少し意味深な一言を呟いて。
「良い百合を見せてもらったよ、次が楽しみだ。」
さらにその状況を天界の女神がしっかり水晶で見ていた。
《いいわ、いいわ!雛、やるじゃない!攻略一人目にして期待以上の百合を見せてくれたわ♡》
「よかったですね、お姉様。」
《さて最初だから優しくしたけど、次からは攻略の難易度をあげるわよ〜。どんな百合を見せてくれるか、楽しみだわ〜。ウフフ。》
女神はニヤニヤしながらある少女の写真を見ていた。




