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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!  作者: ただのぎょー


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第64話:肉持ってきましたわ!

「来ちゃったじゃねえんだよなドリー、何かあったか」

「ジョーに会うために決まってますわ!」


 そう言ってアレクサンドラは馬車の上から手を伸ばした。

 ジョーのごつごつとした手がそれを支え、彼女は馬車から飛び降りた。豊かな胸がばるんと揺れて、兵士たちがおお、とどよめいた。

 どう考えても公爵家の令嬢が来てよい場所ではないが、これでもアレクサンドラがジョーのいる部隊のところにやってくるのは数度目なのである。

 そして彼女は部隊の者たちに非常に人気があり、敬意を抱かれていた。それは彼女の美しさもあるし、部隊の長であるジョーの彼女であるということが知られているのもあるが……。


「皆様! 肉もってきましたわ!」

「いやったー!」

「姐御! 酒は!?」

「無論、樽でありますわ!」

「さっすがー!!」


 兵士たちは大盛り上がりである。

 アレクサンドラがジョーに近づくのは遊びではないのだ。本気で彼の役に立とうとし、父や家門の者を説き伏せて、軍の食事や装備を管理する輜重しちょう部隊に身を投じたのであった。

 そこで元々が貴族や騎士階級でないジョーの部隊が、軍の中でその戦果に反して冷遇されているのを知り、私財を投じてジョーの部隊を援助しているのである。

 兵士からも人気が出ようというものだ。

 兵士たちはわらわらとアレクサンドラの連れてきた輜重の馬車に向かい、自主的に積荷をおろす手伝いを始めた。今夜の飯は豪華になることだろう。

 ジョーはアレクサンドラの手を引き、ナンディオを連れて自らの天幕に向かう。


「んでドリー、用件は?」


 もちろん、会いたかった以外の用があるのも彼にはわかっているのだ。


「その前に!」


 だがアレクサンドラは両手を広げる。


「はいはい、お姫様」


 ジョーはアレクサンドラを抱きしめた。

 んふー、とアレクサンドラは満足げに笑みを浮かべる。

 ジョーのハグは当たり外れが大きいと彼女は考えている。つまり、鎧を着てれば硬いし、訓練の後は汗をかいているのだ。ジョーは体臭がきつくないが、汗だくになるまで棒を振っていることが多く、ドレスがびしょびしょになったこともある。その時は後でメイドに怒られたものだ。

 ともあれ、軍議の後で鎧を着ておらず、棒振りも始めてすぐのところだったので汗もかいていない。今日は大当たりだった。

 アレクサンドラは名残惜しげに離れると、天幕に置かれた椅子に座る。


「今日は個人的な調査と報告に参りましたの」

「外していた方がよろしいですか?」


 ナンディオが問うが、アレクサンドラは首を横に振る。


「ノヒトー卿にも関係あることですの」

「ほう」

「ジョーのお父さまと妹さんについてですわ」


 なるほど、クレーザーがカカオ男爵となると話に行ったのはナンディオであるし、関係あることであった。


「へぇ。そいつは興味あるな」


 ジョーは笑みを浮かべる。

 キーシュ家は戦争中であることに配慮し、当主筋は社交に参加していなかったが、家門の全てが社交界に出ていないわけではない。分家や配下の貴族は社交界に出ているし、そこでの出来事はしっかりと報告されているのである。


「それでですね、妹さんなのですが」

「おう、ウニリィか」

「社交シーズンの最初、陛下へのお目見えの場でですね」

「うんうん」


 国王陛下に挨拶する場である。もちろんジョーもこなしている。その時は自分でも礼儀作法に不足はあったと思うが、失態を犯したということもない。自分よりしっかり者のウニリィなら、そつなくこなしただろう。どちらかというと緊張しいな親父の方が心配だなと思っていた。

 だがアレクサンドラはこう続けた。


「投獄されまして」

「は?」

「え?」


 というわけでアレクサンドラの口から、王国始まって以来の社交界デビューの珍事とその後の顛末が語られたのであった。

 ジョーは大笑いし、ナンディオは額を押さえて嘆息した。


「うわははははは」

「もーですわよ、もー」


 アレクサンドラは不満を口にする。


「せっかくウニリィさんには派閥の優秀な殿方を紹介しようと思ってましたのに!」


 ジョーがアレクサンドラと縁付くなら、普通は一家ごと派閥に入るものである。


「ドリー、うちの妹や親父殿がそんなのわかるわけないだろう」

「せっかくのわたくしの義妹が、ミドー家の魔術バカに!」


 王家と両公爵家は初代王ファミリアスの血縁として仲が良いが、派閥としては別である。

 ジョーにはその辺の機微はわからない。マグニヴェラーレという男も宮廷魔術師として従軍したことがあったため、有能な魔術師だったという印象くらいはある。人となりまではわからないが、それでもこう言った。


「まあ、魔術バカくらいの方が、気が合うかもしれんよ。親父もウニリィもスライムバカだからな」

「そうかしら?」

「……そうかそうか。それはぜひとも帰ってウニリィを笑ってやらねばならないな」

「そうだな」


 ナンディオが神妙に頷く。

 アレクサンドラは違和感を覚えた。稀代の戦士、英雄たるジョーがこういう言い方をするのは珍しいことだ。だから彼女は尋ねた。


「……軍に何か問題がありますのね? 仰ってくださいまし」


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― 新着の感想 ―
ばるん……
何と優秀な嫁( ˘ω˘ )
肉と乳!
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