表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

死後の君へ

作者: ゆうま

山口佑真

[第一章・自由への挑戦]

アーレン・フェイドは、貧乏ながらも仲が良く、幸せであった。しかし父親は哲学者で、神を否定し、異端者として王国では虐げられていた。父親は

「ごめんよお前たち、だが私はみんなを幸せに導きたいのだ」

父親の申し訳なさそうな顔を見て、アーレン・フェイドが口を開いた。

「いやいや、なんともないよ。私は父さんの事を愛してるよ」

アーレン・フェイドの心からの言葉に父親は涙ぐんだ。そんな二人の様子を見ていた母親は笑みをこぼした。

「俺は、次の活動で最後にしたいと思う。家族の安全がなによりだ。最後に啓蒙的な本を配る。それで最後だ」

父親は手描きで書いた30冊を持ち、意気揚々としている。内容はちょっと過激だ。神を否定する様な内容で熱心な教徒に襲われないか不安だ。父親はボロボロの家の軋むドアを開け広い世界へ出た。父親は草をかき分けて、砂利道を歩いた。15分程で石で積み上げられた、大きい噴水に到着した。この街にはパン屋、鍛冶屋、酒屋、本屋、なんでもあった。だが一つ問題がある。それは教会が力を持ちすぎている事だ。見知らぬ男が話しかけてきた。

「お!何かたくさん本を持っているではないか。一つくれんかね」

父親は喜んで本を渡した。これで一人。また一人。そしてもう一人と。幸せになるのだ。そこに馬に乗り、金の兜のような物を首にぶら下げた男に話しかけられた。

「我にも一つくれんか?」

父親は渡した。父親は嫌な予感がした。その予感は的中する事になる。アーレン・フェイドはパンを買いに行っていた。色んなパン屋を周った。パンの耳をたくさん袋に詰め、ウキウキで帰っていた。道の途中で光る虫に気を取られ、道を外れる事もあった。右往左往し、遅い時間に家に帰り着いた。父親は何をしているのかは分からないが、家に帰ってくるのは遅い。

「ただいま。ただいま!誰も居ないのか」

誰も家には居ない様だった。自分の鼓動が聞こえる。「きゃあ~~~~」

アーレン・フェイドは叫んだ。床に父親が倒れていた。父親の死体には首が無い。十字架がイスに立て掛けられており、十字架の頂点に父親の首が刺さっていた。そして十字架には文字が書かれていた。

「異端者は誰であろうと殺す。この男は異端行為を繰り返し、神への信仰心を失わせようとした。よってこの男を斬首に処す」

アーレン・フェイドは持っていたパンの耳を血まみれの床に落とした。

「なんで――なんでよ――」

涙は出なかった。涙はもうすでに枯れた気がした。

[第二章・別れ]

「何度言ったら分かるんだ! リッカーの成績が下がっているじゃないか」

「教育はあなたの仕事でしょ」

「二人ともやめてよ」

ニーズ・リッカーは割り込んだ。大人の喧嘩は見たくない。「学校行く前から私的な争いしないでよ!気分が悪い」

ニーズ・リッカーはついに本音をぶちまけてしまった。

「リッカー、、、悪かった。お前も嫌だよな」

父親はリッカーの事を理解しようとしている。一人息子であるというのもあるだろう。もし母と別れたら全力で親権を取りに行くのだろう。静まり返った空気に耐えられなくなり、ニーズ・リッカーは喋り出した。

「ねえ、お父さんは今日何の仕事をするの?」

父親は黙り込んだ。リッカーは異常な空気を感じ、察した。父親は何か大きな事をしようとしている。

「まあ、――――いつも通りさ」

リッカーは深く突っ込まない様にした。無言の食卓は終わり。学校に行く準備をした。今日も鞄が重い。

「おはよう!リッカーくん!」

リッカーはモテる。お金持ちで容姿端麗。誰もが彼になりたがる。だが誰にも彼の苦労は分からない。皆、苦労しているのだ。

「なぁ、今日の噴水らへんでよ。神を否定するヤバい奴いたらしいぜ」

 ニーズ・リッカーは腹を立てた。なぜなら、ニーズ・リッカーは熱心な信者で父親は牧師なのだ。神の教えを守り、姦淫の罪を犯さぬように女性に言い寄られても気に留めない様にしている。

