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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!  作者: ただのぎょー


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第22話:ぐー……。

 本格的な仕立て服の採寸は裸になるのが基本である。

 身長や骨格、筋肉に脂肪のつきかたは当然として、女性であれば胸の大きさや形がドレスの形状に関わってくる。

 男性だとナニとは言わないがナニの大きさや、ナニが右曲がりか左曲がりかによっても布の裁断が変わってくるという世界なのだ。


「ささ、早く脱いでくださいまし」

「ぴぇっ」


 マダム・ミレイはウニリィを急かす。

 実のところ王族や高位の貴族であれば、平民の前で裸を晒すことにそう抵抗感がないのだ。例えばドレスとなればそもそも一人で着替えられるような構造をしていないし、風呂に入るとなればたくさんの使用人たちが入浴の介助を行うのである。

 彼ら彼女らにとって、使用人たちに裸を見せることはなんら恥じらいを覚えるようなものではない。ペットの犬猫の前で着替えをしたって、なにも気にならないような感覚に近い。

 だが、低位の貴族や平民ではそうもいくまい。ウニリィは丈の短いスカートで脛を晒すのにすら抵抗があったくらいなのだから。


「ぴぅ……ぅー……」


 ウニリィは唸る。

 だいたい、既製服を買うのであれば裸になどならないし、試着だって人前で行うようなものでもないのだ。少なくともクレーザーが今、三階で全裸になっているということはないだろう。これはあくまでもマダム・ミレイが来ているからこその話であった。

 ちなみにマダムはなぜ既製服の直しに来たといいながらウニリィを脱がせてまで採寸をさせるのかというと、いずれ彼女のためのオーダーメイドを作る可能性が高いと考えているためである。もちろん、アレクサンドラ姫経由で。


「ぴぃ……はい」


 ウニリィはのろのろと服を脱ぎ始め、そしてその手が途中で震えだす。マダムはそれを見逃さなかった。


「ふむ、ウニリィさん」

「は、はい」


 マダムはウニリィの手を優しく握る。


「あなた、身体に何かコンプレックスをお持ちですわね」

「……!」


 うんうん、とマダム・ミレイはしたり顔に頷いた。

 図星である。ウニリィの身体にはスライムの酸による古傷があるのだ。


「ですけど、それをどのように対処するかもわたくしたちの仕事ですのよ。お任せになって」


 手を握るマダムの指に、ウニリィは硬さを感じた。針ダコだ。針を持ち続けて角質化した職人の指である。それは一般的な美しさとは違うかもしれないが、決して恥じるようなものではない。

 ウニリィの頭の中がすっと冷静さを取り戻した。これは職人の誇りなのだ。

 そもそもマダムは今まで何百人、何千人という女性の裸身を見てきたはずだ。その中にはあばたや傷跡、他にも色々な隠したいことがある女性たちがいたことは想像に難くない。

 ウニリィの手の震えが止まる。


「はい」

「ふふ、いい子ですね」


 ウニリィは服を脱いだ。裸身を晒し、そして胸を片腕で押さえて持ち上げ、腹のあたりがよく見えるような姿勢で立つ。

 純白の柔肌。だが左の脇腹のあたりが広範囲に変色している。

 壁際に控える針子が息を呑むのが見えた。しかしマダムは動揺を表情に見せることはなかった。


「なるほどなるほど? 確かにかなり広範囲ではありますわね。どういった傷かうかがってもよろしくて?」

「我が家ではスライムの飼育を行なっているのですが、幼い頃にスライムにのしかかられてその酸を浴びたのです」

「まあまぁ、それは大変でしたのね。触りますわよ」


 マダムはウニリィの傷にそっと触れる。傷跡が盛り上がったり硬くなったりしていないかの確認である。


「ふむふむ……まあ問題ありませんね」

「……ありませんか」

「この傷が首周り(デコルテ)にあったのならば、確かにかなりドレスのデザインが限られます」


 そう言ってマダムはウニリィの古傷を優しく撫でた。


「うひゃう!」

「ですが胸よりも下の肌を見せるような意匠デザインはありませんし」


 そう言ってウニリィの身体をくるりと反転させる。


「背中側には傷跡はほとんどありませんしね。それこそ尻の上まで背中を見せるようなものでなければ」

「そ、そんなドレスは……!」


 ウニリィは顔を赤らめた。


「もちろん、そのような扇情的なものを着る必要も、その機会もありませんわ。ウニリィさんの健康的でまっすぐな美しさ、可愛らしさを表現して差し上げれば良いのです」

「ふひゃい」

「さー、楽しくなってまいりましたわー」


 ふおぉぉ、となぜかテンションの上がるマダム・ミレイに対してウニリィは及び腰である。

 ちなみにこの後、マダムのテンションに比例して採寸と服の試着にはものすごい時間がかかった。


「お昼になりましたが……」


 ぐー……。


「まだだめよ!」


 店に到着したのは朝だったにもかかわらず、店員やウニリィのお腹が正午を告げたが、マダムは決してその手を止めることはなかった。

 おやつの時間も過ぎて、もうじきに夕方にもなろうかという頃に、やっと数点の服に絞られ、へろへろの疲労困憊になったウニリィは休憩のために部屋から出ることを許されたのであった。

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― 新着の感想 ―
>ナニが右曲がりか左曲がりか なんかスラヴァちゃん時の脇役、左曲がりを思い出しちゃいましたよw 全裸回は、なまこさん作品のお約束 しかし、全裸を恥じらうヒロインは珍しい これはこれで(o´∀`)b…
職人は手で語る!
これはプロですわ( ˘ω˘ )
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