第31話【流れ星を追って】
「流れ星?」
はて? と言った感じに首を傾げた漁師さんは、港の奥で働く他の従業員たちに声をかけた。
「おーい! 誰か最近流れ星見たやついるかー?」
「自分見ました」
「オレも見たぜ」
「一昨日の夜に見た」
「おれもー」
「みんな見たってよ。ついでに言うと俺も見たぞ」
「「見たんかい!」」
リズとフェアリーが同時にツッコんだ。
なぜさっき首を傾げたのか!
「……あの、どこに落ちたかとか分かりますか?」
漁師さんのノリに困惑しつつフェアリーが聞いた。
「おお、落ちたかどうかは分かんねーけど、海の方角に流れてったなぁ」
「海の方角、ですか……だとしたら厄介ですね」
険しい顔で顎を撫でるフェアリーに、隣のリズが「なんで?」と反応した。
「海に落ちたら溺れて勝手に自滅するんじゃないの?」
「いいえ。ドラゴンは環境に適応する能力を持っています。海に落ちてもすぐ水中に適応した形態になるんですよ」
「なにそれズルい!」
「そもそも宇宙を泳ぐような奴らです。水中なんてどうってことないでしょう。ただ……」
「ただ?」
「私、水中は……いえ、なんでもありません」
「?」
「コホン……とりあえずその流れ星が落ちた現場へ向かいたいのですが、どうすればいいですか?」
咳払いで間を取り繕って聞くと、漁師さんは頭を掻きながら応じる。
「船に乗りたいってことか? だったら早朝になるぜ」
「そ、そんな! 一刻を争うんです! なんとかなりませんか?」
「いやそう言われてもなぁ。船乗りの連中はもう就寝してるしよ。俺たちもセリやら仕事があるからよ」
「そんなこと言ってる場合ですか! 流れ星がドラゴンだったらどうするんです!」
「ド、ドラゴン?」
鬼気迫るフェアリーに気圧される漁師さんを見兼ねてリズが割って入った。
「こらフェアリー! 漁師さんに無理言わないの! 早朝って言ってるんだからそれまで待ちなさい!」
「あなたは寝たいだけでしょう! さっきから欠伸ばっかりして!」
「な! 違うわよ! 漁師さんの仕事の邪魔してまで強行するなって言ってんの!」
「ドラゴンの恐ろしさはあなたも知ってるはずです! 海に落ちたのなら早急に倒さないと、その海の生命体全てが根絶やしにされるんですよ! 奴らにとっては全てが餌なんですから!」
「誰もドラゴンを放置するなんて言ってないでしょ? 船が出るまで少し待てってだけじゃない」
「その待ってる間にどれだけの被害が出ると思ってるんですか! あなたは!」
「だから今はどうしようもないって言ってるでしょう!」
いつかの時のように口論になりヒートアップしていくと、慌てた漁師さんが二人の間に入った。
「おいおいケンカしないでくれ嬢ちゃんたち!」
「あ、す、すみませんお騒がせして……」
リズは謝るが、フェアリーはむしろ漁師さんを睨んでいた。
「何か事情があるんだろうけどよ。こればっかりはどうしようもねぇ。我慢してくれねぇか姉ちゃん?」
そんなフェアリーの眼光に怯まず、漁師さんは冷静な声で宥めてくる。
「……どうしてもダメなのですか?」
「すまねぇな。できるだけ早く船を出してもらうからよ。それで勘弁してくれや。な?」
「……あなたでは話にならないみたいですね。他の人間に話してみます」
「ええ!?」
「ちょっとフェアリー! あんたいい加減にしなさいよ!」




