第八章 最終決戦!
光と闇の渦巻くその空間は、急速に渦巻き実態を形作った。オメガだ。
「…」
オメガは無言で肘をたて頭をのせてルナを見下ろした。
「オメガ、王女ルナの名において、あなたを討伐します」
王家の正当な決闘の宣誓をして、ルナは魔剣ダークロードを一振りした。
二人の間に、瞬間空間が開いて閉じた。
(いける…)
オメガの口が僅かに動いて何か言っている。それはルナも知らない古代の呪文だった。
瞬く間にダークロードの剣の姿は解かれ、老いぼれた髑髏の姿が横たわった。
老人は叫ぶ、
「オメガ、お前は不死身なだけでなく、時間をも操れるのか!」
「ダークロード、愚かだな。私に楯突かねば、若返らせてやっても良かったものを」
そう言うと、ダークロードの体はみるみる若返り、瑞々しい肌と水色に靡く髪の美青年となった。
「おぉ、オメガ、あなたこそ我が王、いや神」
ダークロードの体は若返り続け、赤ん坊の姿となりそして消滅した。
「して、ルナ姫、私に何の用かな?」
オメガは、丁重に聞き返した。しかし黄色い目には怒りがある。その眼を見るだけで、ルナの脚は震えた。
「私は…、なたを倒しに来ました」
「どうやって?」
オメガの巨大な手の指だけで、ルナを鳥籠のように囲んだ。
魔王の血族の邂逅の結晶、魔剣ダークロードですら何も挿せてもらえなかった。
「イグニス…」
オメガは、首を振った。
「我が血肉となれ、これで魔界は新しい時代を迎える」
その時、空間にドアが開いた。
「ごめん!ルナ大丈夫?遅れた」
たちまち縮んで、オメガはトカゲの姿のアルファとなった。
「田中くん!?どうしてここに!?」
「魔力全部止まれって言っても、ここだけ残ってたから入ってみたんだけど?」
田中はアルファを摘み上げ、食べようとした。
「あー、ダメだって、汚いから!イグニス・フラーマ!」
オメガ=アルファは焼き払われた。
――
ルナは魔族の女王となったと思う。
僕は3学年に進級した。
僕の無効化能力は、ウッカリ魔界を消滅しかねないほど強くなってしまった。
アルファを僕の体内に取り込む事で、僕も魔族になれるんじゃないかと思った。
昼に昇る月を見る時、ルナを思い出す。いつか僕が宇宙飛行士になって月に行ったら会えるんだろうか?
真っ黒こげのトカゲが入った引き出しを閉じた。