第二十四話 私、三人目の攻略相手を攻略した!
次の日の朝、海の家の開店準備をしているとまだ開店していないのに店の扉をノックして来客が来た、
その来客は麦わら帽子をかぶった黒髪美人で水琴は最初驚きつつも、店の中に入れてカウンター席に座らせた。そしてその様子を慌てて厨房に隠れたみんながこっそり覗いていた。
「あの女の人、水琴さんの知り合いみたいだけど誰なのかな?」
「私にもわからない?」
「どっどっどうしてあの人が…?」
「晴、おねえちゃん知ってるの…?」
「あいつ、帰ってきてたんか…」
「鴎さんまで…?」
「面白い展開だ。」
水琴は来客にお茶を出した。
「いつ帰って来たんや…?」
「昨日の夜よ。」
「自前に連絡ぐらいせえよ…?」
「サプライズよ、サプライズ。」
「ハァ、何がサプライズやねん…?大学はどうしたんや…?」
「大学にだって夏休みぐらいあるわよ。」
「というかよくうちがここにいるってわかったな…?」
「後輩の子に聞いたもん。」
「陽子のやつか、お喋りやな…」
その会話に岬がひらめいた。
「もしかしてあの人、水琴さんの彼女さんじゃ?」
「えっ!そうなの?」
「せや…あの女の人は姉貴の彼女、牧原南さんや…」
「やっぱりですか。」
「おね、晴南さんは知ってたの、この展開…?」
「知ってたように見える…?」
「には見えないね…?」
耳打ちで聞いた琴梨が雛(晴南)の本当に知らなさそうな表情に苦笑いした。
「それに水琴こそ最近、連絡くれなかったじゃない?」
「色々、忙しかったんや…」
「もしかして私に愛想尽かしちゃった?」
「そっそんなわけ!」
「ふふっ、ないよね。この海の家を引き継ぐなんて私達の思い出を守りたいからでしょう?」
「べつにそんな理由じゃ…」
「素直じゃないな?でも嬉しかったよ。最近、会えなくて喧嘩ばかりだったし、遠距離恋愛の厳しさを感じてたから、あなたの愛を再確認出来て。」
「南…」
「遠くの大学行って、あなたと離れた暮らしをしてよくわかったの。私、あなたが居ないと生きていけない。」
「どういう意味や…?」
「私、大学を卒業したらあっちで就職せずにこの町に戻ってくるよ。」
「ほっほんまか…?」
「そしたら結婚しよ。」
「結婚!?」
それを厨房で聞いてたみんなも驚いた。動じない兎姫とそして悲しい表情の鴎を除いて…
「だから待たせると思うけど待っててくれる?」
「まっ待ってるに決まってるやん!何年でも何十年でも待ってやるさかい!」
水琴は初めて見せる涙を浮かべ、手を握った。
「嬉しい…」
すると厨房に居たみんなも貰い泣きしていた。
「仲直り出来てよかったね…」
「しかも結婚まで…」
「いいもん、見せてもらったな。」
「本当だね、あれっ…?鴎ちゃんの姿がどこにも…?」
厨房の扉が開いていた。
「外に行っちゃったんでしょうか?」
「鴎ちゃん!」
「お義姉さん!」
雛は鴎を探しに行った。
「二人ともどこへ…?」
「私も行ってくるね!」
「琴梨まで!なら私も行くよ!」
兎姫以外が雛(晴南)の後を追いかけた。
「今回は行くと邪魔になりそうだし、待ってることにするか。」
先に探しに行った雛(晴南)は鴎が居そうな場所にすぐに見当がつき、前の重要展開があったビーチの端にある岩場に行った。
「やっぱりここだったんだね。」
「ひよ…?」
「隣に座っていいかな?」
「ええに決まってるやん…」
泣いている鴎の隣にそっと座ると肩に寄りかかってきた。
「ハハハッ、あの二人が仲直りしたの見たやろ、ワテの恋、完全に終わってしまったわ。」
「悲しい?」
「ぷふ、その聞き方、ストレートすぎひん?もうちょっと捻られなかったかいな?」
「あっごめん…」
「ええんよ。悲しいといえば悲しい、ずっと好きやったもんな。」
「鴎ちゃん…」
「でもこれでやっとワテも前に踏み出せそうや。」
鴎は立ち上がると後ろに手を組んだ。
「前に踏み出すって…?まさか…?」
「あんたへの新たな恋にやで。」
振り向いて笑ってみた。
「なっなっなっ…」
(そっそっそのセリフって!)
「あんたはワテが泣いてると側にいて慰めてくれた、まるでぎょーさん雨が降る日に捨て犬がおったら自分の傘を差してあげる優しい奴みたいにな、ワテそんなあんたのこといつの間にか姉貴と同じくらい好きになってたみたいなんや…」
「はわわわぁぁ。」
(やっやっやっぱりあの告白シーンのやつだぁぁー!)
