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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!  作者: ただのぎょー


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第39話:なんでもしますから!

 ウニリィの手首を掴んだ貴族らしき青年は困惑した様子で周囲を見る。

 視線の先の衛兵たちも困惑した様子だ。よもや脱走しようとしているとは思わないので当然だが。


「この件については口外を禁ずる。上にはこちらから報告しよう。悪いようにはしない」

「はっ!」

「尋問はせねばなるまい。取調室の用意は」

「問題ありません」


 脱走されかけたとなると兵士や牢番の責任問題にもなりかねないのである。マグニヴェラーレの言葉は渡りに船であった。また、城の外で吹聴されれば王城の警備が疑問視されかねない。話すことが禁じられるのも当然である。


「ウニリィ・カカオ男爵令嬢だな?」

「ひゃ、はい!」

「貴女も不用意な言動は慎まれるよう。行きますよ」

「あ、あ。ちょっとお待ちください!」


 胡乱な視線を向けられ、右手首を掴まれたまま、ウニリィは逆の手で鍵穴に刺さっているスライムを引き抜き、小脇に抱える。


「はい」


 ふるふる。


 鍵のような形をしていたスライムがカガミモツィのような形に戻ってふるふるゆれる。


「……はいではないが」


 マグニヴェラーレはため息をついて歩き始めた。ウニリィの手首は掴まれたままだ。

 ウニリィも兵士たちもぞろぞろとついて歩く。階段をおりて塔の下の階の部屋に通される。

 椅子と机があるだけの無機質な部屋だ。取調室だろう。

 ウニリィは部屋の奥の椅子に座らされ、男が向かいに座る。部屋の隅と入り口に兵が一人ずつ配され、残りの兵士は部屋に入ってこなかった。


「改めて名乗ろう。オーウォシュ子爵、マグニヴェラーレだ」

「ウニリィ……、カカオ男爵家です」

「宮廷魔術師としての権限で取調べを代行する」


 宮廷魔術師! ウニリィはびっくりした。魔術師としてのエリート中のエリートである。

 部屋の隅にいった兵士がペンを手に言葉をさらさらと書き留めている。書記役なのであろう。

 マグニヴェラーレはウニリィを安心させるように笑みを浮かべた。


「まず、最初に伝えておくが貴女に厳しい処罰を加える気はない」

「ええっ!」


 ウニリィは驚愕した。


「王様の前でスライムを出したから処刑されるって!」


 マグニヴェラーレは額を押さえる。


「……誰に吹き込まれた」


 ウニリィが昨日の宵のことを話せば、マグニヴェラーレは背後の兵士と言葉を二、三かわしてウニリィに向き直る。


「貴女は牢番にからかわれたのだよ。彼には指導がなされるであろう」

「はい」

「実のところ陛下からは謁見の間でスライムを出した件について、条件付きで不問とすると言葉を預かっている」

「本当ですか!」


 マグニヴェラーレは頷いた。つまり、ウニリィが脱走したのは全くの無意味である。

 ウニリィは、はぁ、と安堵して息を吐き、膝の上に置いていたスライムを撫でる。


「陛下は寛大にも、ご自身の言葉が誤解を招くようであったと仰っていた故にな。だが、そもそも貴女がスライムを隠し持っているとは誰も思わなかったのだ。なぜ持っていた?」

「えっと……」

「尋問である。正直に」


 ウニリィはスライムをぎゅっと抱えた。むにょん、とスライムが変形する。


「え、謁見とかすごい緊張するんです……。わたし、スライムとずっと一緒にいたので、一緒にいれば緊張が抑えられると思ってつい……」

「……成程」


 言い分は分からないでもない。自分とて魔術師としての杖を持っていると落ち着くというのはある。だからといって魔獣を持ち込まれるのは普通ではないが。


「閣下」


 衛兵が小さく手をあげて声をかける。


「どうやってスライムを牢に持ち込んだかを……」

「うむ。昨日、塔に入る前にスライムを兵に預けたと聞いているが、なぜ今もスライムを持っている? 二匹いたのかね?」

「いえ、あのですね……。スライムのゼリー部分だけを渡して、核の部分は私のドレスの中に隠れていて……」


 マグニヴェラーレは再び額を押さえる。兵士も口には出さないが、その表情は明らかにマジかよ、と言いたげであった。


「それで持ち込んだスライムを使って、脱走を図ったと」

「はい……」


 マグニヴェラーレはウニリィの抱える青いスライムを指差す。


「それはただのスライムではないな?」

「水のエレメント・スライムというそうです」

「それにしたって能力が高すぎる」

「えっと……愛を込めて育成していれば……」

「……愛」

「賢くなったり……?」


 なるほどこれがスライムの申し子か、とマグニヴェラーレは思う。彼は話題を変えようと咳払いを一つ。


「先ほど、条件付きで不問と言ったが」

「はい」

「私が貴女の後見人になるというのがその条件だ」

「後見人」

「保証人といっても良い」


 ウニリィは考える。つまり、謁見の間で不法行為を犯した自分を保釈するには、後ろ盾が必要となるのだろう。


「……それはありがたいお話ですけども」


 そう言ったところでため息をつかれる。

 顔を上げれば彼は指を折って数えるような身振りをしながら言った。


「だというのに牢にまでスライムを持ち込むわ、牢からの脱走まで企てるわ……」


 ウニリィはがばりと立ち上がって、勢いよく頭を下げた。


「申し訳ありませんでした!」

「そうだな」

「お許しください! なんでもしますから!」


 頭上からふっと、笑われる気配がした。


「今、なんでもしますって言ったな?」


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― 新着の感想 ―
また君か(常識が)壊れるなぁ( ˘ω˘ )
スライム大国になってしまう!
言質取られとるやん^^;
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