第十五話 私、二人目の攻略相手を攻略した!
「今の攻略相手の多歌宮さんが風邪を引いてお見舞いに行ったんだ?」
「あっうん、もしかしたら自分の風邪が移ったのかもと思ったし…」
「キスした鶴子さんは風邪を惹かなかったのにね…?」
「それは本人からも言われた…」
つい最近にあんな一件があったばかりだし、多少、気まずくはありましたが、琴梨ちゃんに今日の多歌宮さんとのことを話しました。
「それでグッと攻略に近づいたわけね…」
「本来は今日の重要イベントは体育祭の準備の手伝いで残る多歌宮さんに差し入れを持って行った時に起こるはずだったんだけどね。」
「んじゃあ、一ヶ月近く早いんだ…?明日で4月終わるぐらいだもんね…?」
「うん、雛の高校の体育祭は6月。」
「それだけ晴南さんがおねえちゃんに転生した影響がでかいってわけか、主人公として大活躍じゃん…?」
「でも手放しでは喜べないよ。」
「なっ何で…?」
「漫画と展開が大きく変わってるってことは告白されるのがいつかもわからないってこと、早くなるのか、それとも下手をすれば遅れてしまうのか…」
「そっそんな影響があったんだ?」
「もし告白が体育祭後より遅れて夏休みにでもなったら非常にまずい展開になる…」
「夏休みだとどうしてまずい展開になるの…?」
「三人目の攻略相手が夏休み限定で落とさなくちゃならない相手なんだよ。」
「夏休み限定…?つまり約一ヶ月ぐらいでってこと…?」
「正確には二週間ぐらいだったかな?」
「そんな短い間に…?相手は誰なのよ…?」
「それは今は聞かない方がいいかな、驚いちゃうと思うし…?」
「ということは私の知ってる人…?」
「はい…」
「わっわかった、本当は知りたいけど、夏休みまで我慢しておくね…?」
「そうしてもらえたら助かります。」
「いちよう聞くけどまさか岬ちゃんじゃないよね…?」
「違う、違う!」
「ほっ、何だ…」
琴梨は安心した表情をした。
「あれれ、もしかして岬を取られるかもって焦った?」
「んなわけないでしょう!」
「本当かなー?」
「調子に乗るな!」
「痛っ!」
お仕置きとばかりにデコピンされた。
「てへへ、ごめん。でも岬ちゃんが気になり出してるってことだよね?」
「言うわけないでしょう…」
「私のことは話したよ?今度は琴梨ちゃんのことを聞かせてほしいな?」
「しっ仕方ないわね…」
「あれから岬ちゃんは積極的アピールしてきてる?」
「うっうん…学校では人前だからあまり目立ってはしないけどしてきてる…」
「例えば?」
「登校の時にわざわざ校門前で待ってくれてたり…お昼休みにって手作りのお弁当を持ってきてくれてたり…」
「健気だね、それからそれから?」
「放課後はいつもみたいに一緒に帰ったけど、帰り道で自然と腕を組んできた…」
「前はしてこなかったの?」
「してきてたこともある…でも私が意識しちゃうようになったのかも…」
「意識しちゃってるんだ?」
「うっうるさい…」
「岬ちゃんといると前よりドキドキするようになった?」
「なっなっなっ何でそんなことがわかるのよ?」
「ふふん、これでも百合オタで今は百合漫画の主人公ですから。」
「説得力あるかも…?」
「岬ちゃん、美人だし、琴梨ちゃんとお似合いだと思うよ。」
「お似合いか…」
「うん。」
「ご馳走様、私、部屋に戻るね…」
「デザートは食べないの?」
「後で食べるね…」
琴梨は部屋に戻って行った。
