第二話 私、主人公の妹と少し心が近づいた。
「はっ!?私達が漫画の世界の登場人物!?」
「しっ〜!琴梨ちゃん声が大きいよ!
ほかのお客さんに聞こえちゃうから!」
「あっごめん…」
百合漫画の舞台になるこの世界に来た私と主人公の妹の琴梨ちゃんは冷静に話をするために近くの喫茶店に入った。
「あはは、まぁ、いきなりこんなこと言われても驚くのも無理ないよね、でもわかってくれた?」
「ブクブクッ。やっぱりおねえちゃん…
この世界に来る途中に頭打ったんじゃ…?」
「だから、違うってば!どうしたら信じてくれるのかな…?」
「ハァ、ただ私でも理解できるのはこの世界は私のいた世界とは違うってこと…」
「そこだけは理解してくれたみたいで助かるよ。」
「というか、ここってどこなわけ…?かなり人もいるし、 あの風景とかなんかテレビで見たことはあるような気がするけど…?
絶対に私達の暮らしてる家の近くじゃないよね…?」
「ここは渋○区だよ?」
「渋○区!?家がある百合恋町からすごく離れてるよ!?家の近くの路地裏に入っただけだよね…?」
「それはほら、べつの世界に来たんだから多少の誤差はあるんじゃない?」
「多少の誤差って…」
「安心して、私がいや、お姉ちゃんがついてるんだから。」
「あのね、全然、説得力ないから誰のせいで私がこんな目に合ってるのか、わかってる?」
「あはは、相変わらず手厳しいな…」
「こんな事態でお気楽すぎるからでしょ…?」
「お待たせしました〜季節限定のメガ盛り苺タルトお2つですね〜ごゆっくりお召し上がりください〜」
「すごい苺の量…これ、いつの間に注文してたの…?」
「琴梨ちゃん、店に入ってすぐお手洗い行ったじゃない?その時に飲み物と一緒に頼んでおいたんだよ。」
「そっそうなんだ…?」
「甘いものでも食べて、リラックスしようよ?」
「そっそうだね…パクッ。」
「美味しい?」
「わぁぁ、何これ、美味しい!はっ!」
「よかった喜んでくれて。主人公の雛、いやあなたのお姉さんが苺大好きだって漫画で知ってたし、もしかしたら妹の琴梨ちゃんもそうなのかなって思って注文したんだ。」
「ふーん、中々、気が利くじゃん…パクッ。んんっ。」
「可愛いな。」
「子供みたいだって馬鹿にしてんの…?」
「そうじゃないって本当に可愛いって思っただけ。」
「普段のおねえちゃんなら絶対にそんな恥ずいこと言ってこないから、晴南さんだったけ…?本当にお姉ちゃんに転生してるのかなって思えてきたかも…?」
「じゃあ、少しは信じてくれるようになったのかな?」
「ちょちょっとだけね…まだ信じてない方が上だから…」
「それでも嬉しい。」
「えっと、晴南さん…?」
「あはは、この姿にその名前だと呼びづらいよね、おねえちゃんのままでいいよ?」
「おねえちゃん…?」
「うん、何かな?」
「おねえちゃんはタルト食べないの?」
「食べるよ。パクッ。んっ〜!本当に美味しいね!」
「もしかして前世で苺好きだった?」
「えへへ、実はそうなんだ。」
「ふっ、いい笑顔しちゃって…」
琴梨は少し心がほぐれた。
「じゃあ、会計、済ませてくるから
先に外に出てていいよ。」
「あっうん、わかった、待ってる。」
琴梨は喫茶店の前の看板に寄りかかって待っていた、すると…
「あら、可愛い子、見っけ〜」
「あっ本当だ〜」
化粧バリバリの金髪ギャル二人が近づいてきた。
