第五話 私も恋愛経験がなかったの忘れてた。
私、百合作品が好きな女子高生、青依晴南、15歳が百合漫画の主人公の愛田雛に転生して気がつけば一週間が過ぎていました。
雛の体にもすっかり慣れて、今では自分だと違和感がありません。
それはよかったのですが、一つ問題が…
「一週間過ぎたけど、鶴子さんを全然攻略出来てないみたいだね?」
「ギグッ、はっはい…」
そう、この一週間、最初の攻略相手の鶴子ちゃんとの進展はこれといってあまりない、告白してくる様子もありません…
理由はわかっていて明らかなアピール不足、よく考えたら私も前世で恋愛経験がなかったのをすっかり忘れていて、どうしたらいいかわからずといった所なのです…
「まぁでも、最初から期待してなかったよ。」
「コケッ!そんな身も蓋もない事を…?」
「ふっふ、焦らずに告白されるのを待てばいいじゃない?」
「いいの…?その分、元の世界に帰るのが遅れるよ…?」
「待ってるよ。」
「そっそう…?ありがとう…?」
しっかりして!とか怒られるかなと思ったんだけど、どちらかというと機嫌がいいように見えたような…?
とっとにかく琴梨ちゃんから焦らなくていいって言ってもらえたからには漫画で出てきた攻略に近づく重要なイベント達を順々にクリアしていくしかありません!私、頑張ります!
−漫画で知ってる鶴子ちゃん攻略への重要なイベント①、二日後の学校の放課後の図書室にて!−
「きゃっ!」
「危ない!」
返却された本を元の場所に戻していた鶴子ちゃんが体制を崩して椅子から落ちそうになった時にタイミングよく受け止めた。
「雛ちゃん…?」
「危なかったね。」
「あっありがとう…でも兎姫ちゃんと一緒に帰ったんじゃ…?」
「豆っちは部活の助っ人に行っちゃってさ。」
「そっか…」
「一人で帰るのも寂しいから鶴子ちゃんが図書委員の仕事が終って、一緒に帰れるまで待っててもいいかな…?」
「遅くなるよ、いいの…?」
「うん、待ってる。」
「わかった…」
「本が散らばっちゃったね、片付けるの手伝うよ。」
「ありがとう…」
«あっ。»
よし!漫画でもあった同じ本を取ろうとして、手と手が触れ合い、お互い顔を赤らめる成功です!
−そして次に漫画で知ってる鶴子ちゃん攻略への重要なイベント②、5日後の放課後の帰り−
「最近、よく図書室で待っててくれるよね…」
「そうだね。」
「ねぇ、雛ちゃん、聞いてもいい…?」
「何?」
「そんなに私と帰りたかった…?」
「うっうん…」
「そっか、嬉しいな…」
くぅぅ!漫画で見ているとはいえ可愛いすぎる!反則です!はっ!じゃなくてこの後に!
「鶴子ちゃん、こっち!」
「えっ!」
後ろから自転車が来るから守るように自分の方に引き寄せる、成功です!
「後ろから自転車来てたんだ…?ありがとう…」
「お礼なんていいよ、鶴子ちゃんが怪我しなくてよかった。」
「雛ちゃん…」
現時点で漫画での重要なイベントを二つ達成する事が出来ました!少し主人公として自信がついてきたかも!