「その、ヤバイヤツとやら はその後どうなったのだ?」

ニーズ・リッカーはたまらず聞いてしまった。気になって仕方なかった。

「ん~~~なんか牧師が異端の罪で斬首したらしいぜ」

ニーズ・リッカーは驚いた。牧師が人を殺したのか?慈悲の心は無いのか?ニーズ・リッカーは社会を変えなければならないと決意した。人の命は大切だ。尊い物なのだ。

ニーズ・リッカーはかばんを肩にかけ、くるくる回しながら帰った。冷静に自分の家を見ると豪華だ。銀で出来た鍵を使う。

「ただいま、―――――誰もいないのか?」

「おかえり」

父親は洗面台で血の付いた服を洗っていた。ニーズ・リッカーは異端者を殺したのは、父親だと、ニーズ・リッカーは怒りを感じ、親を憎んだ。ニーズ・リッカーは入りかけた足を引き戻し、家の外へ飛び出した。

外で声がした。

 [第三章・新たな時代]

看板を持っている大人たちがたくさんいた。その者たちは労働者階級の人間達だ。続々と人が増えている。労働者達は教会へ向かっている。看板には「搾取やめろ」という文字。ニーズ・リッカーの頭に雷が落ちた。あの男ではないか?無神論者達か。確かに今は宗教の自由は無い。

労働者達の中にはこの様な声も聞こえた。

「安楽死を解放しろ」

こいつらは地獄に行きたいのか?自殺は地獄行きの筈だ。王国の警備隊達は抑えようとしているが、止まる気配は無い。隠れて皆不満を持っていたようだ。王国の崩壊は追っていると思った。

大煙が見えた。教会は赤く燃えている。教会からは信者の叫びが聞こえた。ニーズ・リッカーは窓から飛び降り、石で出来た門をくぐり王国を飛び出した。アーレン・フェイドも大煙と叫びを聞き、王国を飛び出した。アーレン・フェイドは後ろを向いた。王国全体が燃えている。長年住んでいた場所が無くなるのは悲しい物だ。

 [第四章・クリエイト]

飛び出した人間達は森へ向かいました。森へ行く道は容易ではなかった。なぜならここの地形は崖に囲まれていた。崖の上にオアシスがあると信じ皆は挑んだ。たくさんの怪我人が出た。そして死者も出た。崖を上る段階でロープが切れてしまったのだ。落ちた人間は下にいる者も巻き込み下と人間と一緒に肉団子になり、落ちてしまった。アーレン・フェイドとニーズ・リッカーは先発組だったので上まで上る事が出来た。上った先には川が流れていた。植物も生えていて、バナナやりんごがあった。

「これが楽園ではないのか?」

人々は抑圧されていた喜びを思わず漏らした。

しかし、一人の男が声を上げた。

「皆、これから言う事は絶対だ。この街を平和にするため、十戒を命じる」

声を上げた男は、街の長。アレクサン・リズリーだった。アレクサン・リズリーは白く長い髭を蓄え、哲学者様の様な見た目をしている。頭もそれなりに良い。そんな男が命ずる十戒なら多分大丈夫だろう。皆がそう信じていた。

もちろん、良い人間だけでは無かった。リンゴを勝手に食う人間がいた。皆は裁判をしなければ気がすまない。

「有罪だ―――――有罪だ」

この男の裁判をするために簡易的な裁判所を作った。傍聴者用の椅子も木を加工して作った。木のハンマーも。そしてこの男は有罪になった。禁錮二年の刑だ。男は入る刑務所が無く、椅子に縄で縛る事になった。そして社会の秩序を守るため、自警団を作り、平和を保っていた。

