第74話:どうやって役に立ってくれるのかな?
「えええええっ!!」
クレーザーの悲鳴が響いた。
朝一番の仕事を終えた後の朝食の席である。
ところでカカオ家のダイニングは狭い。元々一家四人のためのダイニングであったから。基本四人、椅子をつめてなんとか六人といったところである。
よって今日のカカオ家の朝食はクレーザーとウニリィ、サディアー夫人、それと客人であるマグニヴェラーレの四人が席についている。
今日の食事を作っているのは村の奥様である。カカオ家の食事の用意したり清掃したりという、いわゆる使用人としての仕事をしてもらっているのであるが、 これは村人たちに歓迎されていた。
農業の収入は収穫後に限られるため、短期間の労働でちょっとした現金収入を得られるというのは村では珍しいのである。
「お父さん、もうちょっと落ち着いて」
クレーザーの向かいに座っていたウニリィが言った。
「ってもなあ……ああ、すみません」
クレーザーの隣に座るサディアー夫人も耳を押さえていた。クレーザーは謝罪する。
クレーザーが驚いているのは、ウニリィが黄色と赤のスライムから何かしたいという話を伝えられたためである。
マグニヴェラーレが言葉を継ぐ。
「私としても、スライムたちの能力を確認しておきたいのです」
「はぁ、左様ですか」
「魔術師でもある私と、銅級のテイマーであるマサクィ氏もいる今こそ、そういったことを試すのに向いているかと」
ちなみにこの場にはマサクィたちはいない。
最近、この家の外側に簡単な屋根だけの東屋が建てられ、そこで朝食を食べている。もちろんダイニングが狭いせいもあるし、貴族としては主人家族と使用人が同じ場所で食事をすべきではないとナンディオやサディアー夫人に指導を受けたためでもある。
そちらにはマサクィとセーヴン、今日食事を作ってくれた奥様、それと朝起きて来れなかったテイマーギルドの若者たちがいる。
彼らは食事をしながらマサクィに説教されていることだろう。
「……うーん、そうですな」
クレーザーは唸り、悩み、結局その言を受け入れた。
スライムのわがままなら退けられても、ウニリィの後援者であり、上位の家格の貴族の要求もあれば結局受け入れざるを得ない。
というわけで、食後、ウニリィとマグニヴェラーレ、クレーザーとマサクィの四人が牧草地に立った。マグニヴェラーレはいざという時のために杖を携帯している。
ふよふよ。
彼らの前には黄色いスライムと赤いスライムたちがうごめいている。アース・エレメンタル・スライムとファイア・エレメンタル・スライムである。
セーヴンと新人テイマーたちは青いのと緑色のを連れて散歩に行かせている。
ウニリィがぴっと手を上げた。
「じゃあはじめまーす」
「うぇーい」
マサクィが拍手を送る。
ふるふるふるふる。
スライムたちが返事をするように期待に揺れた。
「お父さんとも相談したけど、なんかするのは順番にやってもらおうと思いまーす」
クレーザーは頷く。まあ同時にやるはずはないので当然の話である。
「えっとー、火は危なそうなので、黄色からやってもらいまーす」
ふるふるふるふる!
やったー、と黄色いアース・エレメント・スライムたちが身を跳ねさせる。
ふにゅーん……。
赤いのが残念そうに、へにょりとへこんだ。
「ほら、また今度やるからね?」
ウニリィが赤いのを慰めると、彼らはぷくりと元に戻り、うにょうにょと厩舎の方へと戻っていった。
牧草地には黄色いのたちが転がっている。
「アース・エレメント・スライムですね。野生のものは泥の中に身を潜めて獲物に襲いかかると言いますが」
「泥や砂、石などを吹き付けてくる能力を持つのもいるっすね。飛び道具で厄介っス」
マグニヴェラーレが口を開き、マサクィが言葉を続けた。
単体では大した脅威ではなく、炎を出すファイア・エレメント・スライムの方が危険であろう。だが他の魔獣との戦闘中などに泥に足を取られたり、目に砂が入ったり、あるいは行軍中に糧食を泥だらけにされるなど、非常に嫌がられる魔獣でもあった。
ウニリィはかがみこんで、黄色いのの一匹を持ち上げる。
「どうやって役に立ってくれるのかな?」
とはいえ、あくまでもここのスライムはウニリィの役に立ちたいのである。そういうことをする訳ではない。彼らが何をするのか、マグニヴェラーレたちの興味もそこにあった。
「みんなくっつく必要ある?」
うにょん。
「このままでいいんだ」
進化する必要はないようである。
ふるふる。
「土を……良くする……?」
ふにょん。
スライムは形を変えてウニリィの手の中から滑り落ちた。
そして牧草の上に落ち……ずにそのまま地面の中に染み込んでいった。
「ええっ!」
他のスライムたちも地面の中に消えていった。
牧草地のスライムは一匹もいなくなり、風がざわざわと草を揺らす。
「どうなったんだ?」
クレーザーが尋ねる。
「なんか、土を良くするって潜っていっちゃった」
土を掘ってみても、スライムの姿は見えなかった。これではウニリィたちにはどうすることもできない。
そして翌朝の四時である。
「ええええええええっ!」
ウニリィの悲鳴が、早朝のエバラン村に響き渡った。
ξ˚⊿˚)ξ週末出てて暑さにやられたり、ちょっと仕事ばたばたで昨日は更新できませんでしたよ。
今週の更新は1日ずつずらして、火木土でお願いしますー