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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!  作者: ただのぎょー


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第51話:これは革命では……!

 マグニヴェラーレは警備兵に、引き続き周囲の警戒と監視に当たるよう指示する。スライムが被害を出さないよう、また人が近づかないようにということである。


「スライムが人に危害を加えない限り、積極的排除はしなくてよい」

「はっ」


 幸い、警備員たちもスライムをまだ殺していないのだ。

 スライムがふらふらしているだけで攻撃性がなかったことや、警備員としても数が多すぎて手出しがためらわれたのがこの場合は幸いした。


「そりゃっ!」


 別の警備員がスコップを振っている。

 隣の屋敷などに侵入しようとしたスライムをスコップで大通りに追い返しているのだ。

 スライムは地面にべちゃりと潰れて、ふるふると身を震わせて元に戻る。

 楽しそうに見えるのは何故か……とマグニヴェラーレは考え、頭を振った。そんなことを考えている場合ではないのだ。


「このスライムを使役しているテイマーが戻っているから、事態は解決するはずだ。もう少しこらえてくれ」

「先ほどのお嬢さんですか」

「ああ、私は彼女につく」


 そう言ってマグニヴェラーレはウニリィに視線をやる。

 彼女は言った。


「スライムたちはですね……全員酔っ払いです」


 何を言ってるんだと思ったが、どうも留守番をしていた従者風の男がスライムに酒を飲ませた様子である。

 ウニリィは足元にいくらでも転がっているスライムの一匹を持ち上げると二、三言葉を交わす。

 そもそもが低級の魔獣であるスライムと会話によって意思疎通が図れるというだけでも、マグニヴェラーレからすれば意味がわからないところではあるのだが……。


 ぱぁん!


 彼女が手を叩き、戻ると指示を出せば無数のスライムがそれに従っているのを見れば疑いようもない。

 彼女はじゃぶじゃぶとスライムをかき分けるようにして屋敷に戻った。

 スライムの消化液は強力だ。万一、この量のスライムに襲い掛かられたら骨も残るまい。にもかかわらず彼女は恐れる様子も見せず、その中に踏み込んでいく。

 マグニヴェラーレは自身に防御の魔術をかけて、彼女の後を追う。

 だが屋敷の中はさらにスライムが密集していたため、マグニヴェラーレは外で待たざるをえない。

 遠耳の術を使って、屋敷の中の様子に耳をすませば、もーもーと唸りながら進むウニリィの声と、サレキッシモなる従者がスライムに酒を飲ませたことを謝罪した。


「しゃきっとしなさい!」


 ウニリィがそう言った時である。

 マグニヴェラーレの足元にもいるスライムたちが一斉にぶるりと揺れた。


「ほら、お酒飲んでそんなになってるんだから、お酒の成分を取り除けばいい、できるでしょ?」


 何を無茶言ってんだこのお嬢さん。とマグニヴェラーレは思う。


 ふるふるふるふる。


 だが、スライムたちはその指示が理解できるようだ。

 今まではどこかゆらゆらと不規則な揺れをしていたのが、揺れに統一感のようなものがある。

 そして彼らの表面が妙に艶やかになった。汗で濡れているかのように。


「……ちょっと失礼」


 マグニヴェラーレはかがみ込み、スライムの表面を指で撫でた。


 ふよん。


 スライムの形が変形して戻る。

 ……表面が濡れている。その液体のついた指を慎重に鼻に近づけた。

 ワインのような芳醇な香りではなく、鼻をつく匂いがする。だが酒精の強さはワインの比ではなく、ウィスキーなどの蒸留酒かそれ以上かもしれない。

 魔術で毒性を調べ、問題ないと確認して舐める。


「……これ、ひょっとすると大きな商機なのでは?」


 マグニヴェラーレは戦慄を覚えた。

 スライムに酒を摂取させて、より濃度の高い酒精が取れるというなら、それは設備も使わず蒸留かそれ以上のことができているということだ。

 酒造業などに革命がおきるかもしれない。


「はい、おいでおいで」


 マグニヴェラーレの足元からスライムが引いていく。潮が引くようにどんどん屋敷の中に吸い込まれていくように移動しているのだ。

 マグニヴェラーレは思わず後を追った。酒精の香りが強い。部屋の中からはウニリィの声が聞こえている。


「ほら、邪魔だからみんなくっついてくっついて」


 ふよふよ、うにょうにょ。


 これはスライムに関する大発見かもしれぬ、ウニリィ嬢とスライムの新たな可能性について相談せねばと考えていたマグニヴェラーレであったが、部屋の中を見て、その考えは衝撃により一瞬で吹き飛んだ。

 彼は思わず叫ぶ。


「なんだこれはっ……!」


 卓の上で正座するサレキッシモ。その前に立つウニリィ、そして部屋の大半を占めている一匹の巨大な青いスライム。


「あっ」


 ふよん。


 巨大なスライムが波打つように体を揺らした。魔術師であるマグニヴェラーレには、はっきりと感じられる水属性の強大な魔力。


「まさかスライム王!?」

「ちちち、ちがいますよー!」


 ウニリィは慌ててスライムを隠すようにマグニヴェラーレの前に立った。

 だが、スライムの巨体は全く隠せるようなものではないのだった。


 ふよん。

ξ˚⊿˚)ξはい。というわけで、連載は毎週月水金の週3回で継続する予定ですー。よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
離れた場所にいるスライムにもウニリィの指示が通ってるけど、伝言ゲームみたいに伝わってるのか、スライムが意識を共有してるのか、テイマーと魔獣の繋がり的なやつなのか、ウニリィがクソデカボイスなのか、どれや…
スライム濃縮 あっ、医療とか工業でアルコール使われるようになったらとんでもない大富豪ですよ。
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