そしてここには、発酵が早いブドウがあった。このブドウのおかげで皆はワインを飲む事が出来、幸福に暮らしていた。アーレン・フェイドは農業をしていた。水の中に米を植えている。アレクサン・リドリーは一人で政事をして、住民から税金を取り街を成長させるため、管理をしている。ニーズ・リッカーは、手先が器用なので色々作っていた。木を削り出し、机を作った。その机では皆が食事を取り大変重宝した。

「ありがとう」

この言葉で彼は何時間でも働いていた。

幸せな生活だった。

 〈第5章・変化〉

 街には一人冒険家がいた。ルーズベル・ママーと言われていたその男は、暗い暗い夜の森を探索する。ルーズベル・ママーの仕事は、珍しい獲物を捕らえたり、竹を取る仕事。いつもの様に森を探索していると、ルーズベル・ママーは洞窟を見つけた。暗く入り口は狭い。

「誰かいないか?」

「ポツン――――ポツン――――」

水がポツリポツリ落ちる音しか聞こえない。だが油断してはいけない。熊やコウモリがいる事もあるからだ。ルーズベル・ママーは木の皮を剥ぎ先端に織物を巻きつけ、火打ち石を使い、火をつけ、自家製のたいまつの先につけた。たいまつに火をつけた瞬間、洞窟の中が見えた。やけに洞窟の中は綺麗で、人工物の様だった。石でできた階段を下り、鍾乳石を避けながら進む。気温が下がって来た。

「ポチャ――――ン」

水が垂れて来てたいまつの火は消えてしまった。しかし、目の前に光る粘土板を発見する。その粘土板は、青白く光っている。三角コーンの様な形の石に囲まれた粘土板はエメラルドの様な色だ。ルーズベル・ママーは、指につばをつけ、風の来る方向を調べる。風の方へ向かう。空が見えた。ルーズベル・ママーは街へ戻った。光る粘土板に興味を示したのは街の長だ。長であるアレクサン・リズリーが手をかざし た とたん、森がザワついた。木々は揺れ、虫たち は 鳴い た。アレクサン・リズリーは理解した。この粘土板はこの森と繋がっている。アレクサン・リズリーが鳥を強く想像した。

「コーーーーーーケフォーーーーーー」

鳥がこちらにやって来た。皆は、食べようとしたが。

「コーーーーーーケフォーーーーーー」

もう一羽やって来た。アレクサン・リズリーは民たちに、繁殖する様に命じた。その世話係にアーレン・フェイドとニーズ・リッカーが選ばれた。先に口を開いたのはアーレン・フェイドだ。

「よろしくね」

「こちらこそよろしく」

 ニーズ・リッカーは。

「ここで会ったのも何かの縁だ。よかったら散歩をしないか?」

「いいね~~しよう」

二人は意気投合し、仲良しになった。

[第六章・親子]