「好きな人からそう言われたら、へこんで当たり前か、でもそれを乗り越えて岬ちゃんと結ばれてほしい…それが彼女のためになるんだから…」
そして部屋に戻った琴梨はというと、落ち込んではいたが、以前のような暗い感じではなかった。
「私、まだおね、晴南さんへの想いは振り切れそうにないってか…けど不思議、岬ちゃんが告白してくれた後からこの切なさに耐えられるようになったかも…岬ちゃん…私は岬ちゃんの想いに応えられる日が来るんだろうか…」
岬と撮ったプリクラ写真を眺めながら呟いた。
「きっと彼女ことを…この想い伝えたい…」
そしてもう一人の恋する少女が部屋の窓から外の月を見つめて覚悟を決めていた。
−それから二日後−
「聞いたか?多歌宮が風邪が治って登校してきたらしいぞ?」
「本当!」
「よかったね、雛ちゃん…?」
「あっうん…」
「会いに行ったらどうだ?」
「何度も会いに行ってしつこい奴とか思われないかな…?」
「おいおい、ひよっちらしくもないほど慎重だな?」
「まっまぁね…」
(漫画と違う展開になったんだもん、慎重に行動しないと嫌われるってことにだけはなりたくないから…)
「愛田雛さんはいるかしら…?」
「えっ?」
噂をしているとその多歌宮本人が雛(晴南)を訪ねて教室までやってきた。
「元気になったんだね、安心したよ。」
「お陰様でね…」
「小うるさい奴が居ないのも今日までか。」
「何ですって?」
「あはは、休んでも相変わらずだな?そんでひよっちに用があって来たんだろ?」
「そっそうだったわ、愛田さん、放課後に風紀委員会の部屋に来てくれないかしら…?」
「風紀委員会の部屋に…?」
「どうしてですか…?」
「それは…」
「まさかひよっちを風紀委員にしようとしてるんじゃ?」
「そうなんですか…?」
「ちっ違うわよ、ただ二人だけで話したい事があるだけ…」
「二人だけで、話したいこと…?」
「無理かしら…?」
「鶴子ちゃん…?」
「いいよ、行って…」
「わかった。行くね、放課後に風紀委員会の部屋に。」
「ありがとう、鏡原さんも…?」
「いえ…」
「今日も一緒に帰ろうな。」
「兎姫ちゃん…」
「じゃあ、待ってるから、放課後に…」
「うん…」
約束通り放課後、風紀委員の活動する部屋に雛(晴南)は向かった、胸をドキドキさせながら…
(まっまさか、告白かな…?いや、いくら何でも期待しすぎかもしれない、漫画では体育祭が終わったその日、たまたま鶴子ちゃんとじゃなく多歌宮さんと帰ることになって、夕暮れの校舎の廊下で告白されるって展開だった…夕暮れって所しかあってない、こんな早く告白されるわけがない、落ち着け私…)
部屋の前に着き、深呼吸して心を落ち着かせてから中に入った。
「約束通り、来てくれたのね…」
「ほかの風紀委員会の方達は…?」
「お願いして今日は早く帰ってもらったの…」
「私と二人っきりになるためにってこと…?」
「言わせるつもり…?」
「あっいや、そういうつもりで聞いたんじゃ…」
「そうよ…」
「えっ…?」
「愛田さんと二人っきりになりたかったの…」
「そっそれって…?」
「伝えたい事があるの…」
多歌宮は頬を赤らめながら近づいて手を握ってきた。
「つっ伝えたいことって…?」
(まさか、まさか、まさか!)
「お見舞いに来てくれた時に優しく抱きしめてくれたわよね、とても温かくて安心した…まるで寒い冬の中でも照らしてくれる太陽のように…」
「なっなっ!」
(その後半最後のセリフはー!!)
