第二十七話 私、四人目の攻略相手に会った。
女神様から四人目の攻略相手の発表があった次の日、それは二学期最初の登校日でもある。
「四人目の攻略相手って教師なんだっけ、教師と生徒の恋愛って映画や漫画でよく描かれてるけど、実際だと難しくない?」
「漫画通りに展開が進めば大丈夫だよ。」
「晴南さんが余計な行動してここまで漫画通りにいってないことばっかのくせに?」
「グフッ!相変わらず鋭いツッコミ!」
「まぁ、難しい相手なら焦らずに時間をかけて攻略すればいいじゃん、その方が私も…」
「琴梨ちゃん?」
「あっいや、何でもない。」
すると玄関のチャイムが鳴った。
「誰だろう?」
「岬ちゃんが来たんだ。」
「迎えに来たってこと?」
「そう、約束してたの。」
琴梨がインターホンから返事をすると、本当に岬だった。
「今日からは岬ちゃんと一緒に学校に行くから。」
「そっか、気をつけてね。」
「晴南さんはまだ出掛けないの?」
「少し遅れて行くよ。」
「鶴子さんと公園で待ち合わせしてるんじゃ?」
「遅れて行くから先に行って欲しいって前もって連絡してあるから。」
「そうなんだ…?まぁいいや、じゃあ、私も先に行くね?」
「行ってらっしゃい。」
琴梨は家を出た。
「もう二人で登校することもないか、少し寂しいけど、嬉しいことでもある、琴梨ちゃんと岬ちゃんのカップルにはシアワセになってもらいたい、百合好きとして応援しよう。」
雛(晴南)は心からそう思った。
「今日から二学期だね。」
「ねっ?また家と学校の往復の毎日とか憂鬱すぎるよ…あー、勉強したくない。」
「私は学校が早く始まって欲しかったな。」
「そんな発言が出来るなんて岬ちゃんはやっぱり優等生だね、私にはとても。」
「そうじゃなくてね…」
「んっ?」
「学校が始まって欲しかったのはこうして琴梨と一緒に居られる時間が増えるから。」
「岬ちゃん…」
「手繋いでもいい…?」
「うん…」
それから数分遅れて、雛(晴南)が家を出た。
「漫画の時より5分くらい早いけど、心の準備する時間も必要だもんね。だってこれから起こる展開は、ゴクッ。これまで以上に刺激が強いもん。」
そして近くの曲がり角で止まり、深呼吸をして展開が起こるのをじっと待った、すると女の人の声が近づいてきた。
「いやぁ〜ん!初日なのに寝坊しちゃった〜!このままじゃ遅刻しちゃう〜!」
「来た、今だ!」
«きゃっ!»
雛(晴南)は曲がり角から現れた女の人とぶつかった。
「痛たた、はっ!大丈夫、君!」
「もふふふ。」
雛(晴南)は返事をしたいが押し倒されて彼女の大きな胸に顔を挟まれていたので喋れなかった。
「わっ!ごめんなさい!」
「ふぅ、大丈夫です…」
漫画で知っていたとはいえ自分自身が体験するとこれほど凄かったとは…流石、漫画に登場するキャラで一番胸が大きいキャラです…色んな意味で鼻血が出るかと思いましたぁ…
「私、今日、初出勤になる学校に遅刻しそうになっちゃって慌てちゃってたの…怪我はない…?」
「はい!ありません!」
「よかった、あれ?よく見たらその制服ってあなたってもしかして〇〇高校の生徒さん?」
「はい!」
「まぁぁ!偶然ね!私が臨時で赴任する学校も〇〇高校なの!よろしくね!」
「よろしくお願いします!」
やったぁぁ!これで漫画の重要なシーンを達成出来た!
あっ!皆さん、何の話かわかりませんよね?
説明がまだでしたが、このスーツ姿の茶色セミロング天然系美人さんこそ、四人目の攻略相手、町鳩子さんこと、ハトちゃん先生、その人なのですーー!