「今日の収穫は少し少ないな。魚と麦で作ったパンだけか」

「文句言うなよ、食べるだけでも幸せだろ」

「そうだ―――奴隷になる必要もないしな」

「人生、自由が一番さ」

「明日頑張ってイノシシでも狩ればいいのさ」

皆はたわいない会話をした。

「なんか下から音が聞こえないか?上ってくる様な音」

「気のせいだろ。ここは崖しかないさ。多分鳥だろ」

「シグーーーーーン ヨイショ ーツーン グッーーーーー」

「誰だ!!」

二人の男は崖に向かった。崖をよじ登るよぼよぼの人間を見つけた。

「おい!大丈夫か?今から助けてやるからな」

 男はロープを垂らし、つかまる様に言う。

「悪いな歳でよ、もう力がねぇんだ」

「そこで悪いんだけど俺の息子を知らないか?俺に似てる」

「なんて名前だ?」

「ニーズ・リッカーと言うバカ息子さ」

男は指さした。焚火でくつろぐニーズ・リッカーがいた。

「おい息子よ、帰るぞ」

「父さん!?何でここにいる事が分かったの?」

「足跡を動物の様に、辿って来たのだ」

「さあ帰るぞ」

「嫌だ!!ここには大切な人がいるんだ。それと王国になんて戻りたくない」

「あぁ愛する息子よ、何を洗脳されているのだ」

アーレン・フェイドが話したそうに見つめている。

「違う自分の意志だ」

「連れていかないで!!私ニーズ・リッカーの事が好きなの」

アーレン・フェイドは叫んだ。

「女に何がわかる。口を出してくるな」

「いやまて、お前の顔どこかで見たぞ。異端者の家族か」

「良い機会だ、その女を殺せ、これは父からの命令だ」

父親は腰から取り出したピストルを息子に渡した。

「父。父。考え直してはくれないか?私は殺したくは無い」

「ためらうな、やれ」

「バンッーーーーーーシューーーーーーー」

「バタッ、カランカラン」

父親は脳天を強烈に打ち抜かれた。ニーズ・リッカーは膝を着いた。

「あの世では争わずに生活しましょう」

ニーズ・リッカーはそう言い残し、死体を崖の方に持っていった。

「何をするの?」

男は聞いた。ニーズ・リッカーは答えた。

「俺なりの葬式だ。非常識だがね」

ニーズ・リッカーは父親の死体を放り投げた。

「ガッーーーーーガッーーーーーザザーーーーー」

父親は激しい音を立てて、地面に打ち付けられた。

「これで良かったの?」

「ああ、これでいいんだ。現世では対立したけどな」

 <第七章・悩み>

「こっちだ!こっちの木に隠れろ!」

女は左肩を撃たれた。血が出ている。

「寝るな。希望を捨てるな。今、手当てをするからな」

街の男は街の女に包帯を巻き、肩を圧迫した。血は止まったが、痛みがひどい。

「あー...........フ-----................殺しておくれ...」

男は生えていた大麻を吸わせ、痛みを紛らわせた。

男は前進する。猟銃を持ち、焼き上がった森に消えた。

「ウォーーー殺してやる。........国軍出て来い!」

「装填完了!いつでも撃てます!」

「よし!一斉射撃準備!..................撃て!」

パンパンパンーーーパラパラパラと花火のような音。

食欲旺盛なモス。短気だが優しさのあるガンビー。

怠け者のフラは抜け殻になり、飛行機に乗った赤ん坊のように叫ぶ。

街のもの達は半ば諦めながらも、やけくそじみた特攻をする。

「早く次の弾丸を込めろ!ーーーーーーーー射撃用意!」

ガチャガチャ ーースーーーーー トントン。

バシュン バツン ドーン。弾丸が葉っぱを貫通する音しか聞こえなかった。

「まぁいいさ、これだけ殺せば奴らは崩壊するだろう」

ザザン…ザザザッ、軍隊が引き揚げていくのを聞き、

アーレン・フェイドとニーズ・リッカーは口を塞いでいた手をどける。

「みんな死んだな。残っているのは見た所、俺とお前しかいない」

「ええ、でも希望を捨てちゃいけないわ。捜し当ててみましょう」

あれから三日三晩さがした。

「ああ、体力が減った。限界だ」

「私の水差しあげるわ」

アーレン・フェイドは動物の消化と吸収する消化器官である“腸”を使って作った水筒を渡した。

「ありがとうーーーーーープハァーーーーーうめぇ」

「これからどうするかね、とりあえず立て直しからだ」

 アーレン・フェイドは光って見えている物を発見した。二本のつただ。

「これよ……これしかないわ……生きてても仕方がないわ」

