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 翌日、役所にて。

 あの受け付けのお姉さんが誰かと話していた。

 お姉さんが言っていた《採掘》スキルの人か?


「おはようございます」

「あら、来たんだね!」


 軽く挨拶をすると、受け付けのお姉さんは早速隣にいる男の人を紹介した。

 服はボロボロで、身につけている他の道具もかなり年季が入っているように見える…職人さんって感じの人だ。


「いいか、俺は跡取りだなんて頼んでないんだが?」


 その人は、受け付けのお姉さんに言った。

 跡取りを探さないといけないような年齢にはとても見えない。


「仲間が増えた方が絶対良いですって!」


 受け付けのお姉さんがそう言うと、男の人は嫌そうな顔をした。














「私、ミルといいます。」

「俺はサンという。まあ、よろしく。」


 結局、あまりにも受け付けのお姉さんが勧めるので、私は見学させてもらえることになった。

 いや、させてもらえる…というかコレは強制的だった。


 …お姉さん曰く、この仕事はなかなかに興味深いものだそうだ。






「ゴミ集めだ。」


 …しかしサンはそう言う。


 仕事場


 確かに、仕事場を見る限り…確かにゴミ捨て場のようなところだが、なぜゴミなんて集めるのだろうか。

 一面灰色のゴミが転がっている。

 まるで異世界だ。

 かき分けられた瓦礫の道を歩く。



「俺の仕事は、ゴミ集めだ。ここのゴミを片付ける。それだけ。」


 サンはピッケルで、瓦礫をガザガザと動かし始めた。

 ピッケルをほうきのようにして、瓦礫を集めている…ように見える。


 本当にゴミなんて集めているのか。


 それ以外、特に何かする様子もない。

 


 仕方ないので、私も瓦礫を集めた。

 灰色っぽい岩のかけらと、金属らしい棒がゴロゴロしている。

 私は足で蹴って、瓦礫の山を作っていた。







 …。


「はあ、めんどくさいのがもう現れた。

 …下がっていろ。」

 

 サンはそう言うと、ピッケルを片手に持ち、前方を指した。

 サンが指した方向の瓦礫が…動いているように見える。


 サンはゆっくり、動く瓦礫に近づいた。

 近づきながら、ピッケルを大きく振り上げる。


カンッ


 サンの持つピッケルの先に、何か…お化けのようなものが付いている…いや、刺さっていた。

 金属片を身に纏っているようだ。

 まるでミノムシ…。


 化け物は暴れ回る。


 その金属光沢のある幽霊のようなものは、自力でピッケルから自分を解放した。

 それから、しばらく走り回り、離れていった。


「逃げた…?」


「あいつは逃げない。

 しばらく離れた後、不意打ちで襲ってくる。」


 サンは、金属光沢の幽霊が遠くへ行くのを見ると、また瓦礫をガザガザと集め始めた。


 …戦闘中なんですが。


「あの…、ゴミ集め…とは一体何のためにしているのですか?」


「見れば分かるだろう、片付けるためだ。」


 サンは、私の質問に愛想なく答えた。

 言葉を発する間もピッケルでコンコンと瓦礫を軽く弾く。

 まるで遊んでいるかのようだ。


 そうして瓦礫の大きな山を作る。

 ある程度大きな山になった。

 サンは、山を完成させるとどこかへ行く。

 …ついて行った。


「お前、こんなのが楽しいか?」


 サンは言った。

 楽しいわけはない。


「見学をしろと…言われてきたので。」

 

 サンは、ため息をついた。


「ここで一人はいけない。まあ、ついてこい。」



 サンについて、私は歩いた。


















 町じゃないか。帰ってきたのか?


 サンは、ボロい家に入って行った。

 まさか、私を置いて家に帰ったんじゃないのか?



 さすがにそんな事はなく、サンはすぐに外に出てきた。


「とりあえずコレを渡しておく。うまく使えると良いな。」


 サンはそう言うと、私にピッケルを持たせてくれた。

 あれ、もしかして認められた?

 退屈なゴミ集めは、ダミーで…これからちゃんとした仕事をするのか?


 両手でボロいピッケルを持つ。

 かなりずっしりとしている…コレを振るのはなかなかにしんどそうだ。



〈【アイテム】錆びた鉄のピッケル〉



「よし、持ったな。ついてこい。」


 サンがそう言うと、また私はサンに続いて歩いた。








 着いたのは、またあのゴミだらけ瓦礫だらけの灰色い場所。


 サンは、ピッケルで瓦礫を集め始めた。


「どうだ、こっちの方が楽だろう?」


 サンはにっこり笑って言った。

 良い加減にしてほしい。



 私は…とりあえず、ピッケルで瓦礫を弾く。

 サンに負けないくらいの瓦礫の山を作った。



 はあ、道具で瓦礫をかき集めると楽になったような気がする…が、なぜピッケルでなんだ。

 重たい。


 もう、体力の限界だった。

 私は、杖にもたれかかるようにピッケルに支えてもらった。

 持ち手に額をついて、うずくまる。



「あれ、ギブアップ?」


 

 サンが言う。



 とたん、こっちに向かって走り始めた。

 なんだ、煽りにきたのか?私は諦めないからな。


 サンがピッケルを振り上げる。


 あれ、急にどうした。

 ヤバイ、なんで。



「うわっ!」


  カンッッッ



 ピッケルが私の頭を直撃したのかと思った。


 咄嗟にうずくまった私が、サンを見上げると…化け物。


 不意打ちで私を狙っていたのか。


「キィィィィィィ」


 金属片のミノムシのような幽霊は、黒板を引っ掻くような音で叫んだ。

 ヤな音は、両耳を貫くようだった。



  カンッッッ


 サンはすかさず二発目を打ち込んだ。


 …もう、化け物は動かない。










「いいか、これがゴミ集めだ」



 サンは、化け物のドロップ品を持ってきた。

 高純度の鉄の破片と…米粒サイズのマインダイト。


 コレは、かなりの高級品ではないか!

 何がゴミ集めだ!


 …マインダイトは、武器に魔法を付与するための重要な物質だ。

 入手が困難な割に需要が大きいのでとても高価な物なのだ。



 サンは、高級品を雑にズボンのポケットへと突っ込んだ。


「あーあ、そんな何回も会う敵じゃ無いのに。

 今のタイミングで会うだなんて運が無いものだ。」


 サンは言った。


「本当は、ゴミ集めだけして諦めさせようとしたのにさ。」


 やっぱりそうだったか。

 ゴミ集めなんかが、興味深い仕事なわけないじゃないか。


「ここの廃墟ならどこでも、さっきみたいのが現れる可能性がある。

 もし現れたらそいつをコイツでガツンとやっつけるんだ。」


 サンはピッケルをブンブン振りながら言った。

 かなり、簡単そうに言うが…私初心者ですよ。

 できるわけがない。


 私も、ピッケルを振ってみた。

 やはり重い。

 遠心力で自分が、振り回されてしまう。


「はあ、しょうがない。

 君、また明日ここへ来るといい。

 本当の仕事内容を教えてあげよう。」


 サンはそう言った。

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