「アタシ…そんなあんたが好きになっちゃったみたい…」
「うぐっ、うぐっ、ですよねぇぇ…」
雛(晴南)は鶴子の時と同様、ファンとして好きな尊いセリフを現実で聞けたことに、また感動で涙腺が崩壊して涙が出まくっていた。
「ちょちょっと、そんなにアタシから告白されるの迷惑だった…?」
「違うよ、嬉しすぎるから泣いてるんだよ…」
「嬉しく思ってくれてるの…?」
「当たり前だよ。」
「でもこの想いには応えられないでしょう…?愛田さんにはすでに鏡原さんっていう恋人がいるもの…アタシだってただこの想いさえ伝えられたら身を引こうと考えてたし…」
「応えるよ!」
「えっ…?」
「私だって多歌宮さんが好きで付き合いたいと思ってたから!」
「うっ嘘でしょう…?エイプリルフールならとっくに過ぎてるわよ…?」
「嘘じゃないよ、本当にそう思ってる。」
「鏡原さんはどうするのよ…?まさかアタシと付き合うために別れるとか言うんじゃ…?」
「あっえっとね、鶴子ちゃんと別れる気はないよ…?」
「どっどういう意味…?」
「実はね…」
女神様の試練で百合ハーレムを作らなくちゃならないとは絶対に言えないので、鶴子ちゃんに話したように夢が恋人をいっぱい作ることだと誤魔化した。
「あっあんた、そんなハレンチな夢を持ってたの…?」
「はっはい、そうなんです…」
「馬鹿じゃない…?」
「でっですよね…?」
(まぁ、漫画で雛が誤魔化すために言ったことなんだけどね…?だけどこの状況が漫画と同じなら、きっと次のセリフは…)
「けど、馬鹿でもいい…アタシを二人目の恋人にしてください…」
「もちろんだよ…」
「ありがとう…」
「こちらこそ…」
(嬉しいぃぃ、実際に聞けるなんてぇぇ…)
多歌宮を抱きしめながら感動に浸っていた。
「ママ…」
「おやおや、また言ったね。」
「あなたに抱きしめられると小学生の頃の甘えてた自分が蘇るの、その頃はお母さんの事をママって呼んでたし…」
「そうなんだね、前も言ったけどそう呼ばれるのは悪い気はしないかな?」
「本当!」
「んっ?うん?」
「じゃあ、お願いがあるわ…」
「お願い…?」
(漫画ではしてなかったけどな…?)
「二人でいる時だけ、ママって呼ばせて…?」
「何ですと…?」
「そして本当のママみたいに甘えさせて…?」
「あわわわっ!」
(前の事が影響して、多歌宮さんに漫画ではなかったバブちゃん要素がついちゃったぁーー!?)
「駄目でちゅか…?」
多歌宮は指を咥えて甘えた表情をした。
「はぅ。」
(やっやっやば、可愛いすぎるぅぅ…)
雛(晴南)は母性本能をくすぐられたのか、キュンとしてしまった。
「どうなの、ママ…?」
「いっいいよ〜!2人っきりの時だけママって呼んで!」
そして可愛さに負けて許してしまった。
「ありがとう!」
「きゃっ。」
後ろに倒れるくらい勢いよく抱きついてきて、胸に頬をスリスリしてきた。
「ママ…」
「あはは…」
(鶴子ちゃんみたいに漫画にはなかった属性を与えちゃったけど、また推しキャラの一人の新たな一面が見られたんだし、良いとするかな…?)
そして恒例である、その状況を天界の女神様も水晶で見ていた。
《まぁまぁ♡雛によってあの真面目でツンデレだったあの子がバブバブしちゃってるわぁ♡》
「可愛いですね。」
《また期待以上の百合を見せてくれた♡》
「よかったですね、お姉様。」
《さてお次もさらに難易度をあげるわよ〜。》
女神様はすでに決めてある攻略相手の写真を見た。
「確かに次の方は難しいですね?攻略出来る期間が短くて、関係性も複雑。雛さんはどうするでしょう?」
《見たいわよね〜、でもそれには少し時間を待たなきゃならない。》
「じゃあ、それまでは前にやってた地上で起こる百合観察ですね。」
《ウフフ、それも大好きなんだけどね。》
時を同じくして、先に帰った鶴子達はというと…
「雛ちゃん…」
「不安か?」
「えっ、うっうん…」
「そりゃ、ひよっちの"恋人二人目"があんなツンデレじゃな。」
「そっそういうわけじゃないけど…ってあれっ?どうして兎姫ちゃんが雛ちゃんの夢を知ってるの…?」
「あっいや!前にひよっちが話してくれたんだよ、あはは。」
「そっそうなんだ…?」
(兎姫ちゃんは私達の親友だから当然か…)
「あはは…危なかった…」
兎姫は小声で呟いた。