「おい、ちょっと待て、自殺なんて正気か!さっきまでやる気だったじゃないか!しかも自殺したら地獄に行くんだぞ!」

「そうだった。あんたは信者だったわね。でもね、私思い出したの。父の言葉を思い出したんだ。死は本当の意味で解放で誰にでも平等に訪れるのよ……」

「…………………………」

 ニーズ・リッカーは黙って何も言わなかった。

「じゃあね」

アーレン・フェイドはつたを輪形に巻いた。ニーズ・リッカーはただじっと見守るしか出来なかった。うまく気持ちを伝える事が出来る様な気がしなかった。

「ちょっと待って!い……」

「ん……うまく言葉に出来ないんだけど……君には生きてほしいんだ」

「君のいない世界にも多分何か意味があるけど……俺は君と生きたい……」

「じゃあもう少しね」

首にかけていた蔦をアーレン・フェイドは外した。アーレン・フェイドは聞いた。

「本当に愛してくれてるんだね」

「もちろんさ」

「今は自殺に対して何も思わない。君が生きたく無い世界なんて作らない。楽園を作るぞ!!……俺ならできる。できる……今までやって来たんだ」

<第八章・家族の形>

アーレン・フェイドはニーズ・リッカーに顔を赤くして言った。

「ねえ……ねえ……子供って欲しい?……私は、欲しい」

ニーズ・リッカーは困惑した。そういうのは結婚してからする物だと考えていたためだ。

「い……いいよ」

「いいよ……君となら」

 ―――――――――5年後―――――――――――――

 ニーズ・リッカーは、白くたくましい髪、ボサボサで哲学者の様だ。髭剃りも容易ではなく、髭も伸びっぱなし。ジョリッ……ジョリッと鳴る事は無く、モサモサという感じだ。

「魚を取って来たぞ。しかも三匹。今は一人一つだ」

「私も果物取って来たわ」

「君はおとなしくしていていいんだよ。僕がやるから」

アーレン・フェイドは年老いた。顔にはシワが増えた気がする。それでもニーズ・リッカーはアーレン・フェイドを愛している。まぁ、浮気する相手もいないのだが。

アーレン・フェイドは赤ちゃんを抱っこしていた。この赤ちゃんの名前は、ニーズ・ホープだ。名前の通り、二人の希望だった。

「オギャーーーーーハハハハッ」

ニーズ・ホープは鳴き虫だが、母の乳ですぐに泣き止む。

――――――――――15年後――――――――――――「父さん、母さん、話があるんだ。……なぜ僕は生きているの?」

目をギョロロン……とさせ聞いた。ニーズ・リッカーは答えた。

「なぜ、いいななぜか、……世に出来ると思ったからだ」

「僕、幸せじゃない。僕は明日崖から飛び降りる。もう決めた。だから止めないでくれよ……」

ニーズ・ホープは死ぬ前に手紙を残した。

カリ……カリ……羽根ペンで書いた彼のてがみには彼の。ニーズ・ホープとしての意志が書かれていた。

ーーー…………――――……――

ニーズ・ホープは、彼にしか分からない暗号をまぎれこませた。彼が伝えたかったのは、

「時代と場所が違えばすべて違かったでしょう」

 そんな事だ。

カリッーカリッ終わった。

ヒュー……――――――――フー…………バツン。

崖の下でニーズ・ホープは大の字で死んでいた。父親は手紙を見て、止めようと思ったが間に合わなかった。間に合ったとしても、未来は変わらないかも。父親である、ニーズ・リッカーはひどく後悔した。そして彼には、また一つ悲劇が訪れる事になる。

「うー、フー、ラーラララ〜フー、ラー〜」

鼻歌が聞こえた、母である。

「ブブブ、プクプク、プクプク」

アーレン・フェイドは海に帰っていた。アーレン・フェイドは海の中で石を飲み込んだ。小さい砂利から水切りに使う時の様な石を。飲み込むも意識は無くなった。

「フェイド!フェイド、フェイド〜、なぜお前まで」

母性というのは男には理解する事が出来ない。愛ゆえなのか。

<第九章・反撃>

――――――――――――二十年後―――――――――

男は正気を失っていった。完璧に精神状態に異常が生じていた。脳の回路がバカになっている。

「痛いよお痛いよお、痛いよ。助けてくれよお!」

ニーズ・リッカーは自分の髪を抜き、自傷行為にふけっていた。頭をラグビーボールの様に持ち、自らを木にぶつける。男の頭から血が出て、男は冷静になった。男は何かを攻撃しないと気が済まないようになっていた。そんな時、男はニーズ・ホープが五歳の時に作った粘土板を見つけた。粘土板を見た時、思い出した。男は非道で不快で忌み嫌うべき王国を思い出す。王を殺さなければならないと、男は誓いを立てた。

