第111話:なんかえっちですね。
うにょうにょ。
スライムたちがマサクィに迫る。
「なんすか、コレ!」
「なんでしょう、マサクィさんにじわじわ近づいていくの初めて見ますね」
あらー、と呑気にウニリィは頬に手を当てた。スライムたちに害意がないのはウニリィにはわかる。それでも一応言っておかねばならない。
「マサクィさんを食べちゃだめよ」
ふよふよ。
「大丈夫ですって」
「大丈夫じゃないですって!」
マサクィにふるふるとスライムたちが迫る。伸ばされた触手はどうやら腰のあたりを狙ってるようだった。
マサクィが慌てて払いのければ、スライムたちはその手にも巻きついていく。
「うわぁ!」
マサクィがバランスを崩し、地面に倒れた。スライムにのしかかり、あるいはのしかかられと絡まるようである。
なんかこういう構図、見たことあるとウニリィは思った。王都でも人気のイラストレーター、ヌラ・ノースサイ先生が触手の怪物に襲われる海の男の絵を描かれていたことをふと思いだす。
「……マサクィさん、なんかえっちですね」
「えっちなのはウニリィさんのスライムの方っすよねぇ!?」
それもそうである。ウニリィはぱんぱんと手を叩いた。
「はい、みんなとまってー」
スライムたちはマサクィに絡みついたままぴたりと動きを止める。
「なになに、みんなマサクィさんがどうしたの」
「えっ、この状態のまま話聞くんすか!?」
ウニリィの前に一匹の赤いスライムが進み出て、うにょうにょと身を捩る。
「マサクィさんからなんか欲しいものがある」
スライムはふるふると肯定し、ぷくり、とまんまるに変形して動きを止めた。
「まるくて」
スライムは身体から炎を出す。
「燃えてるの」
スライムはうにょんと否定して、炎を体の中にしまった。
ぺかー。
体の中で火が燃えて透明なスライムが赤く光る。
「……あなたそんな光とか出せるようになってたのね」
器用なものである。これもうランタンとして使えるんじゃないかなとウニリィは思った。
「えーっと、光ってるの」
スライムは光をとめて、ふるふると頷いた。合ってたらしい。
そしてもじもじと身をゆすった。
「欲しいなーって?」
ウニリィはマサクィを見る。
「というわけでスライムたちはたぶん、マサクィさんのポケットにでも入ってる丸くてピカピカしたのが欲しいみたいですね」
「……従魔召喚石のことっすかね」
マサクィはゆっくりと身を捩ってスライムから抜け出すと、先ほど使っていた魔石を取り出す。スライムたちはそれそれと言いたげに身を揺する。
「なんであれが欲しいの?」
スライムたちはウニリィに尋ねた。彼らはみんな震えて主人になにか伝えようとし、ウニリィはふむふむと彼らの言葉を聞く。
「すごい」
「とおくからよべる」
「いっしゅんでいどう」
スライムたちはマサクィがそれを使ってニャッポちゃんを遠隔地から召喚したということを正しく理解できているようだった。
「ウニリィつかまってもだいじょーぶ」
「たすけにいける」
ウニリィがスライムの意思を言語化していると、横で聞いていたジョーが笑う。
「脱獄の手助けする気満々だな」
「そういうこと言わないの」
ともあれスライムたちはウニリィと離れてもこれがあれば守りに行けると思っているようだった。
マサクィは頭を掻く。
「あー、なるほど。ただ、これはテイマーギルドで登録してないと手に入れられないんすよ」
当然であった。遠隔地への召喚ができるということは、極端に言えば王都のど真ん中で突然ドラゴンが召喚されるような可能性があるということになる。
この世界における個人の戦闘能力は非常に高い。ジョーの武勇やマグニヴェラーレの魔術もそうだ。だから従魔召喚石がことさらに危険視されるわけではないが、安易に購入が認められるようなものではない。
譲渡や転売に関しても厳しく罰せられるのだ。
そういうことをマサクィはウニリィに説明した。
「ウニリィさんってテイマーの資格どうなってるんでしたっけ」
「木級よ」
スライム飼育のために資格だけは取っているので、最下級のままである。
「また今度王都に行かれるんすよね」
「そうね」
「ついでに王都のテイマーギルド本部行って、テイマーとして昇級の申請されたらどうですか? 召喚石の購入が認められるかはともかく、やっといて損はないと思うんすが」
ふーむ、とウニリィは考える。そもそも必要性も感じていなかったし、時間もなかった。だが貴族令嬢というなら何らかの強みがあった方が良いのかもしれないと思いもする。テイマーランクが令嬢としての強みなのかはともかくとして。
「考えてみるわ」
「っすね」
ウニリィはスライムたちに話しかける。
「あの石は、あげられないんだって」
えー、とスライムたちから不満の意思がかえる。
「これあげると、マサクィさんが捕まっちゃうんだって」
ふるふる。
スライムは揺れた。
ウニリィは困惑してマサクィを見る。
「何て言ってるんです?」
「いいよ、ですって」
「よくないっすよ!?」
ξ˚⊿˚)ξサービスシーン(男×触手)







