特別編 多歌宮に恋して諦めた少女…
私、月坂花、15歳、あまり目立たない暗い子、居ても居なくてもどうでもいい子、そんな私はいつも一人、誰も私が見えていないんだ、空気のように透明な存在、私は果たして生きているんだろうか、そんな風に15年間を生きてきた、彼女に出会う前では…
「落とし物したわよ。」
その子の名前は多歌宮葉月、同じクラスの離れた席の子で厳しい風紀委員で有名な子、最初はそんな印象だった、そんな彼女が私の落とし物を拾ってくれたのだ。
「あっありがとうございます…」
「気にしないで、月坂さん。」
「えっ…?私のこと知って…?」
「当たり前じゃない、同じクラスメートだもの。」
「あっ…」
とても嬉しかった、クラスで私の名前を覚えててくれてる人が居るなんて思わなかったから。
「それじゃあ、私は風紀委員の仕事があるから。」
「あっあの、頑張ってください…」
「ありがとう。」
彼女は笑顔で軽く手を振るとその場を去って行った、私にはそれが女神の微笑みのように見えた。
「多歌宮さん…」
彼女とまた話したい、私はそんな一心から早起きして学校へ行くようになった、彼女が風紀委員の仕事のために毎朝、誰よりも早く教室に来ているのを知っていたからだ。
「おはよう…多歌宮さん…」
「あら、月坂さん、今日も早いのね、感心だわ。」
「そんな…」
「このクラスの遅刻してばかりの子達に月坂さんの爪でも煎じて飲ませてあげたいぐらいよ。」
「ふふっ、何ですか、それ…」
「笑った顔、素敵じゃない。」
「えっ…?」
「私以外の子にも見せたらいいと思うわ。」
「多歌宮さん…」
「じゃあ、風紀委員の仕事があるから。」
「頑張ってください!」
「ええ、ありがとう。」
多歌宮さん以外の子の前で笑顔になんてなったりしない、私の笑顔は多歌宮さんにだけ見えてもらいたいのだ、好きな多歌宮さんにだけ…なのにクラスで噂を聞いた…
「ねぇねぇ知ってる!多歌宮さん、隣のクラスの愛田さんと付き合ってるんじゃないかって噂!」
「知ってる、知ってる!私、腕を組んで帰ってる所を見たって友達から聞いたもん!」
「うっそ、マジで!」
「多歌宮さんが付き合ってる…?」
私は信じられなかった、というより信じたくなかった、多歌宮さんが付き合ってるだなんて…でもそれを自分で目の当たりすることになる、一学期の終わり、放課後の教室の中で多歌宮さんがその付き合っているとされる愛田さんとキスをしている所を…
「あの噂は本当だったんだ…」
あの時、はっきりとわかった、私の初恋が叶わなくなったことを…私は多歌宮さん達が居なくなった後に教室に入り、窓から帰る後ろ姿を見た…
「多歌宮さん…多歌宮、葉月さん…」
気がつけば涙を溢れさせながら私は何度も呟いた、好きだった少女の名前を…




