第十六話 私、次の攻略まで日常を過ごす。
攻略相手二人目のツンデレ風紀委員、多歌宮葉月を攻略に成功して彼女にしたその日、家では晩御飯を食べた後に琴梨に部屋に戻るとスマホで電話して鶴子に付き合ったことを報告した。
−琴梨の反応−
「攻略するの早くない…?昨日、漫画と違う展開になってるしどうなるか不安だって話してたばかりだよね…?」
「自分でも驚いてる…」
「つまり二人も彼女がいるわけか…」
「琴梨ちゃん…」
「あっいや、ちなみにどんな風に告白されたの…?」
「そっそれは…」
(私が漫画の雛より甘えさせたらバブちゃん要素ついて、ママって呼びたいって言われたことは流石に話せないかな…?)
「まっまぁ、話せるわけないか、とにかく二人目の攻略おめでとう…」
「うっうん、ありがとう…」
−鶴子の反応−
『やっぱり多歌宮さんが告白してきたんだね…?』
『うっうん…』
『それで例の夢を話してそれを受け入れてもらって、二人目の彼女にしたと…』
『鶴子ちゃんに相談すべきだったかな…?』
『いいんだよ、いっぱい恋人を作りたいっていう、雛ちゃんの夢がまた一歩近づいたわけで…彼女として喜ぶべきだと思うから…』
『鶴子ちゃん、ありがとう…』
『おめでとう、多歌宮さんとは同じ雛ちゃんの彼女として仲良くするね…?』
『そうしてくれると助かるよ。』
『でも…』
『でも…?』
『私が一番の彼女だからね…?それを忘れずに…?』
『はっはい…』
『だったら平気…』
そして少ししたら次に多歌宮さんから初めての電話が来た。
『愛田さん、今日は告白を受け入れてくれてありがとう。感謝しているわ、今後、よろしくね?』
『なんか急に硬くなったね?初めての電話で緊張してたり?』
『よっ余計なお世話よ。』
『ごめん。でも二人だけで話してるんだからもっと気軽でいいんだよ?』
『じゃじゃあ、あの感じでもいい…?』
『あの感じって?』
『ママって甘える感じ…』
『あっうん、もちろんいいよ!二人っきりの時はそんな感じに接したいって言ってたもんね?』
『ありがとう、ママ…』
『はっはーい…』
(多歌宮さん、私との時は完全にバブちゃんとして甘えたいみたい…)
漫画にはない要素を与えてしまったから、やっちゃったなと思う反面、やはり甘えてくる多歌宮さんは超可愛すぎるので…結果オーライだと思っています…
『それでね、ママ、お願いがあるの…』
『なっ何かな?』
『今日もね、葉月…学校で勉強と風紀委員を頑張って疲れちゃったの…偉かったねって褒めて欲しいんだ…?』
『ほっ褒めればいいんだね、わかった。オッホン、今日も一日色々、頑張って偉かったね。偉い、偉い。』
『えへへ、ありがとう…ママ、大好き…』
『ひゃひゃい、私も大好きだよ。』
電話を終えると雛(晴南)はキャパオーバーな事ばかりが起こり、枕に顔を埋めた。
「最初の攻略相手の鶴子ちゃんは漫画より嫉妬する独占欲の強い子にしちゃったし…そして次に攻略した多歌宮さんは凄く甘えるバブちゃん要素を…推しキャラの新たな一面が見れてるとはいえ、んぁ〜!私、好きだったあの百合漫画をどんどん改変しちゃってる気がする〜!漫画の作者である、にゃんにゃん先生、本当にごめんなさい〜!」
そんな懺悔を感じたのか、そのにゃんにゃん先生と思われる人物が部屋の壁に額縁に入れて飾ってある雛の横顔の絵を見つめて呟いた。
「私の作った作品の大ファンである青依晴南、彼女が私の作り出した主人公、愛田雛に転生して数週間、私には描けなかった面白い展開をいっぱい見せてくれてる、ありがとう。」
すると壁をすり抜け、光の玉ような物が現れた。
《鈴鹿さん、こちらの世界での暮らしはどうですか?楽しくやってます?》
《楽しい、楽しい。》
《ふっふ、あなたが描いた世界でしかも主要キャラの一人に転生したんですもんね、楽しくて当然か。》
《転生させてくれたあなたには感謝してますよ。》
《いえいえ、またそのうち、近況聞きに来ますね、それじゃ。》
