第134話:ニャッポさんです!
リスコゥには意味がわからない。
彼女のスライムが転移石を欲しがっている?
「ギルド長、どうしました?」
ノハナーが問う。
「いや、不自然な文があってな。ともあれ、マサクィ氏はウニリィ嬢が限定金級の力すらあると」
「……まあそうだろうなぁ」
オットーも肯定する。最下層の魔獣であるスライムとはいえ、その上位種の将軍級まで使役できて、テイム能力が金級に相当していないはずはない。
そのスライムの能力も銀級である彼の従魔であるヘルハウンドを軽くあしらえる程に強力であった。
「限定級かね?」
ギルド長の問いにオットーはナガトゥキーと顔を見合わせる。
ヘルハウンドは「わふ」と鳴き、ウニリィは笑顔でそれに手を振った。
「ナガトゥキーとウニリィさんは意思を多少は通じているようだ。スライム以外に能力が全くないってことはない。だけど、ほとんどスライムしかテイムしてないんだろ?」
最後はウニリィに声をかけた。
「あ、はい! スライム以外はマサクィさんの従魔とちょっと話したことがあるくらいで」
「彼の従魔は?」
「ニャッポさんです!」
ぷふぅ、とノハナーが吹き出した。なぜそこで名前を言うのか。なるほど天然とリスコゥは思う。
ウニリィは気づいたのか、ぱたぱたと手を振った。
「ああ、いや。ヘルフレイムゴリラ? のニャッポさんです」
「ふむ……。まあスライム特化であるが、他のそれなりに上位の魔獣とも意思を通じさせられる。金級に至る力はある。とはいえ先も言ったが、ギルドでの実績無くして銅級以上に昇格はできない」
「はい」
「現状でも鉄級までは昇格可能だ」
「ありがとうございます!」
ウニリィは頭を下げ、その後スライムとハイタッチして喜びあった。
木級から鉄級の昇格条件は難しいものではないのだ。ウニリィは若くてもテイマー歴10年になる。昇格条件は十分に満たしていると言えた。
リスコゥは指を立てた。
「ただし! 安全講習を受けるのが条件だ」
「安全、講習ですか」
「そもそも魔獣は危険なものだ。エレメントスライム将軍ともなればその力は尋常ではない」
「はい」
「先ほどもうちの受付を破壊してくれたが」
「はい、すいませんでした!」
ウニリィは頭を下げる。
スライムもウニリィの横でうにょんとひらぺったくなって、謝罪の意をしめそうとした。
「こちらが先に手を出したせいでもある。それについてはこちらに責もあった」
「申し訳ありません、ウニリィさん。スライムさん」
ノハナーも立ち上がり、深々と頭を下げた。
ウニリィとノハナーはぺこぺこと謝罪し、そしておそるおそるリスコゥに尋ねる。
「えーっと……弁償とかってどうすれば」
リスコゥはため息をついて言う。
「一般論として従魔が物的被害を発生させた場合、きっかけは相手方にあってもだいたい全額弁償になるからな」
「は、はいっ」
ウニリィは無理だ、払えないとは言わなかった。ぷるぷる震えてはいるが。
まあ貴族に叙せられているし兄が英雄である。払えるアテがあるからだといえばそれまでだろうが、払う覚悟があるというのは好感が持てる。
「とはいえ、ここはテイマーギルドだ。ギルドが身内から金を搾り取っても仕方あるまい。金はこちらで出す」
「いいんですかっ!?」
「ノハナーは数ヶ月減給な。細かくは経理から聞け」
「うっ……はい」
「ウニリィ嬢は講習をちゃんと受けることと、貸し一つだ。いずれそのスライムの力が必要になった時に働いてくれ」
「そんなことで良いなら……はい」
オットーが笑う。
「上手く収めたな」
「これでも僕はギルド長だからな」
破壊されたのはギルドの表玄関である。決して安い修繕費ではないが、組織として考えれば大した負担ではない。それでスライム将軍とかいう札を一度切れる貸しを作れたと考えれば儲けものと言っても良い。
どちらにとっても悪くない交渉であった。
ともあれ、懸念が一つ片付いて雰囲気が弛緩する。
「あ、お茶淹れてきますね!」
今更ながらノハナーがお茶と菓子の用意をして、四人と二匹は人心地ついたのだった。
「そういやよ」
菓子を頬張りながらオットーが尋ねる。
「さっき言ってた不自然な文ってのはなんだったんだ」
「ああ。ウニリィ嬢の昇格目的について書かれていたんだが」
リスコゥは先ほど読んでいた手紙を示す。
「従魔転移石を使えるようになりたいらしい」
「なるほど……いや、それが目的ってのは珍しいかもしれんが別に不自然ではないな?」
従魔転移石は使い捨てにしては高価な魔道具である。テイマーたちはできるだけ使わないようにしているが、それでもいざという時に有用だ。ギルドが販売規制をしていることもあり、木級では購入できないため、それが欲しいからランクを上げるというのは不自然とは言えまい。
「いや、それがな。マサクィ氏は、ウニリィ嬢ではなく、彼女のスライムが転移石を欲しがっているから昇格したいと」
「んん?」
オットーは首を傾げてウニリィの方を見た。
「そですよー」
ウニリィはそれを軽く肯定した。
ξ˚⊿˚)ξ昨日、コミカライズ版3話が公開されてます!
ダサファッションウニリィが見どころですのでぜひよろしくお願いします!