「なっなんですか?」
「どう〜今からおねえさん達と一緒にデートしない〜?奢るからさ〜?」
「うちらが可愛がってあげるよぉ〜。」
「結構ですっ!」
「そんなつれないこと言わないでさ〜。」
ギャルの一人が肩に腕を回してきた。
「いやっ、離れてください!」
「ふっ。」
「ひゃっ。」
さらに耳元に息を吹きかけた。
「きゃぁ〜可愛いぃ〜。ウブ丸出しじゃん〜。」
「おねえさん達がそんなウブな子猫ちゃんに色々教えてあげるから。」
「助けて、誰か…」
「やめてください!」
雛(晴南)が怒り顔で割って入った。
「あん?」
「なんだよ?てめぇ?」
「この子は私の彼女です!だから手を出さないでください!」
「彼女…?」
「ちぇ、なんだ、すぐ近くにツレが居たんだ?」
「だったら最初から言ってよね、行こう、行こう。」
ギャル二人はその場から去って行った。
「だいじょうぶだった?琴梨ちゃん?」
「あっうん…でも今の人達って、一体…?」
「前の世界で言う所のチャラ○の女性版みたいな人達だよ。」
「そっそっか、話を聞いて納得…」
「怖い思いしたよね…?」
「べつに怖くなんかなかったし、一人でもなんとか出来たもん…」
「強がらなくていいよ。」
「えっ…?」
雛(晴南)は琴梨の手をそっと握った。
「震えてるのが伝わってくる、やっぱり本当は怖かったんでしょう?」
「そうだけど、わるい…?」
「わるくない、泣かなくて偉かったね。」
「何だよ、偉そうに…」
「あはは、偉そうか…」
「でも助けてくれてありがとう…」
「琴梨ちゃん…」
「ただ引っかかるのは私のこと彼女って言ったよね?あの場合は妹だって言えば済んでた思うけどな?」
「あっえっとね!とっさに出た言葉だったから!
深い意味とかはなくて!ただそう言った方があの人達は諦めてくれるかなって!」
「仕方ない、今回はそういうことにしておいてあげる。」
「ふぅ、それじゃあ、家に向かうことにしようか。」
「うん…あのさ…家に着くまでこのまま手を繋いでてもいい…?」
「もちろん、いいよ。」
「あっありがとう…」
琴梨ちゃん可愛いなぁ、やっと妹として甘えてきてくれたみたいです。
(気のせいだよね、助けに来てくれた一瞬ドキッとした、まさか、実の姉になんて…)
そして二人は様々な乗り物を乗り継ぎ、住んでいる百合恋町まで戻り、日が暮れる前に家に着いた。
「ほっ、よかった、この世界にも私達の家はちゃんとあった…」
「だから言ったでしょう?漫画で家はあったって。」
「むっ、確かにそうだけど、でもまだ私は漫画の世界の住人っていう子供の空想みたいなのは信じてるわけじゃないから、そのつもりで…?」
「わかってる、焦らずに信じてくれるのを待つよ。」
「ふっふん、勝手にすれば…」
「それはそれとして琴梨ちゃんの今日1の安心した顔が見れて、私もほっとしたな。」
「そっそういうのいいから家に入るよ…?」
「あっ待って!家に入る前に話さなきゃならない事があって!」
「家の中で聞くよ。」
琴梨は話をちゃんと聞かないで家に入った。
「お母さん、お父さん、ただいま…?あれっ?居ない?」
琴梨は家の至る所を探した、でも家には誰も居ないようだった。
「お父さんも仕事から帰って来てる時間だし、二人から怒られると思ってたんだけどな…?
もしかして私達を探しに行っちゃったとか⋯?
