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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!  作者: ただのぎょー


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第63話:鉄床作戦……?

ξ˚⊿˚)ξこの話はチートなスライムテイマーであってますよ!

 イエッドニア王国と隣国であるノイエハシヴァ王国との戦争は、短い休戦・小康状態を挟みつつ数十年もの長きに渡り続いている。

 両軍はセーキフィールドの東西に布陣し、互いに睨みをきかせている。

 ここはその東、イエッドニア王国の天幕である。


「鉄床作戦……?」


 天幕の中央に置かれた円卓の一席、まだ二十歳前後の青年がそう声を放つ。

 この円卓に座するはイェッドニア王国軍部の重鎮たちである。男の年齢は彼らの半分かそれ以下であろう。

 正面の男、ベアーモート伯爵が頷きを返す。彼の背後には王国旗、つまりこの軍における総指揮官であった。


「左様、ジョーシュトラウム卿には軍略は分からぬか?」

「いや、ベアーモート閣下。確かに戦略レベルのことは俺には分かりませんがね、戦術なら分かりますよ。要は一種の挟み撃ちでしょう」


 ジョーはポケットからクッキーを取り出すと、左手の上に載せ、右手を握ってそこに振り下ろした。クッキーは左手の上で砕けた。両手をイエッドニア軍、クッキーをノイエハシヴァ軍に見立てているのだ。

 ただ彼が、なぜ軍議にクッキーを持ち込んでいるのかは謎である。


「んで、誰が槌をやるんで?」

「我々がやろう」

「へえ?」


 ジョーは薄らと笑みを浮かべた。


「御大将が自ら動かれますか。我々は?」

「鉄床を命ずる」

「ほほう」


 どうにも反応の軽いジョーの態度に、周囲の将兵たちはいらいらとした視線を向けるが、ジョーはどこ吹く風である。


「敵方はそれで食いついてきますかね」

「英雄たる貴君が正面にいれば、相手も必死に攻めるだろうよ」

「御意」


 軍議はその後も続いたが、ジョーはそれ以上は特に話すこともなく、クッキーをぽりぽりと摘みながら話を聞いていた。

 軍議の後である。会議用の大天幕から、彼の率いる部隊に戻ったところで、ジョーの副官であるナンディオが話しかけた。


「ジョー殿、これは奇妙な話だぞ」


 彼は副官として先の会議に出席し、ジョーの背後で発言せずに控えていたのだ。


「わかってるさ、ナンディオ。棒を」


 ジョーは小姓の差し出した棒を受け取ると、その場で振り始める。


 ぶんぶんぶん。


 周りにいる彼の部下たちも特に何も言わない。幾人かは立ち上がってジョーの横で剣の素振りを真似するように始める。

 ナンディオもジョーが棒を振りながらでも話を聞いているのはわかっているので、気にせず話し始める。


「鉄床作戦というのは軍を鉄床と槌の二つに分けるということだ。それぞれの役割は違うし、向き不向きというものがある」

「ああ」


 軍というものは常に正面が強く、側面や背面からの攻撃には弱いものだ。よって、包囲や挟み撃ちというのは非常に有効である。

 だが、当然相手だってそれはわかって軍を動かすのだ。事はそう単純ではない。

 鉄床作戦でいえば、まずは部隊の半分を敵の後方に送り込む必要がある。こちらが槌であるが、この軍には機動力と突破力が求められる。よって騎兵などがそれに当たるのが適正だ。

 そして残りの半分は敵を正面から当たって止めねばならないのだ。それこそ鉄床のように丈夫でどっしりとした軍が必要であり、重装歩兵などがそれに適している。

 ジョーは棒を振り回しながら、自らの部下たちに視線をやる。


「簡単に食い破られそうだな」


 はぁ、とナンディオはため息をついた。

 ジョー自身の出自が農民上がりであるせいで、彼の部下たちも元農民・奴隷・囚人……良くて貧乏騎士や貴族の五男とか家督を継ぐ見込みのない者である。


「言い方は悪いがその通りだ」

「隊長も副長もひでぇ」


 横で聞いている部下たちはそう言われてもげらげら笑っている。

 彼らは品はないが勇猛ではあった。彼らは戦果を上げているが、それは機動力を生かした戦い方である。

 鉄床役、つまり平原で正面から当たって耐えるというような戦いは不向きなのだ。


「鎧はクソ高いからな。仕方ない」


 金属製の鎧一式は、まあ値段は青天井であるが、安くとも平民の家なら十軒は建つ。

 ジョーの部隊でそれを着ているのはナンディオだけで、兵たちは硬く煮込まれた革鎧を、一部金属で補強してある程度のものであった。


「ベアーモート伯も、いい加減に俺たちが目障りらしいな」

「ちげえねえや!」


 兵士たちが笑う。

 ポッと出の平民がトントン拍子に戦果を上げて、この戦が終われば伯爵に叙される予定すらあるというのだ。

 つまりベアーモート伯爵と同格になるという訳である。さすがに認め難く、この戦で名誉の戦死を遂げたということにしたいのだろう。


「困ったもんだな」


 ジョーが呟いたその時であった。


「ジョー!」


 この場には似つかわしくない若い女の声が響いたのは。

 ジョーに以前命を救われた、キーシュ公爵家の姫、アレクサンドラであった。


「ドリー! どうした?」

「えへへ、来ちゃった」


 アレクサンドラはそう言って笑みを浮かべるのだった。



ξ˚⊿˚)ξ何話かジョーの話しますわ!

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来ちゃった⭐︎
来ちゃった(戦場)
姫様来ちゃった、嫌がらせ伯どうする!?
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