光の玉は壁をすり抜けて外に出て行った。
「今の愛田雛ならきっと漫画を私が描けなかった真のハッピーエンドにしてくれるはず、期待してるからね、"ひよっち"」
それから三週間が過ぎ、雛(晴南)は二人の彼女と平等に恋をするためにそれぞれ別の日にデートをしたり、放課後に一緒に帰ったりして何とか上手くやっていて(これは漫画でもあった)
そして長い休みであるゴールデンウィークに入り、最初の日は鶴子とデート、その次の日は多歌宮とデートと交互に繰り返し、そしてゴールデンウィーク最終日、二人が会いたいと譲らないので二人を呼んで家でお泊り会をすることになった。(これは漫画にはなかった)
「ママ〜葉月のことをもっと褒めて〜。」
「はっはーい、偉かったね。」
「えへへ…」
今の多歌宮は鶴子が居てもお構いなしに甘えるようになり、無邪気な顔で雛(晴南)の胸に抱きつき頭を撫で撫でしてもらって喜んでいた。
「もうー!ずるいよ、多歌宮さん!さっきからそうやって雛ちゃんに甘えて独占してばかりじゃない!」
「いいじゃない、べつに?」
「よくない!私が雛ちゃんといっぱいイチャイチャするの!ねっ?雛ちゃん?」
「あっうん、しようね、鶴子ちゃん。」
「キスさせて?」
「うっうん、チュッ。」
嫉妬する鶴子を宥めるために唇にキスをした。
「雛ちゃん、大好き…」
そんなキスにメロメロの鶴子は肩に抱きついた。
「ママ…」
「雛ちゃん…」
「あはは…」
(女の子二人を抱きかかえるなんて漫画ではなかったシーンだよぉぉ〜!まだ攻略相手が三人いるのにすでにハーレム状態じゃん〜!)
そんな雛(晴南)の百合展開を見逃さないのが天界の女神様である。
《いいわぁ♡わたくしが見たい理想の百合ハーレムに近づいてる♡》
「ですね、お姉様。」
《次の攻略相手の攻略への期待感がさらに上がるわ♡》
ドキドキな雛(晴南)に多歌宮が聞いた。
「でも妹さんには申し訳ないことしたわね、アタシ達が泊まりに来るからって友達の家に泊まりに行ってくれたのよね?」
「気を遣わせちゃったのかな…?」
「そっそうじゃないよ、琴梨ちゃんは最初から泊まりに行く約束してたみたいだから。」
「だったらいいけど…?」
「そうね?」
「それに二人は。」
雛(晴南)にはわかっていた。琴梨が友達の岬に少しずつ、少しずつだが惹かれていっていることを。
「泊めてくれてありがとうね。」
「こっちこそ、泊まりに来てくれて嬉しい。1秒でも琴梨といられると思ったら…」
「岬ちゃん…」
「これ、作ったんだ、食べて。」
「わぁ、苺のショートケーキ!」
「琴梨は苺が大好物でしょう、喜ぶかなって。」
「よくわかってるね、私のこと。」
「好きな人のことだから、当然でしょう…?」
「そっそうだね…」
二人は顔を真っ赤にした。
「あーんって食べさせてあげようか…?」
「そっそれは恋人になってやるものじゃ?」
「やっぱり駄目だよね…」
「してもらおうかな…」
「いっいいの!」
「して欲しいかして欲しいくないかって言われたら、して欲しいの方が強いから…」
「琴梨…」
岬はフォークで食べやすいサイズに切って、苺のショートケーキをあーんと食べさせた。
「どう…?」
「美味しい…」
「よかった、好きな人に喜んでもらえて。」
「岬ちゃん…」
(この純粋な想いに応えてあげたい…でもまだ晴南さんを忘れられない…私ってやつは…)
そして5月が過ぎ、6月には体育祭もあって、そしてさらに月日が流れ、7月某日、雛(晴南)がこの平行世界に来て最初の高校の終業式になった。
「ついに夏休みだ〜!」
「まめっち、いつにも増してテンション高いね?」
「ふふ、余程、夏休みが楽しみなんだね。」
「でも特に予定あるわけでもないけどな。親はどっちも仕事だし、家でゴロゴロするかー。ひよっちはつるっち達とデート三昧か?」
「まっまぁ、そうなるかな…」
「だってよ、よかったな、つるっち?」
