出会い
宇宙暦...12676年、全ての多元宇宙で
アカシックレコードを巡った大きな戦争が勃発した。
その戦火は多くの多元宇宙を巻き込み、
数億の命を散らし、憎悪と、復讐、そして直しきれない傷跡を生んだ。
マルチバース大戦から15年後、世界に多元宇宙同士の争い、または、
交流などを制限する法律が全多元宇宙に発表され、
また、全多元宇宙を管理し、平和を維持する連合
Multiverse Management Federation 通称MMFが創始された。
夜の中賑わっている商店街の中を、
俺は一人歩いていた。
安酒の匂いと、隣の屋台の掛け声が
夜の空気に溶け合っており、ネオン管のけばけばしい光が
濡れた路面に反射し、無数の影を揺らしていた。
すこし見渡せば、どこからか喧騒の声が聞こえてくる。
俺はその賑わいと、平和な空気に、一瞬、深い安堵を覚えた。
「...あの日々と比べたら大違いだな。」
俺は心の中でそう呟いた。
「おいアルマ、ちょっとうちに寄ってかねぇか?」
「いいや、遠慮しとくよ。これから用事があってね。」
「えぇ〜、マジかよ...」と、チャドは不満げに顔を歪ませると、
何か閃いたような目をして、
「ひょっとしてお前に彼女が出来てしまったのか!?」と言った。
「もし、本当にそうだったら?」
「顔面変形するぐらい殴ってその後、吊るし上げの刑にしてやる。」
「...バーカ、用事はバーの仕事のことだから、安心しろ。」
「はぁ?なんだよ、そういうことかよ〜。また機会があったら来いよ。」
「ああ、そうするよ。」
そうして、俺は店番をしているチャドの来店の誘いを断り、
俺はバーへと歩を進めた。
長い時間歩いてバーに着き、
扉を開け、中へと歩を進める。
カウンターに椅子を等間隔で並べ、倉庫からワインを運ぶ。
店の外に看板を立てかけ、周囲の明かりを点ける。
あらかた準備は終わり、バーへ戻ろうとした所に、
一瞬、何かが通り過ぎた。
なんだと思って振り向くと、
MMFのエンブレムが書かれた制服を着た、数人が走っていった。
「なんで、連中がここに...?」
疑問に思っていると、草むらから、
白く、長い髪をした少女が、辺りの様子を窺いながら出てきた。
「そこにいたか!」
「逃さんぞ!」
先程の、奥の通路へ向かっていった数人の中で、
引き返してきた二人のようだ
「...っ!」
「おっと」
少女がこちらに走り寄ってしがみつき、
「助けて!」
...と言ってきた。
これは...争いは避けられないか?
そう思っていると、兵士が
「おい、そこのあんた。悪いことは言わねぇ、そいつは助けねぇ方がいい」
「...?何故だ?」
「そいつはMMFのお偉いさん方に目を付けられている奴だ。
助けようと思った所で無駄だ。」
「...お偉いさんに目を付けられている、か」
こんな世の中になっても、
人の上に立つ人間はいつの時代でも、変わらないな。
「ふむ、理由は分からん...が、俺は、こいつを助けるっ!」
「ふぇっ?!」
少女を抱え、次の瞬間、地を抉るような轟音と共に上空へと跳躍する。
ネオンの光が残像になり、そのまま屋根から屋根へと移っていく。
これで共犯って所だが、まぁ...なんとかなるだろう
「...おじさん、どこへ行くの?」
「さぁな...」
正直言って、行く当ては無い。助けると断言した割にはな。
「ん?今、お前なんて言った?」
「え?おじさん」
「はぁ?俺はおじさんじゃねぇ」
「え?おじさんじゃないの?」
「ああ、そうだ。俺はおじさんじゃない。お兄さんだ」
「お兄さんなの?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、お兄ちゃん!」
「やれば出来るじゃねぇか」
......?ちゃん??
「...あ、そうだ、お前名前は?」
「私の名前はね、ミラ」
「ミラ、か...良い名前だな」
「えへへ、ありがとう」
「...確かか?」
「はい、今日この路地裏で例の”あれ”を逃しました。
逃走者は、尋常ではない跳躍力で、一瞬で屋根へ...」
「いい」
「奴らはまだ遠くへ行っていないはずだ。
捜索網を張れ。 発見した場合は、生け捕り、
もう片方は抵抗するようであれば、多少の武力行使を行ってでも捕らえろ」
「了解です。レオン総司令」
「...あいつがまだ生きていて...いいや、まさかな」
報告書を見ながら、レオンは呟くのであった