家にいることメールした方がいいかな…?」
すると居間に飾られた家族写真を見て、驚きのあまり動きが止まった。
「お姉ちゃんに抱きしめられてるこのおさげ髪で眼鏡の子、私…?それにお姉ちゃんの隣にお母さんがいるのはわかるけど、私の隣の美人な女の人は誰…?」
「この世界でいうあなたのお父さん的な存在だよ…?」
「えっ?えーーー!?」
「最初に話したけど、ここはね、女の人しか居ない世界だから…?」
「お父さんも女の人になってると…?」
「うん、そっそれとね、お母さんとお父さん的存在の人はこの世界では海外で仕事してることになってるんだ…」
「つまり私達は二人暮らしをしてる事になってると…?」
「漫画ではあなたも親に着いて行って海外に行ってることになってたけどね…」
「私もなんだ…?」
「多分、あなたは私と一緒にこの平行世界に来たから、物語の整合性を取るために物語に深く関わることになったのかも…?」
「あはは、なるほどね、あっ…」
「琴梨ちゃん!」
気を失いかけた琴梨を受け止めて、近くのソファーに寝かせると濡れたタオルを額に当てた。
「やっぱりショックだったよね…私もいつこの事を言えばいいか難しくて、家に着いてからになっちゃった…」
「当たり前だよ…家に帰ったら誰も居ないんだから…」
「だよね…」
「それに写真のお母さんは眼鏡してて髪型も変わってたけどお母さんだと思ったよ、でもお父さんは別人になってた、ましてや性別までなんて…」
「でっでもね、性別は変わっててもこの世界のお父さん的な人だから!お父さんとして見てもいいんじゃ!」
「慰めになってないよ!」
「すっすみません…」
「べつに性別なんかどうだっていいの、そうじゃなくて元いたの世界のお父さんを好きだったし尊敬してたから…」
琴梨は腕で隠してはいるが泣いているようだった。
「なっ泣かないで…?」
「泣いてないから…」
涙を拭うと起き上がり写真立てを持ち上げた。
「琴梨ちゃん…?」
「私、本当に漫画の住人でそれでいて別の世界に来てたんだね、夢じゃなかったんだ…
ようやくこれで晴都さんが言ってたこと、すべて納得できそうだよ…」
「本当…?」
「でも…」
「でも…?」
「こんな納得の仕方、いやだなぁ…」
振り向いた琴梨ちゃんは大粒の涙を流していた。
「琴梨ちゃん…」
「あれっ、そんなつもりないのに涙が止まらない…」
こんな時、姉ならどうしたらいいんだろう…
今は転生して姿だけでも私はこの子の姉なんだ…
泣いてる妹を慰めるにはそうか、これだ!
「えっ…?」
雛(晴南)は泣いてる琴梨をそっと胸に抱き寄せた。
「転生したとはいえ、今は私が琴梨ちゃんのお姉ちゃんだから遠慮せずに胸で泣いていいんだよ。」
「かっこつけないでよ…うっうっ、うわぁぁ…」
琴梨はひたすら胸に顔を埋めて泣き続けた…
そんな彼女を雛(晴南)は微笑みながら髪を撫でてあげた、まるで本当の姉のように…
「もうこれくらいでいい…」
「いっぱい泣いたね。」
「うっうるさい…」
「ふっふ。」
「とっとにかくこれから二人で暮らさなきゃならないんだから、迷惑かけないでよね…?」
「はーい。」
「本当にわかってるのかな…?」
「それといくらおねえちゃんだからって、私の裸を覗こうとか、許可なく触ろうとかしたら容赦なく、ボコボコにするから覚悟してね?」
「そっそんなことしないよー!」
「どうかな、ずっと変態みたいな顔してたし?」
「それはファンとして漫画のキャラと関われるのが嬉しいって感情が抑えきれないだけで!信じて!」
「はいはい、絶対にしないでね。」
「もうー。」
「ふっふ。」
琴梨が笑顔を見せた。
「また笑ってくれたね。」
「うっうるさい。」
転生おねえちゃんの雛(晴南)とその妹の琴梨のドキドキ姉妹生活が始まった。
「でも姉妹としてのスキンシップぐらいなら…?」
「晴南さん?」
「はっはーい…」
(姉妹百合もしたかったのに〜!)