「ヘッーーへへっーーへへへっー」

男はわらで出来た人形に対して妄想の攻撃をした。男はねじを巻かれすぎたゼンマイ人形の様になっていた。ゴリーーーゴリーーーーパキーーーパキ。男は竹を二つに割りの弓を作った。もちろんこれだけでは何もできない。木を倒した。狂人になった男にとっては難しい行動だ。カッーーーカッーーー。パキキキキキキーーードン。シューーーシューーー。作った弓を使いヤギを狩った。首を切り落とし、肉と皮の境に竹ヤリをねじ込み分離させた。

「よし、できた。これで王国を滅ぼすぞ」

男は皮から見事な防具を作った。狩りのゲームに出てくる防具の様だ。男には道が見えていた。ウィーンヒューーーーン。男は道に加速されている様に進んだ。

 <第十章・持たざる者>

アーレン・フェイドとニーズ・ホープは互いに相手を強く抱いていた。

「僕は軽くなった。ここはどこだろう。知らない空だ」

「多分だけどここは魂の世界。私とあなたは死んだのね」

「懐かしい感じもする。僕は最近までずっとここにいた気がする。そうだ。生まれる前だ」

「父さんはまだ来てないんだね」

「父さんはきっとまだ生きてる。なぜならあの人は私よりずっと強いのよ」

「そうだね」

ポッーーーポッーーーポッーーー。地面からブドウの木が生えて来た。この世界では、願った物が何でも手に入る。ニーズ・ホープはお腹いっぱいのりんごを望んだ。心から思った。白色の地面から、大きくて赤いリンゴが出て来た。

「おいしいよお母さん」

ジョジョジョーーーキュッ

母親は少し離れた所でワインを飲んでいた。

「よかったわね、ホープ」

母はにこやかな顔でそう言った。

「ねえ、母さん、僕を殴ってみてよ。お願い」

「えぇ〜なんでよ。いやだよ」

「気になる事があるんだよ。この世界に苦痛があるのかなって。」

 ボコン。アーレン・フェイドはニーズ・ホープを殴った。しかし、その拳はすり抜けた。

「そうだよ。この世には苦痛が無いんだ。なんでみんな気づかないんだ」

「そりゃあ生きている時に死んで、その後の事は分からないわよ」

「そうか」

ニーズ・ホープは、現世で苦しんでいる人へ伝えたいと思った。

――――――――<第十一章・AI>―――――――――

ズタッーーーーズタッーーーーズタッ……。ニーズ・リッカーは王国の入り口まで来た。案の定、門には門番がいた。

「開けてくれ。中の商人に用があるのだ。急ぎだ」

「なんだ、その見た目は。そんな怪しい男を入れるわけないだろう」

「どうしてもだめか?よかろう?」

「いやっダメだ。悪いがこっちも仕事でね。変な奴を入れると上に怒られるんだよ。もう少し衛生的な服で来てくれ」

「分かった。また来るよ」

男は木の後ろに下がった。竹で作った弓の真ん中にある穴に右の矢を入れた。パシッ。ムチを打ったかの様な音を立て、頭の左側に当たった。門番はフラフラとし、前にある川に落ちた。

そして王国に向かう通行人を襲い、馬を奪った。

パカラッパカラッパカラッ。馬はすごいスピードだ。男はテンションが上がった。

「ヒャッホー」

「こんにちは〜今日も天気いいね〜」

パン屋の女が話しかけて来た。この女は王国が無くなる事を知らない、滑稽だ。

「ああそうだね、今日も楽しもうぜ」

男は塔に着いた。塔は石とレンガでできていて、がんばればよじ登れるのだ。男は足を素早く動かし、国民にバレない様に中央に乗り込んだ。しかし、内容は過去の物とは違っていた。中にはゴーレムがいた。