「うん…」
「夏休み、三人でも遊ぼうな?」
「そりゃもちろん。」
「友達だもんね。」
「約束だぞ。」
終業式が終わると雛(晴南)は笑顔で手を振る兎姫を見送って教室の自分の席に戻り、夏休みも仕事があって打ち合わせがある図書委員の鶴子と風紀委員の多歌宮を待った。今日は三人で帰る約束をしたのだ。
「雛ちゃん、お待たせ。」
「お疲れ様。」
まずは鶴子が戻ってきた。
「あとは多歌宮さんを待つだけか。」
「一学期が終わったね。」
「そうだね。」
雛(晴南)は窓を見つめて振り返っていた、この自分が好きな百合漫画の世界に来てからもう3ヶ月以上も経ったのだと。
「一学期の思い出はいっぱいあるけど、一番は雛ちゃんと付き合えたことだよ。」
「鶴子ちゃん…」
「今は教室に誰も居ないから、キスしてもいい…?」
「流石に教室だと先生に見つかったら怒られるかも…?」
「それもそうか…」
「でもカーテンに隠れながらならバレないかな…」
「じゃあ…」
二人はカーテンに隠れてキスをした。
«ぷはぁ。»
「なんかこの方がいけないことしてる感じするね…」
「鶴子ちゃんったら、してからそれを言う…?」
「ふっふ、ごめん。」
「お二人とも、仲がいいみたいで…?」
«あっ。»
多歌宮がちょうどよく戻ってきていて、一部始終を見ていたみたいで頬を膨らませていた。
「あっえっとね、これは…」
「多歌宮を仲間外れにしたとかじゃなくて…?」
「だったら。」
「えっ…?」
多歌宮が近づき、雛(晴南)の唇にキスをした。
«ぷはぁ。»
「初めてじゃない…?多歌宮さんがキスするなんて…?」
「嬉しくない…?」
「うっ嬉しいに決まってるよぉ!」
(漫画ではしてたけど、今の多歌宮さんはバブちゃん要素が強すぎて甘えてばかりだったからしてこないかなって思ってた!だからキスされて嬉しいぃぃ!)
「そこまで喜ばれたらした甲斐があったというものね…」
「むむむっ、だったらまた私も!」
「はむっ!」
再び鶴子がキスをしてきた、しかも舌を絡ませるさっきよりも熱烈なキスを。
«ぷはぁ。»
「ハァハァ、こんな激しいの初めてだよね…?」
「大人なキスだったでしょう…?」
「うっうん…」
「間違いなく上書き出来たよね…」
「なっなっ…」
「そっそれぐらい、アタシだって!」
「むぐっ!」
今度は多歌宮が同じように熱烈なキスをしてきた。
«ぷはぁ。»
「ハァハァ、どう…?」
「今のも凄かった…」
「でしょう?」
「ねぇ、どっちが一番よかった!」
「えっ、どっちと言われても!」
「そうね、答えて?」
「そっそっそんなこと言われても…?」
「まだ良さを伝えるには足りないってことかな…?」
「えっ、鶴子ちゃん?」
「多分、そうかもしれないわね…?」
「なっ、多歌宮さん?」
「どっちがいいか。」
「決めるまで。」
「キスするわよ?」
「キスしよう?」
「はわわわぁ!」
カーテンに隠れて行われたキス対決は結局、決着はつかなかった。そしてまるで精気を吸い付くされたように雛(晴南)は燃え尽きた表情をしながら校舎を出た。
「ごっごめんね…?調子に乗りすぎちゃったみたい…?」
「アタシもつい熱くなっちゃったわ…?ごめんなさい…?」
「いいんだよ、二人がキスしてくれることは本当に嬉しいから…」
疲れた表情をしつつも笑顔を見せた。
「雛ちゃん…」
「ママ…」
二人は頬を赤らめて雛(晴南)のそれぞれの腕にくっついた。
「あはは、ちょっと歩きにくいかな…」
「少しの間だけこれで…」
「そうよね、これから夏休みとはいってもあなたは図書委員の仕事で、アタシは風紀委員の仕事があるから、愛田さんと一緒にいられる時間をどれだけ設けられるかわからないものね…」
「ですよね…」
「わかった、今日はこれで帰ろうか…」
「ありがとう、雛ちゃん…」
「大好き、ママ…」
その様子を校舎の窓から見ている少女の姿があった、ある一人の事を想って…
「葉月さん…」