「ひよ、ワテと付き合ってくれへんか…?」
「うぐっ、うぐっ、よかったぁ…」
雛(晴南)は鶴子、多歌宮の時と同様、いつものファンとしてまた好きな尊いセリフを現実で聞けた感動とさらに無事に二週間で攻略が出来た安堵で涙が出まくっていた。
「それってワテの告白を受け入れてくれるってことか…?」
「もちろんだよ!」
「おおきに!大好きやで、ひよ!」
「わっ!?」
鴎は嬉しさのあまり抱きついてきた、そして見つめ合い唇にキスをした。
«ぷはぁ。»
「ワテのファーストキスをあげたで。」
「鴎ちゃん…」
(キスも漫画では海の家が終わって帰り際だったから、早いってことになるな…?)
「でもひよは初めてじゃないやろ?」
「よっよくわかったね…?」
「なんとなくや。あっでもワテらも姉貴みたいに遠距離恋愛になるな?平気かいな?」
「それもそうなんだけど、もっと話しておかなくちゃならない重要なことが…?」
「んっ?なんや言ってみ?」
「実は…」
毎度お馴染みの言い訳、夢は色々な女の子と付き合うことで、すでに彼女が二人いることを話した。
「まっマジか、そんな夢をもっとたんか…?しかもすでに彼女が二人も…?」
「そっそうなんだ…?」
「ぷっ、あはは。ひよ、あんたほんまにおもろすぎるで?ええやん、ワテもその彼女達みたいにあんたの夢を応援するわ。」
「あっありがとう。」
(ここまでは漫画通りになんだよね…?でも早く付き合えたってことは鶴子ちゃんや多歌宮さんみたいに何か影響があったり…?)
そんな二人の様子を後を追いかけてきていた琴梨達が隠れて見ていた。
「付き合ったって聞こえたけど、聞き間違いかな…?お義姉さんって鶴子さんと付き合ってるはずだよね…?えっ…?」
すると琴梨が後ろから抱きついてきた。
「グスンッ、グスンッ…」
「琴梨…?泣いてるの…?」
「うん…晴、おねえちゃんが告白されて受け入れてるところ、実際に初めて見たから…」
「そっか、泣けてくるに決まってるか…」
「またキスまでしてたし…」
「してたね…」
「だけど私も…」
「えっ?」
琴梨は背中から離れると振り向いた岬の手を握った。
「鴎さんじゃないけど、前に踏み出す決心がついたよ。」
「琴梨…?」
「ずっと待たせた告白の返事、今するね?」
「うっうん…?ゴクッ。」
「やっやっぱり恥ずかしいな、やめた!」
「えっ!?」
「口で伝えるより行動で示すことにする。」
「行動で…?ふむっ!」
琴梨は目を閉じて岬の唇にキスをした。
«ぷはぁ。»
「これが私の気持ち、わかってくれた…?」
「付き合ってくれる…?」
「もう、ほかにあるの…?」
「こっ琴梨ー!」
「ふぎゅ!」
岬も嬉しさのあまり琴梨を胸に抱き寄せた。
「あっごめん!苦しかった…?」
「平気、むしろ柔らかくてやみつきになりそう…」
「可愛い…」
「照れくさくなるようなこと言わないでよ…?」
「だって本当にそう思うから。こんな可愛い子が私の彼女になってくれるとか私は世界一のシアワセものすぎるでしょう。」
「世界一は大げさでしょう?」
「いやいや、マジで大げさじゃないから。」
«ぷふっ、あはは。»
「今度は私からキスしてもいい?」
「どーしようかな?」
「えー、させてよ?」
「仕方ないな?」
「ありがとう。」
今度は岬からキスをした。この時、琴梨は考えていた、自ら同性の女の子にファーストキスもしてさらに付き合うとはこの平行世界にすっかり毒されちゃったな?と、でもそんなのどうでもいいなと思い始めていた。なぜなら琴梨は岬が本気で好きだから。それ以上の理由などどうでもいいことだと。
《ひゃぁぁぁっ♡こんなの尊さの過剰摂取だわぁぁっ♡雛の三人目の攻略達成だけでもキュンキュンしたのにぃぃ♡まさか妹の琴梨まで女の子と付き合うところまで見れるなんてーー♡》
「よかったですね、お姉様。」
《ハァ♡思わず女神であるわたくしが昇天するところだったわ♡》
「雛さんの四人目の攻略も楽しみですね。」
《そうね!最高の百合をもっと見るためにさらに難易度を上げるわ!》
「ふっふ、お茶のおかわり持ってきますね。」
《お願いするわ。さて、四人目の候補は二人どちらにしようかしら?》
ニタニタした女神様は二つの写真を見て悩んでいた。その二つの写真の内一つは見覚えがある少女であった、あの豆山兎姫だ。