「晴南さん、鶴子さんの攻略はどう?」
「漫画に出てくる重要なイベントは着実に消化してるよ。」
「ふーん、順調なんだ…?」
「まだまだあるけどね。でも漫画通りになるなら、今から二週間後に鶴子ちゃんから告白されるよ。」
「へっへえ…?二週間後に何があるの…?」
「ぐふふ、聞きたい?」
「なんか反応、キモ…でもいちよう聞く…」
「漫画だとね、その日、いつものように鶴子ちゃんの図書委員の仕事が終わるまで待っていて、二人で帰ってる最中に雨が降るの、その時、雛は傘を持ってくるのを忘れてて、鶴子ちゃんの傘に入れてもらって相合傘をするんだ。」
「相合傘を…?」
「すると何気なく雛がこう言っちゃうんだよ。『相合傘してるし、私達、他人から見たら恋人同士に見えてたりするのかな…?』って。」
「お姉ちゃんがそんな恥ずいことを…?」
「それに鶴子ちゃんは顔を赤らめながら『だったら嬉しいな…』って答えてね、雛は『えっ…?それって…?』と思わず尋ねるんだよ、そしたら鶴子ちゃんが抱きついてきて傘が地面に落ちるわけ!そして雨に濡れながら顔を見つめて鶴子ちゃんが『雛ちゃん、あなたの事がずっと好きでした、私と本当に付き合ってくれませんか…?』って告白するの!それを雛が『はい。』って答えて強く抱き返すんだよ!」
「そう…それで最初の攻略相手を攻略したことになるわけか…」
「胸がキュンキュンしちゃうよね!あのシーンを自分が味わえるんだって思うと嬉しすぎるなぁ。」
「よかったじゃん、ご馳走様…」
「あれ?今日はご飯、おかわりしないの?」
「いい、あまりお腹減ってないから…」
琴梨は部屋に戻った。
「珍しい、普段はおかわりするのに…?」
部屋に戻った琴梨はベッドにダイブして枕を抱きしめた。
「変な気持ち…なぜか話を聞いてイライラしてる…どうしちゃったの、私…」
−次の日の朝−
「えっ?今日は一緒に行かないの?」
「先に学校、行くから。」
「わっわかった…?」
琴梨はいつもより早く家を出た。
「私、嫌われるような事でもしちゃったのかな…?」
琴梨本人も自分の行動に疑問を感じていた。
「ハァ、何やってるんだろう…」
「琴・梨。」
「ひゃ!?」
後ろから近づいて誰かが耳元で囁いた。
「おはよう。」
「なっなんだ、岬ちゃんか。」
「驚かせてごめん。」
「うっうん、いいよ。でも珍しいね、ここで会うなんて?」
「ちょっと近くに用があったんだ。」
「そうなんだね…」
「元気ないように見えるけど、何かあった?」
「えっ!そんなことないよ、元気だから、元気…」
「うそだ、声に覇気がないぞ?」
「バレバレか…」
「友達の私にも話せないこと…?」
「・・・・・うちのお姉ちゃんにね、恋人が出来そうなんだ…」
「へぇ、雛さんに?あの人、スタイルよくて美人だもんね。でもそれが琴梨の元気がないのとどんな関係があるの?」
「そっそれは、私にもよくわからない…けど"今のお姉ちゃん"に恋人が出来ると思うと、なぜか胸の奥がザワついて、無性に腹が立つというか切ない気持ちになるんだ…」
「えっ…それって…?」
「あっいや!私、疲れてるだけかも!今日、テストでしょう?予習頑張り過ぎたせいかな。」
「そっそう…?無理はしない方がいいよ?」
「うん…」
琴梨はそれ以上、その話をしなかった。そしてそれを聞いた琴梨に重い片想いをしている岬は心の中で嫉妬の炎をドロドロと煮えたぎらせていた。
【まさか琴梨があのおとぼけた姉にそんな感情を抱いていたなんて、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない!!
実の姉で琴梨と一緒に暮らしてるだけでも羨ましくて、何度、ぶち◯してやろうと思ったかわからないのに、コンチクショウ、愛田雛…家に帰ったら、また藁人形作らなきゃ…】
そのせいか、ちょうどよく家を出た雛(晴南)が何度もクシャミをした。
「クシュンッ、鼻風邪でも引いたかな…?」
そして学校に着き、玄関で鶴子と兎姫とバッタリ会った。
「おはよう、二人とも。」
「おはよう、今日も遅刻せずに来たね…」
「本当な、今月パーフェクトだぞ、まるで人が変わったみたいだ。」
「ギグッ、頑張って起きてるからね。」
(時々、鋭い指摘するだよね、豆っちって…)
「偉いね…雛ちゃん…」
「だな、偉い、偉い。」
「子供じゃないってば、あれっ?靴箱開けたら、上履きの上に何か置いてある、手紙…?」
「手紙…?」
「もしかして果たし状か!」
「わっわからないよ…?」
「見てみればわかることじゃん、見てみなよ!」
「うっうん…?」
雛(晴南)は手紙を開いた、すると…
「こっこれって…?」
「その驚き方、果たし状だったのか?」
「雛ちゃん…?」
「『愛田雛さん、あなたのことが好きです、付き合ってください。』って…』
「なっなっなぬーー!?」
「やっぱり…」
そして手紙を貰った張本人の雛(晴南)も心の中で叫んでいた。
(私、こんな展開知らないー!?)




