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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!  作者: ただのぎょー


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第59話:なにしてんの!?

 カラカラ、カラカラ。


 馬車の車輪が石畳を叩く。

 昨日はクレーザーも昼過ぎに起きて、午後は少々買い物にも出かけた。スライムの餌の発注や、研究書などを購入したり、例によって村の者たちへの土産を買ったりである。

 とはいえ、前回王都に来てからそんなに時間が経っていないし、今回の王都滞在は急に予定より期間が短くなった。そこまで多く買い込んだわけではない。

 荷馬車を借りることはなく、王都に来たときの馬車にはクレーザーとサディアー夫人が乗り、あいたスペースに荷物を積んでいる。

 スペースがあいているのはサレキッシモが出かけているのと、ウニリィがマグニヴェラーレの馬車に同乗しているためだった。


「……ぬーん」

「どうされましたか?」


 ウニリィが唸り、マグニヴェラーレは向かいに座る彼女を案ずる声を発した。

 ウニリィは首を横に振る。彼女の抱えるスライムもふるふる揺れた。『正面にイケメンがいるのは落ち着かないのです』とは言えないのである。

 問題があるわけではなさそうなので、マグニヴェラーレは懐からペンと羊皮紙を取り出す。


「ちょっとだけ仕事をしてしまいますね」

「あ、はい」


 マグニヴェラーレはさらさらと書き物を始めた。

 馬車のつくりが良くて揺れが少ないとはいえ、よくこんなところで字が書けるなぁとウニリィは感心する。酔わないのかなあ。


「お忙しいのですか?」

「いえ、そういうわけでもないのですが、急に予定を変更したので」


 彼はそう言うが、宮廷魔術師の次席ともあろう者が暇なはずはないのだ。

 ウニリィが邪魔をしないよう黙っていると、マグニヴェラーレは笑みを浮かべる。


「話をしても大丈夫ですよ」


 どうやらウニリィとは頭の出来が違うらしい。彼女は尋ねる。


「何を書かれているんです?」

「あなたとスライムの今までにおこした事件についてのレポートですよ。口頭での報告は行ないましたが、書面はまだなので」

「ご迷惑をおかけしています……」


 ふるふる。


 ウニリィと青いスライムは頭を下げた。

 二人は話し、その間もマグニヴェラーレの右手は休みなく動き続けていた。そのうちに、マグニヴェラーレは書類を確認しはじめた。


「終わったのですか?」

「ええ、最後に……」


 マグニヴェラーレは馬車の側面の窓から書類を投げ捨てた。


「ええっ!?」


 慌てふためくウニリィの視線の先で、羊皮紙は勝手に折れ曲がると小鳥となり、王城へと向かって羽ばたいていった。


「……ええっ!?」


 ウニリィはマグニヴェラーレを見てもういちど驚いてみせた。


「魔術師ですから」


 彼はこともなげにそう言う。一流の魔術師は書類を鳥にしてしまうらしいとウニリィは知った。


「それよりもうすぐスナリヴァですよ」

「わかるんですか?」


 確かに王都はもう出ているし、時間的にはそんな頃かもしれない。だが馬車の窓は側面にしかなく、前方は見えないのだ。しかもマグニヴェラーレは外を見ている様子もなかった。


「ええ、魔術師ですからね」


 マグニヴェラーレは軽く肩をすくめた。

 普通であればそれで話は終わりというか、それ以上追求されることはない。魔術師や手品師がその商売のタネを明かすことはないので。


「……」

「……」


 だが、ウニリィが興味深そうにじいっ……とマグニヴェラーレを見つめ続けるので、彼は居心地悪そうに身じろぎする。


「……〈魔法の目〉という魔術があるのですよ。水晶球に魔法をかけて飛ばしているのですが、それが見ているものが私にも見えるのです」

「馬車の外に水晶を飛ばしているんですか」

「そうですよ」


 そして仮にここまで言うと、大体は嫌悪するか怯えられるものである。人に見えないものを見て、聞こえないものを聞く。あるいは秘密を、心を暴く。人はそういったものに恐怖するのだ。特に陰謀を張り巡らせているような貴族や商売の秘密を抱える商人たちはそうだ。


「すごーい!」


 だが、ウニリィは純粋に驚き、賞賛してみせた。媚びている様子もない。

 マグニヴェラーレにとって、それは新鮮な反応であった。

 一行はスナリヴァの宿場町で軽食をとるなど休息をとって、再び出発する。

 街道を外れると道が細くなり、人や馬車の数も減る。周囲には田畑が広がってのどかな様子である。


「もうすぐ着きますよ」


 しばらくしてウニリィが言った。地元であるから、馬車の正面が見えなくてもすぐにわかる。スタンダイ川なる小川にかかる橋を渡ればエバラン村の領域だ。


「そうで、すか……」


 マグニヴェラーレの声が途中で一度途切れ、困惑したように止まる。

 ウニリィが首を傾げ、マグニヴェラーレは尋ねた。


「エバラン村では、気球の開発が行われてますか?」

「ききゅー?」


 軽い気体を集めることで魔術に頼らず空に浮く、あるいは魔術で飛行する補助とするという技術は、最近開発されているものである。ウニリィも名前くらいは聞いたことがある。当然、見たことはない。ましてやエバラン村でなど。


「いえ、緑色の球体が浮遊しているのが見えるのですが」


 ウニリィは、はっとして窓から身を乗り出した。慌ててマグニヴェラーレが彼女の体を支える。

 ウニリィの視線の先には巨大に膨れ上がったウィンド・エレメント・スライムがエバラン村の上空でふよふよと浮遊している。


「ちょっと! なにやってんの!?」


 ウニリィの声にスライムは、やべっ。とでもいうように身を震わせた。

ξ˚⊿˚)ξ前話のサブタイトルつけ忘れてたので編集しました。内容は変わってません。


ξ˚⊿˚)ξそれと、来週ですね!


7/15火曜日


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ξ˚⊿˚)ξよろしくお願いします!!!

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― 新着の感想 ―
目を離すとすぐこれだwww
ヤマツカミだ! 気絶死川物騒だなと思いました。
かーちゃんにイタズラ見たかったみたいな反応w
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