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【コミカライズ】チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!【一巻4/7発売!】  作者: ただのぎょー


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第124話:じい、聞いたか!

「功績を以て褒美を賜り、早期に宮廷魔術師の職を辞した例はあるはずです」


 マグニヴェラーレはそう反論した。そういった例がいくつも存在すること自体は事実である。功績に応じた年金を貰って退職するのだ。


「その大半は、貴族子息が急遽親族の死などにより家を継がねばならぬ場合であるぞ。汝はそうではあるまい」

「む……」

「大体な」


 ファミンアーリ王は卓の上におかれていた書類を手にする。

 マグニヴェラーレの研究を記しているものであった。シークラーが王に提出したのであろう。


「中距離転移を個人の魔力で運用する研究」

「はい」

「まず研究テーマが極めて有用であって素晴らしい。実証を勝手に行ったこと自体は褒められたことではないが、成功しているのだし不問としよう」

「ありがとうございます」


 王はまずその成果を褒め称えた。大体魔術師の個人的研究なぞ、なんの役に立つのかよくわからぬものが大半なのだ。火炎魔術における消費魔力と熱量の相関関係を数学的に立式したなどと言われても、研究者たちは絶賛しても王には全く意味がわからない。

 それに比べてマグニヴェラーレの成果は素人目にも分かりやすく、実用面でも有用なのが明らかであった。


「だがな、ヴェラーレよ。魔術への造詣が深くない余にもわかるぞ。この研究結果を公開したとして、今の宮廷魔術師でこれを扱えるようになる者は何人だ?」

「む……」

「まずおるまいな」

「師団長殿は……」

「あ奴は転移系が専門ではあるまい。それでもいずれ使えるようになるであろうが、それでは意味がないということもわかっておろう」


 つまり、ヴェラーレより上が使えても意味がない、下が使えるようにならなければ技術を継承できないということである。

 王は指を二本立てた。


「一つに汝はそもそも魔力量が多い。次に頭脳も明晰であり魔術の研究や熟達にも優れているということを念頭に置け。この転移術は現状では汝のみに扱える唯一のものよ」


 そして苦笑する。


「そして、そのような者が市井に下ることを、許可する王なぞおらんよ」

「……そうですね」


 まあ、ヴェラーレとてこれが通ると思っていたわけでもない。そもそもミドー公爵家の令息がなんの理由もなく田舎に引っ込むことなどあり得ないのだ。


「それはそれとしてだ」


 王は身を乗り出した。


「惚れたか」


 無論、ウニリィにである。


「自分は女性への恋心というものを理解せずに育ってしまいました。故に私の心の中にあるこれが、そうなのかは確信を持っていません」


 マグニヴェラーレはそう前置きして続ける。


「ですがこの研究が成功したのは、彼女に会いたいという想いによるものです」

「ははははは」


 王は笑う。


「それが愛でなくてなんだというのだ! じい、聞いたか!」

「しかと、耳にいたしました」

「汝の両親が知れば感涙に咽ぶであろうよ」

「おやめください」


 ヴェラーレは止める。いずれ知られることは仕方ないにしても面倒であるし、ウニリィやクレーザーにも迷惑をかけるであろうことがあきらかであるからだ。


「まあ、それは秘密にしておいてやろう。ともあれこれは祝杯をあげねばな」


 王は自ら立ち上がり、蒸留酒のボトルをとってきた。お気に入りのオッターフェスタである。その間に老執事は酒器を準備していた。


「勤務時間中ですが」

「今日の仕事は終わらせていると聞いておる。ほれ、じいも飲め」

「頂戴いたします」


 三人の前には琥珀色の液体が注がれたグラス。王がそれを掲げ、一人は笑みを浮かべ、一人は憮然とした表情でそれに合わせる。


「遅き初恋に」

「マグニヴェラーレ殿の幸いを願って」

「……」

「汝も何か言え」

「……彼女との早い再会を願って」

「よし、乾杯」


 三人はグラスの中身を干した。


「うむ。ところでこれは王としてではなく、汝の兄のようなものとしての忠告だがな」

「はい」

「宮廷魔術師はやめるな」


 国家・国益に関わることである。前置きがなければ王としての意見のように聞こえるところだ。

 王は続ける。


「仮に汝が仕事をやめてカカオ家に婿入りしたとしよう。汝に農家や職人の変わらぬ日々が務まるとは思えぬ。これはどちらが優れているという問題ではなく、適性の問題だ。飽きるぞ」

「……それは」


 王の言葉、マグニヴェラーレにも理解はできる。スライムに関する研究はできるだろうから、数年は楽しく仕事ができるかも知れない。だがこれは十年、二十年という期間の話なのだから。


「無論、王としても汝に働いてもらわねば困るというのもある。余は汝を手放さぬ。さて、ではヴェラーレよ。どうする?」


 その問いへの答えはすっと導き出された。


「毎日エバラン村から王城まで転移術を用いて通勤します」

「それができるのか?」


 マグニヴェラーレは首を横に振る。だが、王を見つめて宣言した。


「現状では私の魔力が不足しているため、転移後に仕事を行うこと、あるいは仕事後にエバラン村に戻ることが不可能です。これを魔力の増強、術式の改良、あるいは何らかの代替手段を得ることで、両立を目指します」

「それは可能か?」

「やります」


 そういうことになったのだった。

ξ˚⊿˚)ξ年末で作者多忙に加え、急用入ってしまい、来週の更新は週2回とします


よろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
王様モチベーションの方向付けが上手いな······ その流れなら術式の改良に熱意をもって取り組むよねw
獺祭前も飲んでたな。
更新ありがとうございます 宮廷魔道士ってのはひとりしかいないのかな? それともサラリーマンみたいなモノなんでしょうかね? 王命で「ウニリィを王都に連れてくれば解決!」 ってしないところが良いですね ど…
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