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二人の少年少女が夢を共有する、そんな話5(完結)

渚の声にはっとする。

「固まっちゃったけど、どうだった……?」

渚は馨の顔を覗き込む。

「なんか、すごかった。場面転換もそうだし何より内容が印象的すぎて……」

一つ一つ言葉を出していく。

「こんな夢見れるのすごいな、想像力なのか、普段から色々考えて生きてるのか……でもちょっと怖かった。渚、無理してるんじゃないかなって、なんかそう感じた」

馨は静かに話す。

渚は馨の顔をしっかりと見ながら声を出す。

「んへへ、真実はどうかなぁ。でも一つ言えることは、今はすごく楽しいんだよ。あんなに毎日が嫌だったのに君と出会ってから世界がキラキラしてる。朝起きるのもいいなって思えるんだよ」

馨はぽかんとする。

「え?そういうこと?」

渚は笑う。

「そういうこと」


公園には柔らかな日差しが指していた。

「今日は長い夢だったね」

渚は声を出す。

「ちょっと疲れたから今日は帰ろうか」

二人はブランコから腰を上げ、公園を出た。

少し歩いた場所で渚は口を開く。

「ここ、馨の夢に出てきた交差点だね」

信号を待ちながら前を通り過ぎる車をぼーっと眺める。

「そうだね、夢と現実ってリンクしてるところもあるから面白いよね」

「ほんとにね、あ、信号変わったよ」

馨の前に渚が歩いている。

横断歩道を半分ほど過ぎたとき、馨は血相を変えた。

「渚危ない!!」

強く渚の背中に衝撃が走る。

勢いで前に倒れる渚。どんと鈍い音が後ろから聞こえてくる。

ゆっくりと立ち上がって後ろを確認する。

「馨……?」

目の前には大きなトラック。

下からは赤い何かが流れ出ていた。

「馨……? 馨!!」

大きく叫ぶ、何度も何度も叫んだ。だけど前の赤い液体は地面に広がるばかり。

馨の声なんて聞こえなかった。

すぐに周りは騒然とする。

少ししたらパトカーに救急車が到着した。

「あ……あぇ……」

放心状態の渚は警察官に事情徴収をされる。

「何が起きたかわかりますか?」

「え、あ、信号待ってて……変わったから歩いてたら……急に後ろから衝撃が来て……それで倒れちゃって……後ろ見たらこんなことになってて……」

言葉は詰まりづまりでしか出てこない。

「一緒にいたのは友達? 名前わかるかな? 」

「神崎馨……私の……友達……です……」

信じたくなかった。轢かれたなんて。救急隊の声がかすかに聞こえる。


「こりゃもう手遅れかもな」


鼓動が早くなった。なんでよりにもよってここなのか、なんでこんなことが起きたのか、今日会わなければこんなことにならなかったのか、先に歩かなければ馨は死ななくてよかったのか、考えは頭の中を埋め尽くす。

「また連絡入れさせてもらうから携帯番号だけ教えてくれるかな? 今日は苦しいかもしれないけどお家に帰ってくれないかな」

そう警察官は渚に話した。

渚は携帯番号を教えてはいとだけ応え家に帰った。


家に着いても、靴を脱ぐことができなかった。

玄関のたたきに座り込んだまま、渚は動けずにいた。

服には何も付いていない。それなのに、あの赤い色だけが目に焼き付いて離れなかった。

スマホが震えた。

知らない番号だった。

出なければいい、そう思ったのに、指は勝手に動いた。

「……はい」

『神城渚さんでお間違いないですか』

それだけで、胸の奥がひくりと痛んだ。

渚は何も答えられず、ただ息をしていた。

その夜、渚は夢を見た。

公園のブランコも、交差点もなかった。

ただ、どこかで誰かが自分の名前を呼んでいる気がした。


目を覚めたときにはお昼を過ぎていた。

「あ……」

昨日ポケットに入れたボタン。馨に返すのを忘れていたボタンがそこには入っていた。

「馨……何見てるかな」

そっとボタンを押してみた。


「今日流星群が見えるんだって、一緒に星見に行かない?」ーー


ーー「私の名前はハッピーエンド。あなたが幸せになって何より。さようなら」


「ハッピーエンド……」

見た夢は同じだった。何度も何度も押してみた。見れる夢はただ1つ同じものばかりだった。

「馨が最後に見た夢」

その日は外に出る勇気も出ず眠りについた。

そのまま一週間が過ぎた。

何度も押してみた。馨のボタンだけじゃない。あの時の信号機のボタン、関係のないリモコンのボタン、目に見えるボタンを何度も何度も押してみた。

だけど世界は何も変わらなかった。


帰ってきてほしい人は帰ってこなかった。


「一緒に流星群見たかったよ」

あっという間の出来事だった。ついさっきまで一緒に夢を共有して楽しく過ごしていたのに、世界は一瞬にして変わってしまった。

渚は交差点をぼーっと眺めていた。

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