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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!  作者: ただのぎょー


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第28話:ふよんふよんふよんふよん。

 ウニリィは唇を舐める。口中が渇くのを感じ、ため息をついた。


「緊張しているね?」


 サレキッシモが問う。


「僕たちには聴衆が芋とでも思えなんていう言い方があるけど、君の緊張はそういった類のものではあるまい」


 彼はウニリィの背後に立っている。それでも彼女の緊張を感じ取ったのは吟遊詩人という職ゆえか。

 かつてスライムの進化によって、ウニリィは身体に消えない傷を負った。だがそれ以上に心に傷を負っていたのだ。

 つまり、人を傷つけた魔獣は処分されなくてはならないということだ。ウニリィが不用意に進化させてしまったスライムは、クレーザーが殺さなくてはならなかった。


「音楽だって一度演奏に失敗した曲には苦手意識がつく。だが、その練習を続けることで、二度と失敗しないと自信を取り戻すことが……」

「大丈夫です」


 ウニリィはサレキッシモの言葉を遮った。


「ありがとうございます。でももう二度と失敗はしません」

「ならいいさ」


 そう、父にもスライムたちにも申し訳ないことをしてしまった。だけどもう、そんなことは起きない。起こさせやしない。ウニリィはそう決心し、スライムたちに語りかけた。


「みんな」


 スライムたちはぴたりと動きを止める。


「大好きよ」


 ふるふるふるふるふるふるふるふる。


 スライムたちは身を激しく震わせる。

 そしてその言葉が合図であったかのように、同じ色のものたちが体を重ねはじめた。押しつぶされるように、しかしそれはつぶれるのではない。体の境を失って一つになるのだ。

 そして重なって一つになったスライム同士が、さらに重なり合って一つになる。

 千が百に、百が十に、そして十が一に。

 大まかな色ごとに集まり、融合したスライムたちは、牧草地にたった四匹だけになった。

 赤、青、黄色、緑。夕陽にその体を煌めかせる。だが……。


「いや、でっっっっっか! ウッソやろ!」


 マサクィが叫ぶ。


「これは……」


 ナンディオはウニリィが万が一襲われた時に庇うため盾を構えていたが、それを握る手に力がこもった。


「はは、これは凄いものを見れたね」


 サレキッシモが乾いた笑い声をあげる。


「えーっと……」


 彼らの視界を埋め尽くしていたスライムたちはいなくなった。

 だが、巨大なスライムが視界を遮っていた。


 ふよん。


 透き通った美しい色だ。


 ふよん。


 形は変わらない。カガミモツィのようであるが、もはや誰もそうは言わないだろう。


 ふよん。


 その体高は体格の良い騎士であるナンディオよりも高く、その横幅はさらにその倍はあるためだ。


 ふよん。


 その体の中心、本来なら核があるところは、まるで巨大な宝石の結晶のように光を放っていた。


 ふよんふよんふよんふよん。


 巨大なスライムたちが揺れている。


「随分、立派になったわね」

「え、そんな軽い感じ!?」


 ウニリィの言葉に、マサクィは思わず反応した。


「待って、ウニリィさん待って、落ち着いて。ステイです、ステイ」

「はい、ステイ」


 落ち着いてないのはマサクィさんの方だと思うんだよなあと考えながら、ウニリィは続く言葉を待つ。


「い、いま、多段進化しましたよね?」

「んー?」


 ウニリィは首を傾げる。


「なにそれーって反応!」

「いやまあ、言葉の意味はなんとなくわかりますが、そうなんですか?」

「いや、融合したスライムが再融合してましたよね! 何があるとあれだけいたスライムがたった4匹にまとまるんですか!」


 ウニリィは頬に手を当てる。そんなこと言われましても、という感じだ。


「いや、これは恐ろしい。実際、こう相対していても凄まじい力を感じますよ」


 ナンディオが呟く。

 ウニリィはちらりと背後を見た。クレーザーは驚いている様子だが、恐怖している様子はない。サレキッシモやセーヴンの表情は緊張に固まっている。

 ウニリィたちはスライムの主人だから感じないが、この大きさのスライムには威圧感があるのだろう。


「い、色ごとに集めたからスライムの上位種の中でもエレメントスライムに進化させるのかと思ったんですよ!」


 スライムの上位種には例えば有毒のポイズンスライム、体を鋼の如くに硬く変質させるスチールスライムなど数多くの種類がある。

 エレメント、魔術でいう属性である。地水火風の四属性が存在し、その力を持ったスライムということだ。


 ふよん。


 赤いスライムが揺れると、空中に向けてぼう、と小さく火を吐いた。


「えー凄いじゃない!」


 エレメントスライムのさらに上位種とか凄いどころの騒ぎではないんだが。マサクィはそう言おうとしたが、サレキッシモが先に声をあげた。


「これは、ひょっとして伝説にいう王種、スライム王では?」


 王の名を冠するのは魔獣の進化の頂点である。


「そうなの?」


 ふよんふよん。


 ウニリィがスライムに問うと、彼らは身を揺らした。


「違うそうですよ。でもこの四匹が融合すると王になれるそうです」


 マサクィは草原に身を投げ出して倒れた。


「王級の一個下なら将軍級じゃないですかー……」

「スライムしょーぐん」


 なんか強そう。とウニリィは思った。


 ふよん。


 スライム将軍が寄ってくる。


 ––これ食べていい?


「食べちゃダメ」


 マサクィは慌てて起き上がった。


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― 新着の感想 ―
>「違うそうですよ。でもこの四匹が融合すると王になれるそうです」 スライム王に、俺はな……! すいません、誰も言ってなかったので、つい。 すみません、すみません。
将軍になったスライムたちを、マサクィたちに任せて出かけられるのかな…?
将軍の一個上が王なら、将軍の一個、二個下はなんだろうね? 騎士とか兵士だろうか
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