「リラックス。敵対生命体発見。殺せ」

どうやらリラックスという名前のゴーレムらしい。ゴーレムは正方形の腕をふりまわし、男が立っていた壁ごと粉砕した。砕け散った壁が男の頭をかすめた。男は敗北と判断した。

「俺の負けのようだ。降参だ」

ゴツン。ポタポタ。パタン。男は死んだ。ニーズ・リッカーはリラックスに殺された。たった一瞬だったためか苦痛は無かった。不幸中の幸いだ。フワ〜〜〜〜ソワ〜〜〜〜。パチパチパチ。ここはどこだろう。

「どこだ!」

「おかえりパパ」

ニーズ・ホープは抱き付いた。

「おかえり、あなた」

ニーズ・リッカーは今まで苦労がいらなかった事に驚愕した。

「そうか。息子が正しかった。すまない。私は今幸せだ」


<第十二章・塔>

ニーガン・レックスは、夢を見ている。壁の外に出る夢だ。レックスは毎日壁を掘り続けている。壁といっても本体は固すぎる。だから壁の下の土を掘り続けているのだ。

「壁の外にはきっと僕らには理解できない物、生物がいるんだ」

みんなはレックスを嘲笑った。レックスはみんなが理解できないだけだと落ち着いた。

レックスは手で犬の様にかき続けた。穴のサイズは三十センチ程になった。そんなある日、父親にあほな事をしてないで肉体労働をしろと、怒鳴られた。レックスは家を出る。夜になっても掘り続けた。朝になった。レックスはいまだに掘り続けている。穴のサイズは六十センチ程になった。これなら少し骨の曲がったレックスでも通過できる。

「ちょっと見てくるか。通ってみよう」

レックスは驚いた。危険なモンスターなんて一匹もいないではないか。やはりあいつらはバカだった。レックスは冒険を始めた。意外と静かな森では、鳥のさえずりが聞こえる程度だ。少し歩いた所でレックスは生活の跡を見つけた。火を使っていた様だ。人がいたのか?レックスは少し恐怖を覚える。

「誰かいるのかい?私は敵では無いぞ」

カラスしかいない様だ。レックスは何かを見つけた。

「それは何だ?手紙……か?」

特化を恐る恐る開けると文章が書いていた。

「私たちはだまされている。自分を持ち真実と向き合うべきである」

なんだこの手紙はとレックスは思った。真実って何なんだよ。核心の部分には触れていない。レックスは手紙を捨てて帰った。しかし、その手紙は許さなかった。ブヤァーンと手紙から音が鳴った。レックスは、その事実に気付かなかった。

「どこ行ってたんだよ」

レックスの念願の夢はしょぼく、自殺をしようか悩んだ。肉体労働をして使えなくなったら捨てられる。そんな人生は嫌だ。レックスは寝転がり、寝る前に考えて見た。「真実を見るって、何が真実だ?」

「キャ〜〜〜」

叫び声が聞こえ、レックスが振り返ると、男が死んでいた。頭が緑色に変色している。報告しないといけないと、外に出た。外は地獄と化していた。人々は水を求め、塔にむらっかっている。レックスは悲しくなり、

「これは夢だ」

朝、レックスは起きた。死者達は、塔と同じくらいの高さまで積み上がっていた。レックスは手紙の呪いが王国を変化さしたと思った。

 <第十三章・異常者>

魂だけの星はキャパを超えてしまった。一部から魂があふれ出している。星にまるで壁の様なものができ、20%の人物の魂が外に出てしまった。かさぶたの様にみんなが防ごうと思っていたが、その努力はむなしく、穴が広まって行く。

「終わったんだね」

「まあ人生良かった」

人々は星の崩壊を感じた。みんな手を繋ぎ落ちて行く。アーレン・フェイド。ニーズ・リッカー。ニーズ・ホープは手を繋ぎ闇へ落ちていった。彼らはどの世界からも消えてしまった。ニーガン・レックスもその一人。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