二人の少年少女が夢を共有する、そんな話3
1週間後、二人はいつもどおりに東公園に集まった。
「久しぶりだねぇ」
渚は馨に声を掛ける。
「久しぶりだね、台風、やっと行ってくれた」
この一週間、台風による強風や増水で大雨で外に出ることができなかったのだ。
「ほんとに、家吹っ飛んじゃうんじゃないかって思ったよ」
笑いながら渚は話す。
「けど台風過ぎたあとの風って好きなんだよね」
「わかる!なんか清々しいっていうか軽いっていうか、なんていうか、ね!」
「瞬間だけど秋を感じるよね」
「まじわかる!!!」
そんな他愛ない話を交わす。
風は時々ぴゅうと吹き、涼しさと夏の香りを運んできてくれた。
「んー、まだブランコ濡れてるなぁ」
そう言ってブランコに指を滑らす。
渚の指先が濡れ、ぺっぺっと水を払う。
「タオル、持ってるよ」
と、馨は言う。ブランコの水分を吹き上げて乾いた状態に戻した。
「さっすが馨、助かるぅ」
そう言って渚はブランコに腰を下ろす。
続けて声を掛ける。
「ねぇ馨、今日は夢、共有しよ?」
「そしたらさ、僕の夢から見てくれない? 渚にも早く見てもらいたいんだ」
そう言って馨はボタンを渚に渡す。
「あれ、今日は定期に付けてないんだ」
馨は持ってたボタンを一度見る。
「あぁ、夏休みだから定期使わないしいいかなって」
「なるほどね」
渚は受け取ったボタンをそっと押した。
「今日流星群が見えるんだって、一緒に星見に行かない?」
そう言って僕は彼女を誘った。
季節は冬。自然と鼻の先が赤くなる。
午前6時、僕は交差点を眺めていた。
午後0時、僕はまだ交差点を眺めていた。
午後6時、ぼーっと交差点を眺めていた。
午前0時、轢かれそうな交差点を眺めていた。
午前6時、彼女とお花見をした。タバコを吸う僕にまた吸ってると笑いながら話しかけてくれる彼女の笑顔は天使のようだった。
午後0時、彼女と海に行った。暑い日差しが照りつける中、彼女は海に入り浮き輪でプカプカと波を楽しんでいた。僕は浜辺で焼きそばを食べて、波に揺られる彼女を眺めていた。
午後6時、彼女と紅葉狩りに行った。人が多い中しっかりと手を繋いで紅葉をみた。出店ではたくさんの食べ物が売っており、彼女は大好きなたこ焼きを頬張っていた。ハフハフとしながら食べられるたこ焼きに少し嫉妬した。
午前0時、彼女と星を見に行った。雪の降る世界。町外れの公園まで歩いてきた。彼女は寒い寒いと頬と鼻を赤らめながら言う。僕はそっと白いパーカーをかけてあげた。暖かいと笑う彼女をみて心が暖かくなった。
これは僕の日記なのかもしれない。
誰に見られるでもない。僕だけの日記。
午前3時、世界は変わった。
二人で手を繋いで歩いていた。交差点を渡ろうとした。確かに歩行者側が青だった、なのに大きなトラックが突っ込んできて彼女は僕をかばった。
死んだ。
彼女はあっけなく死んでしまった。
僕は状況を飲み込めなかった。
そこからだ、午前6時、午後0時、午後6時、午前0時、僕はずっとその交差点を眺めていた。
ふと目にオレンジ色の何かが横切った気がした。横切った方向を見てみると確かにオレンジ色の何かが飛んでいた。誘われるように僕は追いかけた。
公園の隅っこ、ようやく捕まえた。
そいつは言う。
「私はハッピーエンド、あなたを幸せにする妖精」
と。
何を馬鹿げたことをと思いながら僕は口を動かしていた。
「僕の彼女を返してください」
妖精はわかりましたと一言、淡くひかり目を瞑る。
目を開けると目の前には彼女が立っていた。
「〇〇?」
コクリと頷く彼女。
それからは共に過ごした。あの時みたいに。
午前6時、午後0時、午後6時、午前0時、
楽しかった。久しぶりの感覚。
ついにやってきた午前3時。
轢かれそうな交差点。また同じタイミングであのトラックが暴走した。今度は僕が彼女を救った。僕は彼女のもとへ行けるのだ。
轢かれた瞬間彼女は淡くひかり僕に言う。
「私の名前はハッピーエンド。あなたが幸せになって何より。さようなら」
…ゆっくりと渚は目を覚ました。
「今回の夢、どうだった?」
馨は微笑みながら渚を見る。
「ハッピーエンドちゃんいた」
ふふふっと馨は笑う。
「ね!だから渚に早く見てもらいたかったんだ。夢の内容もだけど何よりこの前話してたのが夢の中に出てきたのが嬉しくてさ」
「すごい悲しい夢だけど、ハッピーエンドってこういう終わり方もあるんだって、なんか発見? みたいなのあるね」
そう言って渚は夢の感想を話した。
続けて話す。
「実は私もね、すごい不思議な夢見たんだ。なんか言葉で説明するのすごく難しいんだけど1つの長編映画を見てるみたいでさ、馨、見てみない?」
渚は付けてたボタンを外して馨に差し出す。
わかったという言葉と同時に差し出されたボタンを馨は押した。