「はっ!こうしてる場合じゃない!学校に行かなくちゃ!あなたも遅刻しないようにね!」
「そっちは学校じゃないですよ!」
「えっ!あっ本当だ!あはは、慌てて違う所歩いてたみたい…中々、学校に着けないと思ったらそのせいかぁ…」
「私が案内しましょうか?」
「お願いしようかな…?私、ここに引っ越してきたばかりでまだ道を覚えてないから…?ご迷惑かけてごめんなさいね…?」
「いいんですよ、困ってる人はほっとけませんから。」
「なんていい子なの!あなた名前は?」
「愛田雛です。」
「愛田さんね、私は町鳩子っていうのよ、よろしくね。」
「こちらこそです。」
私は彼女を連れて校舎まで行き職員玄関まで案内した。
「助かったわ!ありがとう!」
「いえいえ。」
「不思議、あなたとはまたすぐに会う気がするの。」
「私もです。」
「はっ!落ち着いてる場合じゃない!また会えたら声をかけてね!」
「はーい!」
(まぁ、教室で再会するんだけどね。)
雛(晴南)は校舎に入った、すると腕を組んで怒り顔の多歌宮と泣く寸前の鶴子が待っていた。
「鶴子ちゃん、多歌宮さん…?」
「遅刻しそうだからって心配して待ってれば?」
「見知らぬ女の人と一緒に学校に来たりして…?」
「えっ!えっ!」
(漫画ではこんな展開なかったよ!?)
「どういうことか説明してもらうわよ!」
「どういうことか説明してもらいますからね!」
「ひぃ!そのですね!」
壁際まで二人に追い込まれた雛(晴南)はちゃんと説明して、なんとか納得してもらえて教室に行った。
「ひよっち、おはよう、今日は遅かったな。」
「あっうん、色々あってね…」
「ごめんね、誤解しちゃって…?」
「いいよ、気にしてないから。」
すると教室の同級生がまめっちに話しかけた。
「兎姫さん、日焼けしたね。」
「本当真っ黒じゃん、海外でも行ってきたの?」
「アハハッ、海外というか、ひよっちの親戚がやってる海の家の手伝いに行ってな、海で遊んだりしたんだよ、なっ、ひよっち。」
「あっうん…?」
「そうなんだ。」
「だからそんなに日焼けしてるんだ。」
「まめっちか…」
「兎姫ちゃんがどうかしたの?」
「あっいや、何でもないよ。」
雛(晴南)が兎姫が気になっていたのは海の家の手伝いの最中、漫画の兎姫なら言うはずのない一言がまだ引っかかっていたからである…そして席に着くと、ちょうどよくチャイムが鳴った。
「はーい、皆さん、席に着いて、こちらを注目してください。」
教室に教頭先生と緊張した様子の町鳩子が入ってきた。
«ガヤガヤ…»
「あの人、誰だろう?」
「わからないけど、超美人だね。」
「雛ちゃん、あの人って?」
「うん、私がさっき学校まで案内してあげた人。」
「えー、皆さんも御存知だとは思いますが、担任の吉田先生は奥様がお子さんを出産なられたということで、しばらく育休をお取りになられます。そこで臨時の先生をお願いしました、町さん、自己紹介どうぞ。」
「ひゃひゃい!一年A組の生徒の皆しゃん、初めましひてぇ!あっ…」
«あはは!»
「噛んじゃって可愛い〜。」
「緊張しなくて大丈夫だよ〜。」
「リラックスして〜。」
「あっありがとうございます、ふぅ、わたくし、臨時ではありますがこのクラスの担任を務めることになりました、町鳩子と申します。大学を卒業して初めて頂けた教員としての仕事が担任なのでとても緊張しています。至らない点も多いと思いますが、皆さんよろしくお願いします。」
«ワァァ。»
生徒達は拍手をして歓迎した。
「よろしくね、はとちゃん先生!」
「はっはとちゃん先生ですか?」
「いいじゃん、その呼び名、私もそう呼ぼう!はとちゃん先生!」
「はとちゃん先生!」
「はとちゃん先生、親しみやすい感じでいいですね、気に入りました。皆さん遠慮なく呼んでください。」
「すぐに生徒達とも馴染めそうですね。」
「はい、教頭先生。」
はとちゃん先生は一安心した顔をした。
「まさか私達の担任の先生になるなんてね…?」
「あはは、本当にね。」
(漫画で知ってるから私は驚かないけど、実際だったら凄い偶然だもんね…?)
「あっあれ!あなたは今朝の!確か愛田さん!」
«えっ?»
はとちゃん先生が雛(晴南)の名を呼んだことで一斉に雛(晴南)の方を向いた。
「町さん、愛田さんとはお知り合いだったんですか?」
「はい!今朝に私が道に迷っている所を助けてくれて学校まで案内してくれたんです!」
「そうだったんですか、愛田さんが。」
「また会えるなんて嬉しいわ、愛田さん。」
「てへへ、こちらこそです。」
「むぅぅ…」
照れる雛(晴南)を見て、隣の席の鶴子が嫉妬の目をしていた。
「さて四人目の攻略もどう楽しませてくれるかな。」
兎姫が小さく呟いた。




