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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!  作者: ただのぎょー


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第21話:全裸で!

「ぴえっ……ぴえっ……」

「…………」


 ずらりと立ち並ぶ店員たちの間を、ウニリィは小さく悲鳴を漏れさせながら歩き、クレーザーは何も言えずカチコチになって進んだ。

 店内には香水が扱われていて、芳しい香りが鼻をくすぐる。

 広大なフロアを横切って、手すりが優雅な曲線を描く大階段を上ると、支配人の男性が言う。


「カカオ卿は上の階へどうぞ。ウニリィ嬢はこちらへ」


 この店は女性向けの服は二階、男性向けは三階にあるのだ。


「えっと……お父さん、がんばって」

「……おう」


 二人が別れるとすぐに、ウニリィの周りを女性店員たちが取り囲んだ。

 そしてその中の一人、年配の女性が前に出る。店員たちが揃いの制服を着ているのとは違い、華やかなドレス姿だ。だがその左手首には桃色のピンクッション、針刺しがあり、肘のあたりには巻き尺が巻かれていた。彼女は満面の笑みを浮かべる。


「まあまあまあ、可愛らしいお嬢さん初めまして! わたくし、カカ・ミレイワと申しますの。

「えっ、えっ、初めまして。ミレイワ婦人。ウニリィと申します」

「みなさんわたくしのことをマダム・ミレイとお呼びくださいますのよ。ウニリィさんもそう呼んでくださいまし」

「マダム・ミレイ……」

「はぁい、よろしくお願いいたしますね」


 マダムの勢いにウニリィはたじたじである。

 ナンディオは知っている。彼女、マダム・ミレイといえば王都でも高名なドレスの仕立屋である。低位の貴族や平民では予約すらまずうけてもらえないほどだ。

 当然ながら成り立ての男爵令嬢の服を仕立てることもなければ、いくら大店とはいえ、服飾系のイベントもないのにスリーコッシュにいるはずもない。


「やりすぎです、姫……」


 明らかにアレクサンドラ姫の差し金であった。キーシュ公爵家の伝手があれば、多忙なマダム・ミレイを押さえることもできる。エバラン村まで出張させることは無理にしても、シルヴァザに呼ぶくらいなら可能ということだ。

 ナンディオはそっとため息をつくと、そばに控える店員に尋ねる。


最上級の仕立て服(オートクチュール)を頼むはずではなかったのだが?」

「マダムが当店の高級既成服プレタポルテに、光栄にも手を加えてくださると」


 ふむ? とナンディオは首を捻る。

 既成服といってもドレスは当然、買ってすぐ着られるというものでもない。着る者に合わせて細かいサイズの調整や刺繍等の追加が行われ、宝石などの装飾品も用意しなくてはならない。

 だが、それだけならスリーコッシュの針子や店員でも十分にできるはずだ。言い方は悪いが、マダムに格の落ちる仕事を依頼などできるはずもない。


「……ああ、そうか」


 ナンディオは得心する。社交シーズンにウニリィをデビューさせるとき、アレクサンドラ姫は自分の衣装の傾向にウニリィの服を合わせる気なのだと。

 ウニリィが義理の妹となる存在だと知らしめ、印象付けるつもりなのだ。その姫が着るドレスのデザインはまだ誰も知らない。姫自身と、そのドレスを製作している仕立屋を除いては。そのためにマダムが派遣されたのだろう。


「さあさあさあ、美の追求には時間はありませんことよ! 行きますわ!」

「えっ、ぴぇっ……」


 ウニリィはマダムに手を引かれ、お針子や店員たちに囲まれてどなどな連れて行かれた。彼女は一瞬ナンディオの方を振り向いたが、彼にマダムたちを押さえるようなことできようはずもない。

 ナンディオは護衛であり、ウニリィが服を選んでいる間、少し遠目に控えている予定であったが、仕立てとなるとそれについていく訳にもいくまい。


「クレーザーさんの方にでもいくか……」


 ナンディオは階段を上がって行ったのだった。

 さて、ウニリィである。


「まーまー、わたくしたち男爵に成り立ての平民がくると聞いてどんな芋がくるかと戦々恐々としていたのですが、あら口が悪かったかしらごめんなさいねおほほほほ」

「あぅ、いえ、はい」

「そうしたら磨けば光るとっても素敵なお嬢さんがお越しになったのでとっても嬉しくなっちゃいましたのよ。農村での暮らしと仰るし、こんがり日焼けしたようなのがきたらどうしましょうと思ってたのに。いえね、日焼け女性が美しくないわけではありませんのよ? ただ社交界ではどうしても見る目が、ね。お分かりになるでしょう? でもウニリィさんってば綺麗な白い肌をなさっているわ! 何か秘訣があるのかしら?」

「え、えっと、仕事中は夏でも厚着を」


 スライムの酸にやられないための装備である。スライムと触れ合っている時は長袖に帽子、手袋、革のエプロンなのだ。

 歩きながら捲し立てられるが、ウニリィはなんとか少し口を挟めた。


「まー、偉いわー。それに血色も良くて健康的で素敵よー。ちょっと前は本当に真っ白な肌が流行っていたから、わたくしがあなたくらいの頃はご令嬢たちもご夫人たちもみんな瀉血しゃけつっていって、社交前に血を抜いていてね」

「ひえっ……!」


 ウニリィは思わず悲鳴を上げる。

 そうこう話しているうちに、サロンに使われるような立派な部屋についた。サロンと違うのは、壁際に無数のドレスが並び、布が積み上げられていることだろう。

 おお、とウニリィが感嘆の声をあげると、部屋の扉が閉められた。


「はい、お脱ぎになって!」

「えっ」

「全裸に!」

「ええっ!」

「採寸ですわ!」


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